第11話 殺すぞが多い


 最近ヤンキー子ちゃんが良く空き教室にいる――略してヤンと呼んでいる。

「おー。来たのかよ。よぉ」

 暇なのかな。私は暇だけど。

「ヤン」

「おぉ」

「暇なの?」

「殺すぞ」

「殺しちゃダメだと思う」

 ヤンがいるとゲーム作りを邪魔されるので、今日はプログラムを打つのは無理そう。

「お前また猟奇なゲーム作ろうとしてるんじゃないだろうな」

 露骨にため息をついて見せる。私の先制攻撃。

「てめぇ、人の顔見てため息ついてんじゃねーよ殺すぞ」

 ヤンは私が猟奇なゲームを作らないように見張っているらしい。

 一応説得を試みる。

「前も言ったけれど、これは色だから。これ、猫の形をした色。これを猫だって認識しているのは貴方で、実際は生き物でも何でもないただの色と文字だよ」

「わけわかんねーこと言ってんじゃねーよ。馬鹿かよ。殺すぞ」

 通じない。

「このただの猫の形をした色はダメなのに、本物の、生きている、生物的な、私を、ぶったり、暴言吐いたりするほうが、どうかしていると思うよ?」

「はぁ? ぶってねーだろ。殺すぞ」

 何言ってんだコイツって顔をするのはやめてほしい。

「おめっ何言ってんだよ。猫は猫だろうが殺すぞ」

 だからただの絵なのに……今日はダメそう。殺すぞって口癖なのかな。

「殺しちゃダメだよ」

「は!? 殺すぞ‼」

 だから殺しちゃダメだってば。

「猫好きなの?」

「……すっ‼ ……好きだよ。普通だろ‼ そんなの‼ 殺すぞ‼」

 ここは和解の選択で。モデルにした猫の写真をデバイスに表示してスライドショーを展開。これでどやぁ。

「なんで猫の写真を表示してんだ……殺すぞっ」

 和解……できなさそう。

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