第8話 夏休みは楽しいけど


 夏休みに入った。宿題は、涼子と一緒に八月初旬までには終わらせた。


 そして俺は、生まれて初めてプール…。いやプールは初めてではない。そう女の子と二人で初めてプールに来ている。


 今、俺がいるのは更衣室から出た待ち合わせ場所。涼子が更衣室から出て来るのを待っている。


「達也お待たせ」


 更衣室から出て来た彼女を見た時、一瞬で鼻を抑えた。いつぞやの鼻血の二の舞にならない様に思ったからだ。


 身長百六十センチ、セパレートとはいえ、大きな胸がはみ出しそうなくらいになっている。腰はキュッと絞まり、お尻も流石テニス部という位絞まった可愛い形をしている。水着の色はオレンジだ。胸の前のリボンが可愛い。


「達也、どうしたの?」

「…………」

彼の顔が真っ赤だ。本当にこの人は女性に免疫が無いのね。ふふっ、なんか嬉しいな。


「大丈夫?」

「あっ、ああ」

「これ、前に一緒にデパートに行って買ったやつだよ。どお?」

「お、おお。とっても似合っている。可愛いよ」

「えへへ、そっか。嬉しいな」


 涼子が俺の手を引いてテーブルへ行こうとしている。周りの視線は、何でこんなに可愛い子にこんな奴が視線の総攻撃だ。たまらない。



「達也、ここにしようか」

「ああ」


 プールには近いが売店からは少し離れている。でも空いていたのがもうこの辺ばかりだ。仕方ない。


「ねえ、達也って泳げるの?」

「まあ、普通にな」

 涼子一人くらいなら両手持ちして泳ぐ古泳法も出来る。


「じゃあ、私に泳ぎ方教えて。私テニスは出来るけど泳げないんだ」

「ああいいよ」

 これが失言だったのは直ぐに理解した。


 ここには波の出るプール、二十五メートルのプール、ウォータースライダーなどが設備されている。


「じゃあ、早速ここで教えて」


 涼子が二十五メートルプールの中に入った。俺も続いて入ったが、この時失言を悟った。

「どうしたの。教えてくれないの」

「あ、ああ。じゃあまず足からな」


プールの縁に掴ませてバタ足をさせる。直ぐに飽きられた。

「ねえ、達也の手に捕まって、もっと真ん中で泳ぎたい」

「わ、分かった」


 俺は仕方なしに涼子の手を取ってプールの真ん中に行くと

「じゃあ、やってみるね」


 俺の前で涼子がバタ足をしているが……。バタ足する度に、プルン、プルン、プルン。豊満な胸の谷間が思い切り揺れる。それだけではない。

 しまったお尻がバタ足する度に妙にお尻の真ん中にスリットが入っていく。


 だ、駄目だ。顔を横に振る向けていると

「どうしたの。私をちゃんと見て」

「あ、ああ」


 あの、あの。非常に不味い状態が…。涼子の目の前で。

「涼子、ちょっと待って」


 俺は直ぐに涼子と反対の方を向いて。雑念退散・南無妙法蓮華経・雑念退散……。


「どうしたの?」

「あ、いや。そうだ。涼子俺の背中に乗ってくれ。向こうの端まで泳ぐから」

「本当、やったあ」


 俺が少し膝を折り涼子が俺の肩から首にかけて手を回すと

「えいっ!」


 俺の背中に乗って来た。


「…………!!!!!」


 またもや失言を悟った。俺の背中に大きくて柔らかい二つの…。


……動けなかった。



 プールから上がる事にした俺だが背中には強烈な二つの柔らかい余韻が…。


「達也大丈夫。さっきから顔が真っ赤だよ」

「あ、ああ何でもない。そ、そうだ。波の出るプールに行こう」

「うん、いいよ」


 ここでは涼子が浮輪を借りてプカプカと浮きながら波を楽しんでいる。俺は側にいるだけだけど。やはり彼女の胸が大きい。浮輪の中にお尻を入れてプカプカしているので余計強調されている。


「ねえ、達也。あれやろう」


 彼女が指差したのはウォータースライダー。

「ああ、いいよ」


 順番待ちをして、いよいよスタートの時

「係員さん、私が前それとも後ろ?」

「ああ、彼氏さんが前の方がいいですよ。彼女さんは彼氏さんのお腹にしっかりと手を回してください」

「はーい」


 またもや背中に柔らくて大きい二つの感触が…。


 涼子が楽しいと言って三回やった所で俺のメンタルが折れた。


「りょ、涼子少し休もう」

「ええーっ、もっとー」

「勘弁してくれ。もうだめだ」

「疲れちゃったの?」

「そうじゃないけど」

「仕方ないなあ、じゃあ休もうか」


 二人でテーブルに戻って休んでいると

「達也、飲み物買って来るね」

「いや、俺が行って来る。ここで待っていて」


 売店まで少し離れていた。並んで炭酸入りのソーダを二つ買ってテーブルに戻るとやっぱりかあ。


金髪と茶髪の男が彼女に声を掛けていた。


「お姉ちゃん可愛いね。俺達と遊ばない?」

「連れがいます」

「良いじゃん。俺達のほうが楽しいよ。ほら、行こう」


 金髪のチャラ男が彼女に手を伸ばそうとした時、


「飲み物買って来たよ。お兄さん達じゃまだから」

「誰だてめえ…。済みません」


 俺の顔を見たとたんに二人共テーブルから離れて行った。



「大丈夫か?」

「うん、達也なら安心出来るから」

 彼は強面も有るけど、二の腕の筋肉や腹筋の割れ方は中途半端じゃない。その上がっしりとした体。この人なら一緒にいて安心できる。

 でも私の前だと、可愛い彼氏だけど。


 

 それからまた、波の出るプールで今度は波に当たる感じで遊んだ。涼子が波が来るたびにキャッキャッと可愛い声を出して俺に抱き着いてくる。


 少し慣れたけど、もう少メンタル鍛えないと。でもどうすればいいんだ。周りを見ると同じようなカップルが女の子の体を抱き上げたり、抱合ったりして波と遊んでいる。


 慣れるしかないか……。


午後四時までしっかりとプールで遊んだ俺達は電車に乗って帰っている。涼子は俺の腕に手を回して思い切り胸を感じさせてくれながら目を閉じている。


腕に感じる感触が何とも言えない。これ慣れないといけないのか?



 ふふっ、今日は思い切り私を達也にアピールした。

 彼は随分恥ずかしがっていたけど、私は楽しくて仕方なかった。でも本当に女の子私が初めてなんだと思った。


 キスも出来た。手も繋ぐことが出来た。今日は私の体をしっかりとアピール出来た。次はあれね。でも大変そう。楽しみだわ。でもどうやって?


―――――


 達也の苦行はまだ続きます。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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