第7話 夏休み前の日曜日はデートです
今日は日曜日、午前九時に涼子の家の最寄り駅で待合せる為、午前八時二十分に家を出ることにした。こうすれば二十分前に着く。
と思っていたが、
「お兄ちゃん、こんなに早く何処へ行くの?ここ最近日曜日は教科書を持って一日中出かけていたし」
「先週までは期末考査で高校の仲間と勉強会だ」
「では、今日は?」
「今日はその仲間とお疲れ様会で遊ぶんだ」
「へーっ、珍しい。お兄ちゃんはそういう事には全くと言って良いほど興味を示さなかったのに。あっ!そうか。もしかしてお相手は、前にお兄ちゃんの頬に口紅を付けられた方ですか?」
「よ、余計なお世話だ。い、行って来る」
「行ってらっしゃい。お相手の方に宜しくねー」
バタン!
ふふっ、お兄ちゃんが茹でタコでした。しかしあのお兄ちゃんが好きになる相手って…。一度会ってみたいな。
参ったな。瞳のお陰で少し遅れてしまった。大丈夫だとは思うが。
俺は急いで二つ先の待合せの駅に十分前に着くと涼子はまだいなかった。良かった。
それから五分も経たないうちに彼女はやって来た。ショートカットの髪の毛がキラキラしている。目がぱっちりしていて可愛い唇に薄い赤のルージュが塗られている。
洋服は肩が広く出た白のブラウスに薄い茶の足首まであるフワッとしたスカート。薄い赤色のかかと付のサンダルを履いている。手にはピンクのバッグだ。可愛い。
「達也、待った?」
「今来た所だ」
「そうか、良かった。早速行こうか」
「ああ」
彼女が動かない?
「どうしたんだ。行くんじゃないのか」
「どうこの洋服?」
そういう事か。
「とっても似合っていて可愛いぞ」
「えへへ、ありがとう行こうか」
やっぱり女の子は難しい。こういう時は洋服を褒めるのか。覚えておこう。
デパートのある駅は高校のある駅の一つ向こう、涼子の家のある駅から四つ目だ。
改札を出ると
「達也こっち」
「あ、ああ」
本当は手を繋げれば良いんだけど
駅を出て大きな通りの反対側に有名なデパートが有る。信号をクロスで渡れば良いだけだけど、達也と私との間にちょっと、そう人一人くらい入れる位の距離が空いている。
信号が変わって歩き始めると反対側からも一杯人がこちらに歩き始めた。あっ、彼がどんどん離れている。
「達也!」
彼に近付こうとして人とぶつかってしまった。
「ごめんなさい」
「なんだてめえ。人にぶつかっておいてなんだそりゃ」
「ご、ごめんなさい」
「ちょっと来いよ」
「やっ!」
その時、いきなり私に文句を言った男の肩に手が乗った。
「おい、痛いのはこの位か」
「ぐあっ」
達也が男の肩を握る様に掴んでいる。
「悪いが、俺の彼女に手を出すなよ」
男が振り向くと
「ひっ!す、すみません。肩を肩を離して」
達也の顔を見て驚いた顔をした後、一目散に逃げて行った。
「あっ、信号が変わり始めている」
私は彼の手を持って急いで反対側に渡った。渡り切ったところで車が動き出した。
「涼子、大丈夫だったか」
「うん大丈夫。達也、ありがとう。でも怖かった」
「そっか、悪かったな」
「そうだよ達也が悪い」
「えっ?」
私はまだ握っている手を見ながら
「達也が私の側にいて私の手を握って渡らないからだよ。これからは私の手を握って」
「…………」
「いやなの。私の手を握るの?」
「そ、そんなことない。でも……」
不味い、なんか誘導されている。
「嫌なの?」
「わ、分かったよ」
「じゃあ、今からね」
「いや、もう人にはぶつから…」
「駄目、いつ何が有るか分からないでしょ。それとも達也は私を守ってくれないの?」
「はあー。もう分ったよ」
私が彼の手を握ったまま歩き出すと彼の顔が真っ赤になっている。ほんと彼ってなんでも初めてなんだ。まあ私もだけどさ。
「なあ、ここに来てどうするんだ?」
「付いて来て」
「こ、ここは…」
「さっ、入ろ」
「さ、流石に勘弁してくれ。俺を助けると思って」
「大丈夫だよ。さっ」
「頼む涼子、何でもするからここだけは…」
「今言った事ほんとだよね。何でもするって」
「まあ出来る範囲で」
「何達也は、舌も乾かない内から発言撤回するの。男に二言はないんでしょ」
都合いい時にそんな事言わないでくれ。
「わ、分かった」
「ふふっ、じゃあ買って来るね」
俺は、涼子の入って行った女性用水着売り場の前のベンチで売り場が見えない様に座った。勘弁してほしい。
涼子と知り合ってから初めての事ばかりだ。女の子と平気で付き合っている諸兄を見習いたいものだ。
だが、何で涼子はここに来たんだ。海にでも行く予定があるのか?
十五分位して彼女が出て来た。
「達也お待たせ。買った水着、後で着て見せてあげるね」
「…………?」汗、汗、汗、汗、汗、汗、汗、汗
「ふふっ、何恥ずかしがっているの。達也は私と一緒にプールに行くのよ」
「はっ????いやいやいや、俺はそんな約束した…」
「言いましたよ。だって私のしたい事なんでもしてくれるんでしょ?」
やられた、涼子の奴最初からそれが狙いで…。俺がこういうとこ入れないのを知っていて。参ったなあ。
次に連れて来られたのは女性用の洋服売り場だった。ここも一緒に入る事を辞退した。そして約束がもう一つ増えた。そう遊園地に行く事だ。
「ふふっ、いっぱい買っちゃった。そろそろお昼だね。達也何食べる?」
「任せる。俺こういう所来た事無いし」
「そっかあ、じゃあ、駅前の○○クにする。でも初デートがあそこじゃなあ」
えっ、初デート。これは初デートなのか。な、何てことだ。
「達也、顔がまた赤くなっているけどどうしたの?」
「えっ、な、何でもない」
「まあ、いいわ。初デート〇〇クも良いかもね。行こう」
「…………」
世の中の陽キャ男性諸氏。頼むから「HowToデート」なる本を売り出してくれ。絶対買うから。
そこで俺はビッグ○○○を二つとコーク、涼子は魚の奴とアイスコーヒーを頼んだ。
「さすがだね。それ二つ簡単に食べてしまうなんて」
「まあ、花の高校生だからな。食欲は旺盛だ」
「私は食べないの?」
彼女が耳まで赤くしながら下を向いている。
「…………!!」鼻、鼻、鼻、血、血、血
鼻血が出そうになった。
「りょ、涼子。滅多な事を言うものじゃないよ。そ、そんなこと…」
急に顔を上げて
「ふふっ、冗談よ。でもいつかね」
タラッ、タラッ……!
本当に鼻血が出た。女の子ってこんなにメンタル強いの。俺自信無くなって来た。
この後、近くの公園で二時間位散歩して家に帰った。もちろんしっかりと手を握られて。
涼子を送って行って丁度午後五時。これ高校生だよね!!
―――――
強面で腕っぷしは強くても女の子には免疫力ゼロですね。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます