第2話

「こんなところに自販機なんてあった?」


「「え?」」


「それに、私の家の近くでは工事をしてなかった気がする」


それを聞いて2人が焦りだす。


「待って待って。じゃあ、ここはどこよ?」


「ちょっと聞いてみる?」


「すみません、ここってどこですか?俺ら、迷子になっちゃって」


葵の微笑に負けて、もじもじしながらJKが答える。


「えっとぉ、ここは、檜町ひのきむらですよ」


檜町。私達が住んでいる町の名前だ。


「そっか、ありがとう」


離れようとするが、JKが粘ってくる。


「いえいえ。なんなら、案内しましょうか?行き先を教えて下さい」


「いや、大丈夫。檜町なら知っているから」


「でもでもぉ.....」


「何か?」


くどい。そんな気持ちを込めた鋭い眼光に気圧され、JKは逃げていった。


「「「....................」」」


しばらく、静寂があたりを包み込んだ。


少しして、葵が口を開いた。


「ここは、檜村。でも、少し違うところがあるってことでいい?まず、ここはどこか、だよね」


並行世界パラレルワールド?」


1つの可能性を口に出してみる。


「ありえる?っていつもなら思うけど。こんなところに実際に来てみたら.........そりゃあねぇ、否定できないわ」


と、香織が相槌を打つ。


「だよね」


会話が途切れる。みんな、混乱していた。当たり前だ。こんなところに来て、誰の思惑かもわからず、いつもと違う檜村を目の当たりにしたら。


しばらくして、香織が呟いた。


「今日、どこで過ごそう?」


「「あ.........」」


私と蒼の声が重なる。


「帰る鍵になる人、いないかなぁ.......」


「今日一日で帰る方法が見つかるわけねーもんな」


「都合のいいところ、ないかな」


「あ」


思いついた。1つだけ。

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