◯◯新聞デジタル版【特集】
端書き|路傍の石、投じる
突然だが、本紙読者の皆さんは、家族を大切にしているだろうか。僕はとても大切にしているのだが、反抗期の娘や冷え切った奥さんの様子を見ていると、何だか家庭という場所は、酷く狭苦しいものに感じる瞬間があった。ただ、僕はまだそのレベルでしかないが、世の中にはもっと辛い家庭があるのではないかと思ったのが取材の始まりだった。
訪れたのは、四方を海に囲まれた離島である。船着場には無選別に漁船やフェリーが停まる。海鳥の群れは家族なのかそうではないのか、そんなのはどうでもいい。取材とはいったものの、人がそもそもあまり見当たらず、僕が呆然としていると、そこに漁船が来た。漁船からは、ワイルドそうなルックスの男が出てくる。男に、自分の報道の必要性やアイデンティティについての考えを話したら、男は「一匹狼らしい顔をしている」と笑いながら言った。しかし、たまに当たりというものは運良く転がっているものだったりする。男が、僕の中での特ダネを持ってきてくれた。
「今日はマグロが大量に釣れたから、やるよ」
それは、少し古びた感じの日記帳で、〝わたしの夢風船〟と銘打たれていた。名前からは想像もできないような内容が、そこには書かれていた。一晩悩みながら、ここまでの文章を下書きしてきたが、やはりこれは発表するべきだろうと欠けた月を見て思い至った。本文は明日より、連載形式でお届けしようと思う。路傍の石のようなちっぽけなニュースで、この世の中に一石を投じれれば僕はそれで良い。網に捕らえられたマグロは、一体何を思うのだろう。
文:
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