第15話 公園にて
ポラロイドカメラを買おうかどうか悩んでいる。
普通に風景とか……母とかヤンとか先生とか撮りたい。でも今は盗撮とかうるさそうだし結構値段も高い。スマホでいいじゃんて話だけれど、撮ったフィルムをペラペラ振りたい。振って現れた景色を眺めたい。
今日は公園に来ていた。こうして今ある風景もカメラなら保存できる。スマホでもいいけれどスマホに画像を入れるのが私はあんまり好きじゃない。容量の問題もあるしね。
それにしてもこの公園に来ると金属が擦れるような悲鳴のような金切り音がして耳が痛い。みんなはなぜ大丈夫なのだろう。
ヤンが子供達と遊んでいる。公園ではボール遊びが禁止なので普通に鬼ごっこをしていた。公園に来て何時も思うのだけれど、子供の中の数人、ほぼ二人の子供が、何を言っているのか言語が理解できない。他の子供が簡単な言葉を言っているのに、この二人の子供の言葉だけが理解できない。ひどい呂律とか、甲高い音とか、そういうものではなくて、普通の音域だと思うのに、この二人の言葉だけ、意味というのか内容が解読できない。
あと、金切り音がうるさい。この公園、とにかく金切り音がうるさい。
二人の子供が来て、私に何か話しかけている。虐めとかそういう話ではなくて、本当に何を言っているのか聞き取れない。だから何を言われているのか理解できなくて、それを告げるのも躊躇われ、どうしていいのかわからず、曖昧な笑顔を浮かべる。他の子供とは普通に会話が通じているらしく、日本語であるのは間違えない。ヤンとも話しているけれど、ヤンの言葉しか理解できない。
何かを話して、二人で笑って、そして……子供達の中に溶けるみたいに、何時の間にかいなくなる。
手で作った四角の中に彼らはいない。
ヤンが戻って来て、隣に、ベンチは頑丈で、ヤンの体重では僅かな揺れもない。
汗をかいたのを気にしているのか、ポケットから出したウェットティッシュで体を拭いていた。柑橘系の匂いがする。汗の匂いとか気にするんだ。
「楽しい?」
「あ? あぁ。ガキはいいよな気楽で」
私達も、世間一般ではまだ子供。そう言おうとして皮肉っぽくてやめた。ついでに言うと、学校帰りに公園に寄っている辺り私達も気楽だ。
「ここ、金切り音、みたいなの、うるさくない?」
「あ? あぁ。そういや、そうだな。どうせ遊具がサビてるんだろ」
ヤンはそう言うけれど、この公園に遊具は無い。そしてこの公園の土の中には沢山の小銭が埋まっている。どうして小銭が埋まっているのか解明のしようが無いし、小銭を拾い公園から出ると必ず怪我をする。
ここはこのまま公園で良いのだろうか――車の音が響いた。また子供が怪我をする。
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