第10話 ヤンキーに絡まれる


 今日は珍しく部室にヤンキー子ちゃんがいた。

 金髪、短いスカート、ピアス――机に乗せた足。

 違反をいくつか過ぎている。でも誰も注意しない。今は個性が大事なんだって。

 部室に入るとヤンキー子ちゃんは私を一瞥して、スマホに視線を戻した。

「ちっ。むかつくぜ。こいつ――」

 舌打ちする人って本当にいるんだ。

 先生早くこないかなとイチゴミルクの紙パックをバックから出して机に置いた。

「おいお前」

 おいお前という名前ではないけれど、一応は意識を視線として向ける。この空き教室に現在生きた人間で彼女の他には私しかいない。

「これ、どう思う?」

 スマホの画面には、サイトが表示されていて、見慣れた色彩に……ゲーム投稿サイトの私のページだ。

「コイツよ‼ 猫を殺すゲームなんて作りやがって‼ ほんとにムカつくぜ‼」

「むかつくの?」

「ムカつくぜ‼ 頭おかしんじゃねーか。こういう奴、本当に腹立つぜ‼ お前もそうだろ‼」

「そうですね。猫は殺しちゃダメですね」

 この反応が強いほど良い。鞄からデバイスを出して電源をオンにしてサイトを表示。

 来月のゲーム……対象は何にしようかな。次はウサギかな。ウサギを縊り殺すゲーム。あんまり過激な題名じゃなくて、ファンシーな感じがいい。首狩りウサギゲーム。ふわふわウサギ狩り。うーん。

「つうかお前何して……なにしてんだ?」

「ゲーム作ってます」

「すげぇな。どんなゲーム作ってんだよ」

 作ったゲームの画面を表示して、デバイスの画面を向ける。

「へぇ」

 スマホの画面を見て、デバイスの画面を見て、もう一度スマホの画面を見て。

「お前っ、お前、これ。お前これ‼ お前が作者じゃねーか‼」

 知ったら変な奴だと思って近寄られないとこの時は思っていました。

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