寝取られた元カノ？、知らない許嫁、陽キャな幼馴染も皆要らない。俺の望みは平穏な高校生活だ！

第2話 下校途中で

　俺は職員室で三頭先輩と別れて下駄箱で履き替えると校門に向った。運動部の部活もいくつかの部を除いてほとんどが終了している。

　校門の方を見ると男子と女子が賑やかに話ながら帰って行く中に見知った子がいた。本宮涼子だ。みんなと楽しそうに話している。

　こんな時間まで学校に居るんだから何か部活やっているんだろうな。俺は今まで授業が終わると直ぐに下校していたから分からなかったが。

　なるべく近寄らない様に距離を離して歩いていると賑やか連中が別れて改札に入って行った。

　何とはなしにそれを見ながら俺も改札に入ると本宮が俺の帰る方向のホームに行った。

　あれっ、あいつ同じ方向だったっけ？

　中学は高校と俺の家との間にある。だから彼女の家の方向は分からなかったが、この駅から見れば同じ方向という事か。

　そんな事を考えながら彼女と距離をおいてホームで電車を待っていると

「立石君」

声の方向に振り向くと

「えっ？」

本宮涼子が俺の側に来ていた。

「珍しいわね。君がこの時間にホームにいるなんて」

「…………」

　いちゃいけないのかよ。じっと彼女を見ていると

「ふふっ、いつ見ても鋭い目ね。武術でもやっているの？」

「…………」

　本宮が俺に話しかけて来た。理由が分からず考えていると

「ねえ、立石君。あのクラスで知っているの君だけなんだ。だから挨拶位出来ないかな？」

　そんな話か。別に良いけど俺なんかに話しかけても誤解されるだろうに。

「大丈夫よ。君に挨拶しても誰も誤解しないから」

　なんだ。俺の頭の中読んでいるのか。嫌な奴だな。

「…………」

　また黙っていると

「ねえ、そんなに身構えなくても良いじゃない。何か言ってよ」

「ああ」

「それだけ？」

　なんだこの女。変な奴だな。普通俺に声を掛けるのも嫌がるのに。

「本宮、俺に何か用か？」

「あっ、私の名前覚えていてくれたんだ。嬉しいなあ。じゃあさ、朝と帰り位挨拶しようよ」

「…まあその位なら」

「ほんと、じゃあ今日からね」

「へっ？」

　ホームに電車が入って来た。仕方なく一緒に電車に乗る。一緒に並んで吊革に摑まると

「立石君ってほんと無口だよね。女の子に対しては」

「べ、別に無口とかじゃない。な、慣れていないだけだ」

　唯一あいつ以外は。

「そっかあ、じゃあ今日から私と練習しようか」

「練習？」

な、何言っているんだこいつは。なんで俺が練習しないといけない。

　ふふふっ、思った通りだわ。立石君が静かなのは女の子に免疫が無いだけ。

「あっ、もう着いちゃった。じゃあねえ立石君。また明日」

　さっさと降りてしまった。この駅は中学校のある駅だ。あいつ中学時代は徒歩通学だったのか。だから分からなかったんだ。

　俺の家の最寄り駅はさらに二つ先。降りて十分も歩かない内に家に着いた。玄関を開けて

「ただいま」

タタタッ、

「あっ、お兄ちゃんお帰り」

「ああ、ただいま瞳」

俺の姿を確認すると直ぐに奥に行ってしまった。

　立石瞳。俺の可愛い妹だ。中学三年生。背中まで伸びた黒く輝く髪の毛、細面に切れ長の目、スッとした鼻筋に可愛い唇。胸は控えめ。身長百六十センチ。母親似でとても綺麗だ。一緒に歩いても兄妹だと分からないだろう。

　俺と一緒に幼い頃から爺ちゃんから武術を習っている。その辺の男が近寄っても返り討ちに出来る。

　前にデパートのある駅で待ち合わせをした時など、言い寄って来た男二人が可哀そうと思ったほどだ。少し手加減しろと言うと、していると言うがどう見てもしていない感じだ。

　俺はダイニングまで行って母さんに挨拶だけすると二階の自分の部屋に行った。

　着替えながら

　本宮涼子。なんなんだ。普通俺に近付く女の子なんていない。まあ確かに同中で同じ高校同じクラスなら、あいつの言っている事も分からないでもないが。

　それにしてもあいつは、クラスの中でもイケメン連中と良く話しているし、女の子とも仲が良い。俺なんかと登下校の挨拶をしなくても良いだろうに。

　次の朝、教室に入るといつもの視線を感じた。俺が席について健司と朝の駄弁りをしていると

「立石君、おはよう」

「あ、ああおはよう本宮さん」

　俺からの挨拶を聞くと自分の席に戻って行った。周りの子が目を丸くして驚いている。

自分の席に戻ると早速質問されているみたいだ。

「なあ達也。おまえ本宮さんと知合い？」

「ああ実言うと同中なんだ」

「ほんとかよ。でもなんでいきなり今日お前に挨拶に来たんだ？」

「実はな…」

　俺は昨日の下校時に起こった事を話した。

「なるほどなあ、まあ確かに彼女の言う事も分かるけど」

「なんだその含みは？」

「いや特に意味はないが」

「どうせ、俺の顔じゃあ、女子なんて声も掛けないはずだ、なんて思っているんだろう。健司はイケメンだしな。ふん」

「達也、そんな事言ってない。好みは人それぞれだ」

「ほら、言ってるじゃあないか」

「おい、そこの二人、ＳＨＲ始まっているぞ」

「「スミマセン」」

　桃坂先生が入って来た事を気付かなかった。

　今日も放課後は図書室に行く。ドアが開いているので中に入るともう三頭先輩がＰＣを立ち上げようとしていた。

「先輩早いですね」

「うん、利用者の中に授業終わると直ぐに来る人もいるから」

「そうですか」

　感心するなこの人に。まあ容姿は普通、眼鏡かけている。でもよく見ると美人系かな。胸大きいし。

「立石君何処見ているの！」

「あっ、いや。その」

　胸見ていたのバレたかな。

「まあ、いいわ。図書システムの立上げからやるから見てて」

「はい」

　昨日で俺になれたのか口調が怖い。なんか本宮に続いて苦手な人になりそう。

図書室も閉める時間になると

「昨日教えた手順で書棚への返却処理をしてみて。見ているから」

「はい」

　俺は受付の椅子の後ろに置いてある返却済み本の書棚への返却処理を行うと

「立石君、書棚のカテゴライズについて説明するから、その返却本持って来て」

「はい」

　うーっ、先生みたい。でも先輩は書棚の中に本がどういう風にカテゴライズされて入っているか丁寧に教えてくれた。

　教えてくれる姿、横顔とか手を伸ばした時に引っ張られる様に見える胸とか、ちょっと気になってしまったけど。何考えているんだ俺。でも先輩よく見ると結構美人だな。

「明日から自分で書棚への返却もしてみて」

「分かりました」

「じゃあ、今日は締め処理して終ね。ドア閉めて鍵返しに行こ」

「あっ、俺が返しておきますよ」

「そう、じゃあお願いね」

　締め処理をしてＰＣをシャットダウンすると三頭先輩は先に帰ってしまった。俺は職員室に鍵を返して下駄箱に行くとショートカットの女の子が待っていた。

「一緒に帰ろうか」

―――――

　思ったより早い展開の様な。

次回をお楽しみに

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