第3話 二人の先生
空き教室で微睡んでいる。飲みかけのイチゴミルク。
昼寝部。活動内容は何かって、お昼と夕方に少し寝ることで学力の向上を目指しますってそういう部。部員は三人、一人はヤンチャ子さん、一人はギャルさん。二人はいつもいないので幽霊部員。
傍には先生。眼鏡で笑顔の。笑顔……かな。
たぶん空気というのか、振動っていうか、それを伴っていないと言うか、やっぱり、光とか音とかとは無縁だと思うの。
先生は優しい。じっと見つめ合っても、たぶん、先生は私を見てはいないだろうけれど。
足音がして、扉が開き、栗毛の先生が入ってきた。
タバコでも咥えていれば様になりそうで、実際ヘヴィスモーカー。
ぼさぼさの栗毛は地毛なんだって。色素が普通の人より少し薄いってこと。
少し乱れた服、だるそうと言うより、アンニョイと言うか、目が死んでいる。
「あらぁ」
先生は眠そうに手を上に上げて、私も手を上にあげた。
「真面目ねぇ。他の二人は一切来てないっていうのに」
まぁね。私は、部活というよりは――飲みかけのイチゴミルクのパックを掴み、先生に差し出す。
「あん?」
傍、椅子の音、少しうるさい。タバコの匂い。軋む。
「先生さ」
「あぁ?」
「タバコ臭い」
「えー? そう?」
「うん」
「イチゴミルクってなんかいいわよねぇ、なんていうの、ほら、乙女チックっていうのか。学生っていうか、初々しいっていうか」
口をつけて、一口、喉を通る、横目に、先生の、返してきて、蓋を閉じて、机に。
「先生さ」
「ん?」
「やっぱりタバコ臭い」
「そんな臭い? おかしい、消臭してるのに」
それたぶん、服の臭いじゃなくて髪についている。
もう少しだけ、顔をあげて、手を伸ばして、髪に、手を、震えて、指先、近づけて。
私は、先生のことも嫌いじゃないよ。
でもやっぱり、二人は違う。
手の中にある髪はやっぱりタバコ臭くて、視界の端には先生の足が揺れている。
どうして、こんなに、違っちゃったのだろうね。それは私にもわからない。
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