第3話 蹂躙

《封印フェーズ》

《SCORE:80》

《KILL:人間(低級)×8》


《SCORE精算フェーズ》

《SCORE:80>覚醒値:11》

《学習値:4》


《覚醒フェーズ》

《学習:『戦闘技術(低級)+3』》

《学習完了》

《覚醒、開始》

──────────────────


 今回のスケルトンの覚醒には二日掛かった。とは言うものの、スケルトンに時間の感覚は無く、夜の平原で目覚めたらただ人間を殺すために集落に向かうだけである。


「カタカタ」


 集落に到着すると、もう見張りはほぼ消えていた。それと常に警戒状態にもあった。

 もうスケルトンが今日も襲撃してくるのではという恐怖心が、人間らは遠くから既にスケルトンの接近を目視していた。


「来たぞ! やれええぇ!」


そしてまた上空から降る無数の石。

 それは前回より多く、スケルトンの襲撃に準備していたということが分かるほどであった。


 しかしスケルトンは、それら全ての石の軌道を読み、自分に当たる石のみを槍で弾いていく。


「おいおいおい……なんなんだよアイツ!!」


「カタカタ!」


 そうしながら、段々と歩み寄るスピードを上げていき、スケルトンの槍の間合いに人間らが入る頃には、全力で走るほどのスピードになっていた。


「やめろやめろ! くるなあああぁ!!」


 折角準備していた大量の石は無意味に終わることに人間はスケルトンの急接近に叫ぶが、その声も無へと消える。

 スケルトンの矛先が人間らに届くときには、無惨に血飛沫が舞う地獄と化していた。


 そうして遂にその集落には真の静寂が訪れた。豚や牛の家畜は殺害対象では無いため、見逃す。


 さぁ、次の村か町へ行こう。そうスケルトンが振り返り行動を開始した途端、頭部に当然の衝撃を感じれば、倒れたまま動けなくなった。

 そこにスケルトンに向かってザクザクと土を踏み締める音が聞こえる。


「なぁんだ。所詮はガイコツじゃないか。まぁいい。回収しよう」


 スケルトンは目の光だけ動かし、それが一人の人間だと知るが、どうにも身体は動かさなくなっており、その人間に足を掴まれれば、そのまま何処かへ引き摺られていくのだった。


──────────────────

《封印フェーズ》

《SCORE:120》

《KILL:人間(低級)×12》


《SCORE精算フェーズ》

《SCORE:120>覚醒値:23》

《学習値:4》


《覚醒フェーズ》

《学習:『気配察知(低級)』》

《学習完了》

《覚醒、開始》

──────────────────


 スケルトンは二日後覚醒した。

 そこは暗く狭い独房のような空間だった。

 床、壁、天井は全て黒く塗られたコンクリートで造られており、部屋の広さは丁度人が二人入れる程で、天井はやや高い縦長の直方体に造られていた。


 更にその部屋の天井四隅の内、スケルトンを正面にした二隅の左には魔力拡声器かくせいき、右には映像記録媒体カメラが取り付けられていた。

 そしてその拡声器から、スケルトンが起き上がるのを待っていたかのように、一人の男の声が発せられる。


「やぁ、おはよう。起きたようだね。目覚めはどうかな?」


「……」


 スケルトンはただ声がした左上の拡声器に顔を向けて黙る。

 ただこれは威嚇している訳でも、警戒している訳でもない。普通に人間の言葉が理解出来ず、声がした方に顔を向けただけである。


「ははは、私がいるのはこっちだ。右上のカメラに顔を向けたまえ……。

 あぁ、君の戦闘能力は斥候の者から聞いたんだがね。

 どうやら言語能力までは持ち合わせていないようだな。ならばこれ以上言葉を交わす必要は無いようだ。それでは」


 そう男が言い終われば、拡声器から聞こえる声はブツリと切れ、それ以降声は一切聞こえなくなった。


 スケルトンが魔王によって召喚される以前は、何処かに閉じ込められていたのではなく、魔王の魔力の一部として、そもそも魔物として生きていなかったため、このような閉鎖空間に閉じ込められることは、"初"ではあるが、"遺伝"的に記憶していた。

 だから特に不安や不快感は感じなかった。


 とは言うものの、スケルトンはまだ感情が芽生えていないため、どちらにせよなにも感じないのであった。

 しかし、"人間を殺す"という魔王からの命令のみは従う。


 感情でも記憶からでも無い、本能である。

 スケルトンはそうと決まれば、骨の拳で正面の鋼で作られたドアを破ろうと殴る。

 だが、当然ながら骨の拳では鋼のドアには傷ひとつを付けることは出来なかった。


 そしてそれをただモニター越しで様子を伺う男がいた。


「なるほど。何も抵抗しないと思いきやドアを破ろうとするとは……まったく、何を考えているのかさっぱりだな。

 まぁ良い。骨だけは回収するとしよう。抵抗をやめさせなくては」


 そう言って男は自分のすぐ横にある赤いスイッチを手のひらで強く押す。

 このスイッチは実験用生物をより綺麗に一撃で"処理"するための所謂"掃除ボタン"。

 実際用生物のいる部屋に急激に超高圧電流を流すことで、絶縁体でない限りは一撃で爆散するというもの。


 一見、骨も回収できないように見えるが、男は研究のため、ほんの少しのサンプルだけでも取れれば良かった。


 そうすればモニター越しにてドアを破ろうとしているスケルトンは、男の目と鼻の先で破裂音と共に一撃で爆散。粉々になってしまった。


「よし。回収してこい」


「はい」

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