エピローグ

 家に帰ったら、碧が捨て猫を連れ帰って来ていた。拾ってきたのは昨日だと言うのに、彼女らは同じ目をしながら互いを撫で合っていた。碧は母親を捨てた方で、でもそれは仕方がないことだった。俺が社会に捨てられたのも、消費されたような気がするのも、また仕方がないことだ。親族を1人失ってしまった時や、海、新幹線などできっとあの日記を思い出してしまう。それは別に構わないけれど、ただ1つだけ娘に謝りたかった。


「碧、ほんとにごめんな」


声を詰まらせながら言ったら、娘は笑って、その後にちょっと真面目な顔になって言った。


「本当の家族っていうのはさ、1度バラバラになってからまた修復できるものだと思うねん」


一瞬猫に視線を移して、そしてまた俺の顔を見た。


「うちにはそれがまだ出来るでしょ? パズルだったらお父さんはボロボロすぎて組み合わせられないかもしれへんけど」


無邪気に娘が笑うから、釣られて自分も笑うけど、徐々に涙に変わっていく。


「バカだな、泣かないでよ」


俺は娘の元に近寄り、猫を撫でた。そして、俺は娘に背中をさすられた。


「新しい家族も増えるんだし、これからもっと楽しみだね」


俺は頷いて、涙を吞む。

しっぽを立てて振る猫は、少し妻に似ているなと、夢みたいなことを思った。


[了]

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風船と気球の交わらない夢 QUILL @QUILL_novel

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