第9話 夏休みは楽しいけど その二


 俺は涼子と一緒にプール行ってから一週間後、遊園地に来ていた。

 彼女はキャラクタが描かれているピンクのTシャツにブルーのデニム短パン、それに白のスニーカーだ。俺は黒のTシャツとブルージーンズそれに黒のスニーカー。初めて涼子の家に行った時と同じ格好だ。

 男だったらそんなものだよね。


 遊園地の場所はプールがある場所と同じ。入り口が違うだけだ。俺の家のある駅から九つ目だ。


「達也どれから乗ろうか。どれも待っているね」

「まあ、仕方ないよ夏休みだし」

「そうだね。じゃああれから」


 彼女が指差したのは、富士○○ジェットとかいう二回転付の迫力がある奴だ。


「大丈夫か」

「うーん。多分。乗ってみよ」


 三十分程並んで順番が来た。一シート二人座りになっているので、俺が先に乗り彼女が後から乗った。


 肩の上から安全バーが降りて来て俺達をホールドすると動き始めた。


「達也、前に進み始めたね」

 後ろに進んだらどうするの?



ガタン、ガタン、ガタン。


ゆっくりと登って行く。チラッと彼女を見ると安全バーを手で思い切り握り締め上を向いている。


 頂点に来ており始めると


キャーッ!


一回転して


キャーッ!


もう一回転して


キャーッ!


更にスパイラルに入ると


もう下を向いて目を瞑っていた。



スタート地点に戻ると安全バーが上がった。彼女が動かない。

「涼子降りよう」

「う、うん」

 降りる時は俺の方からだ。彼女が動かないので手を伸ばしてあげるとやっと立ち上がった。


 コースターの乗り場から階段を下りて地面に足が付くと


ヨロッ。


彼女が俺に抱き着いて来た。


「達也ちょっと休もうか」

「ああいいよ。あそこのベンチが空いている」


ベンチに座っても俺の腕に抱き着いたままだ。

「ちょっと凄かったね」

「ちょっとだけ?」


俺の顔を見て

「達也意地悪」

 顔まで腕に付けて来た。


 よし、今日は俺が主導だ。腕に巻き疲れるのは少し慣れたぞ。柔らかい物は慣れないけど。


 十五分位すると

「達也次どうする」

「涼子の乗りたい物で」

「じゃああれ」


 彼女が指差したのは、パイレーツオブ○○○だ。


「えっ、でもあれも迫力あるぞ」

「じゃあ、あれ」


 今度指さしたのは、鉄塔の上から急激に落ちて無重力を感じる奴だ。

「まあいいか。行くか」

「うん」


 今度も三十分位並んだ。


シートに座るとまた安全バーが降りて来た。今度は一人ずつ座っている。


 グッ、グッ、グッ


段々上がって行く。


「た、達也上がって行くね」

 地下に潜ってどうする?


 頂点まで来たところで フワッとお尻が浮いた。


キャーーーーッ!


 下に着く前に緩く止まる。そしてまた上がって行く。そして頂点まで来ると


キャーーーーッ!




 終わって安全バーが上がると

「涼子、降りるぞ」

「う、ううん。もう駄目」


立ち上がると


ヨロッ。

また俺に寄りかかって来た。


「涼子また休むか?」

「うん」


 今度は二十分位休んだ後、コーヒーカップに乗った。彼女が真ん中のハンドルを回し過ぎてまた目を回している。


 カップから降りるとまた俺に寄りかかって来た。


「涼子、休憩所で少し休むか」

「うん、そうする」


 十五分位して元気になると


「達也、お腹が空いた」

 さすがスポーツ女子、回復力は並大抵じゃないらしい。時計を見るともう午後十二時半を過ぎていた。


「じゃあ、レストランに行ってなんか食べるか?」

「うん」


 また、三十分位並んだけど窓側のいい席に座れた。


「達也、遊園地って大した事無いと思っていたけど結構すごいね」

「涼子が選んだ奴が凄いんだよ。コーヒーカップだってあんなにハンドル回さなければ」

「だって、面白かったんだもの。食事したら控えめな奴にしようか」

「そうだな」



 俺達は一時間位レストランでゆっくりした後は、船に乗ってジャングルを回る乗り物とか、複数人でボートを漕ぐものとかをして遊んだ。


 どれも待ち時間があるのでそれなりに遅くなってしまった。

「達也、午後七時から花火があるからそれ見て帰ろうか」

「良いのか。家に帰るのが結構遅くなるぞ」

「構わない。お母さんには遅くなるって言ってあるから」

「そうか」


 花火を見るのも場所取りをするらしい。中々大変だ。二人で座って待っていると


ヒュルヒュヒュヒュル……パーン!


 空に大輪の花が咲いた。


「綺麗だね」

「ああ」

 涼子は俺の右に座っている。俺にべったりとくっ付いて俺の右手を自分の肩に後ろから回して俺の手を握っている。偶に指先に柔らかい物が当たるんだけど…。


 花火が何発も打ちあがっている。チラッと涼子の横顔を見ると目を輝かせて見ている。俺が見ているのに気付いたのか、俺の方を見ると目を閉じた。


 流石に何を要求しているのか分かった。軽く彼女の唇に


 チュッ。


彼女は目を開けると

「もう少し」

また目を閉じた。


今度は先程より少し長く唇を合せると俺の方に寄りかかって来た。


「幸せ」

「…………」

 彼女に握られている俺の手は、彼女のお腹に行っていた。とても柔らかい。少しだけ慣れた。


 花火が終わると遊園地終了の放送が流れた。

「涼子帰るか?」

「うん」


 俺の手は彼女の手に握られている。俺が握り返すと俺の方を見てニコッとした。


 遅くなったので、家まで送って行くと別れ際に

「達也明日も会える?」

「いいけど」

 特に予定も無い。


「じゃあ、明日ここに午前十時に来れるかな?」

「いいよ」


 彼女が玄関に入って行くのを見て俺は駅に向かった。涼子なんか意味有り気だったけど気の所為かな。


―――――


 まあ楽しい一日が終わりましたが…。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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