2-7 白笶と妖鬼
それはこの鬼の力なのか、どこかに灯りがあったのか、辺りを見回す余裕がなかった。
眼を逸らせない。
「でも本当に、俺は、君を知らない」
「ずっと眠っていたから、思い出せないだけ。身体のどこかに印があるでしょう? それがあれば間違いない。俺があなたを間違えるはずがない。匂いも一緒だし」
手を添えて身体を起こさせ、顔を近づけてくんくんと犬のように鼻を鳴らす。呆然とされるがままになっている
さすがの
「え? ええっ! ちょっ······な、なにを?」
「俺が確かめてあげる」
脱がされた水浅葱色の薄い羽織がそのまま地面に広がり、白い上衣に両手が掛けられ、ゆっくりと肩から肌を剝き出しにされた。
胸の辺りまで露わになったその時、
そこには透明で青白く光る、長細く鋭い飛針があった。
「あっぶないなぁ。このひとを傷付けたらどうするつもり?」
「それはあり得ない」
「怖い怖い」
上衣から手を放し、鬼は
肩を竦めて笑いながら言っているが、眼はまったく笑っておらず、むしろ冷ややかでさえあった。
そんなやり取りの中、
そこには、何を想像していたのか青ざめた表情をしている
「やっぱり追って来たか。さっきはどうも」
ぽいっと指の中の氷の飛針を投げ捨て、代わりに手をひらひらと振った。
頬の傷はもう消えてなくなっているが、その攻撃をしてきた者の事はしっかりと捉えていた。
「離れろ」
今まで聞いたことのないくらいより低く、目の前の者を牽制するような声。首を戻して、思わず鬼の方を
鬼は口角を上げて、挑発するかのように
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