5-2 確執
「姉様、お願いだから、理由を教えてよ! なんで母上をこんな所にっ」
結界牢の見えない壁にへばりついて、
後で入れられた自分はともかく、宗主はもう何日もここに囚われていた。疫病がなぜか治っているが、体調は悪そうだった。
「あなたは黙っていればお人形のように可愛らしいのに、どうしてそんな風になってしまったのかしら?」
薄茶色の真っすぐに揃えられた前髪が大人しそうな印象を与える
残った癖のある髪の毛は背中に垂らしていた。大きな愛らしい灰色の瞳。長い睫毛が彼女の容姿をさらに幼くさせる。
耳には白と紫の花びらが付いた蘭の小さな耳飾りをつけていた。
「そこで大人しくしていて。私は、宗主代理として、ここに来る大事なお客様をお迎えしないといけないのだから」
「なにをするつもりなの?」
宗主はそれが
そして、宗主だけが知っていることを、目の前の娘は知らないのだ。
(どうしたらいいの?
あの日、
ちょうどこの牢に入れられる前にそれは伝えられた。宗主の間でだけ交わされる特別な通霊で、頭の中に直接、
「ふふ。母上、わかっているでしょう? 私が
「あなた、本当に、どうしてしまったの?」
あの四神奉納祭の後、正しくは、
「特別なお人形がやっと手に入るの。誰にも邪魔はさせないわ」
にっこりと右頬に手を当てて、うっとりとした顔で語る様は、異常としか言いようがない。娘の変わりように、宗主も
どんな言葉も彼女にはもう通じないのだと、思い知る。
灯篭の仄かな灯が地下を照らしていたが、
そして、この日からちょうど三日後。
内情を何も知らない
そこで待っていたものは、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます