第17話: なぜ、社会は変わらないのか? ⑤

今は手口や決済方法が巧妙化しており、本人確認が義務付けられていていたとしてもなかなか難しい部分がある。そして、それらの行為が見つからないことで被害が拡大して言ってしまうのだ。これは、会社などの組織でも同様のことが言える。例えば、雇用契約に関して個人でばらつきがあることを指摘されても「別に法律に則ってやっているから問題ない」と突き返す人がいる。


 もちろん、営業ならノルマ未達成など個人が会社から課された基準値を上回れていないなど契約の不履行分が存在するならある程度の減額や未支給は致し方ないだろう。しかし、これらの問題として、きちんと契約を結んでいるのかどうかが問題点になる。よくあるのが、契約書に未記載の内容を勝手に計上して既存名目で差引もしくは加算するという行為が行われる可能性があることだ。これらの行為は違法だが、実際には黙認されてしまっているのだ。つまり、日本は弱者の立場に立ったときにどのようになるかを想定できないということになる。しかも、これらの考えの中には「そういう人は努力しない」・「そうなったのは自分の責任だから仕方ない」とひとくくりにして片付けてしまう。そのため、本当に困っている人に対して必要な支援が行き渡らなくなる。そして、その支援を受けられなかったために頼れる場所がなくなり、引きこもりや孤独死など悲惨な末路を迎えてしまうのだ。


 だからこそ、この時点できちんと臨検なり、外部調査を行うなどして企業の正しい運営がされているのか?過去に不当解雇や大量退職など会社の人事で不審な動きはなかったか?など労働者を守る意味でも、会社を適正に運営していく上でも必要な部分は可視化するべきだろう。まして、来年度の新卒採用や中途採用を含めた採用活動があまり活発化しておらず、このまま行くと“就職難民”や“転職難民”が増加する可能性が懸念される状況で不当解雇等が行われている状態では健全な社会運営などに支障を来す可能性があるのだ。


 現在の状況から考えて、早急に政策を考え、特別措置もしくは緊急支援策を考えなくてはいけないだろう。しかし、それらの考えを検討している様子はないため、このままだと経済格差や雇用格差などが更に広がっていき、場合によってはGDP(国内総精査)やプライマリーバランスなどに大きな打撃を被らせることになるため、手遅れになってしまう可能性が否めない。


 だからこそ、ベーシックインカムの導入と個人事業主の待遇の拡充、失業者向けに特別支援金を支給など上ではなく下に目を向けて支援を行い、下が安定すると徐々に上に恩恵が上がって来るのだ。今の日本はトップダウン方式になってしまっているが、一時的にでもボトムアップ方式に移行させることも経済を回復させるには重要なことだろう。

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