3-16 運河の底に潜むモノ
(すごい······これが
しかも
相手は水の龍なので、動きを止めるには『
水龍は蛇のようにその身をうねらせ、
上空で行われている攻防に、
それを物ともせず、
決して水龍が弱いわけではなく、彼が強すぎるのだ。さすが五大一族の中で一、二を争う、実力者のひとりと呼ばれているだけはある。
しかし水龍もただされるがままというわけではなかった。その陰の気を帯びた水を自在に操り、無数の鋭い水の矢を自分の周りに作り出し、
それを双剣ですべて弾きながら
(······危ない!)
思わず
大きく口を開けて、目の前の
(
あの日、夫人が持ってきたその譜面に奏でられた音には、術式が施されていた。
一体どこで手に入れたのかと、
その曲は今まで奏でたことのないような曲調で、所々で奇妙な音飛びをするので、完璧に奏でるまでいつもよりも時間がかかった。
(陰の気を浄化する曲······都合がよすぎないか?)
まるでこうなることを予測したかのように、自分の許へとやってきた、譜を使った術式。これは偶然なのか、それとも必然なのか。
水龍の動きが完全に止まり、漆黒の水が少しずつ透明に変わっていく。
双剣を消し、人差し指と中指を立てて、口許に持っていく。陣を発動するための言葉を紡ぐと、水龍を作り出している運河の上に白い光を帯びた大きな陣が現れた。
その陣は水龍の真下、源になっている運河の水だけを凍らせた。途端、先程まで激しく渦巻いていた水の流れがそのままの状態で凍り、水龍の根本までも凍らせた。
それはまるで、精巧に造られた氷の彫刻のようだった。
「よかった······これでこの子も、」
安堵したのも束の間だった。
運河の奥底からゆっくりと這い上がるように、黒く長いモノが伸びていく。絡まった藻のような、人の髪のような
気付いた時には、到底抵抗できないような強い力で、勢いよく運河の中へと引きずり込まれていた。
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