第12話 エピローグ
私は、あわやというところで、水田に埋もった頭部を引っこ抜くことに成功し、稲としての余生をまぬがれた。
「おのれ、一度ならず、二度までも!」
ブルブルと顔を振って泥水を飛ばすと、皆の姿を探す。
離れた場所で、クラーラをレーアさんが助け起こしていた。呼びかけると、二人とも元気に手を振り返してくれた。どうやら、大した怪我はないようだ。はて、もう一人の姿は・・・もしかして、埋まってる?
いや、水田の彼方、森の際で水面が揺らめいたのを、私の目は見逃さなかった。
水から上がったその影は、束の間、こちらを振り返り、そして森の中へと消えていった。
ヴェリーヌの街を囲む二重のカーテンウォール。その美しく再建された内壁は、きっと地面にまで及んでいる大きさで、綺麗な円形に切り取られていた。
森の木々が、本来の青さを取り戻し、鳥たちが朝の到来を喜び、歌を交わす。
やがて朝日が水田に反射し、光の道を創り出す。
街に角笛の音と、飛龍の雄叫びが轟いた。
(了)
異世界バイトの英雄譚 小路つかさ @kojitsukasa
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