第7話 少女の憂鬱
父と母が離婚したのは、私が『十』の時だった。
きっと折り合いがつかなかったとか、父が浮気したとか、そんな理由。
母は淡々と父と離婚した。父は私を連れては行かなかったし、自然と私は母の所へと残ることになった。連れていけなったし、母も譲る気がなかったのかもしれない。
それは母が私を愛しているからとかそんな理由ではない……とは言い切れない、やっぱり愛しているからなのかもしれない。
私がいてもダメなものはダメみたいだ。
まもなく父は再婚したし新しい家庭に移っていった。
何もできないし決められない。淡々と通り過ぎてでも何も変わらない。母も何時も通り。
何年もの歳月が過ぎたけれど私は未だに父に会えと言われる。子供にとって父親である事に変わりはないと。少なくとも私は浮気する父は嫌だなぁ。それは何年経っても変わらない。
それでも貴方のお父さんなのよ。そう言われるとひどく胸が痛い。
貴方はそんな浮気する父親の娘なのよと言われているみたいで。悪気が無いのもわかる。少し生暖かいだけ。母を思えば父に良くすることはできない。
父の新しい奥さんは私を見ても目を反らさなかった。
「好きな物を選んでいいから」
父は優し気にそう言い、血の繋がらない妹染みた何かが父の隣でスマホを弄っていた。
何も言わない私に父は笑みを浮かべるし、愛想が無いとか、無理に喋らせようとか、そんな事をしない。
父に会いたくないわけではないけれど……父に会わなければ母が責められる。
なぜそうなるのか。それはどうなのか。子供の意思が大事なのではないのか。私の意見はあまり関係ないのか。
時系列的に言って隣の妹染みた何かが私の血縁である可能性は低い。それでも父は隣の子を妹だと言う。スマホを弄るその子は毎回嫌々来る。会っても気まずいだけ。
断ればいいのにと思いつつ、貴方も複雑だよねとは思う。共感してもらえそうにはないしむしろ嫌な顔されそう。
家庭が複雑なのはお互い様で、それに同情はするけれど性格は多分全然違う。違う、かもしれない。この子の性格をあまり知らない。でも容姿からして真逆。
父にどう接したらいいのか、妹にどう接すればいいのか気まずい。気まずまずまずまずまずまずまず。
早く帰りたい。母は私を殺す妄想を良くするらしい。でもそれは別に病んでいるからとか父親を怨んでいるからとか、そういうわけじゃない。
私は父に会わなくていいと言われたら、多分ほっとしてしまう。
だって気まずいんだもの。
恋人と別れても友達として接せられるのは強い人だと思う。
浮気した親を許して普通に接せられるのも強い人だと思う。
でも私は普通に接したくない。そうしなければダメだと思うから。
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