5. 括弧

 A4.会話文は「」で囲う。

 A6.会話文中の引用は『』を使う。

 A10.会話文では途中で改行をしない。

 A12.三人称で心の中の呟きには「」の代わりに()を用いる。

 A13.電話、テレパシー、念話などには「」の代わりに『』などを用いる。


 E1.複数人が同一の台詞をハモる場合は「「台詞」」のように記載する。

 3人の場合は「「「台詞」」」のようにする場合もあるが5個など大量にあると改行処理が行われて読みにくいため、3個程度までにすることを推奨する。

 E2.台詞を他者がさえぎって話し始める場合に「一人目の台詞「二人目の台詞」のように記載する人もいる。これは賛否が分かれる記法。

「一人目の台詞――」

「二人目の台詞」

のようにダッシュを使うことでも意味は同じになる。



■規則説明

 一般的な小説は、地の文と会話文で構成されています。

 概要は規則のとおりです。

 かぎ括弧かっこ「」は台詞、引用、強調に主に使用されます。


 鉤括弧の中にさらに鉤括弧を書くのは、わかりにくいので、内側は二重鉤括弧『』を使うことが多いです。

 逆に、二重鉤括弧『』の中では「」を使います。


 台詞などが段落の最初の行だとしても、段落字下げで書いたように台詞系の行では行頭空白を空けません。


 さえぎって話す、割り込み表現も書き方としてはあまりよくないとされる場合もあるので、ダッシュによる書き方を推奨します。割り込みを使うと、括弧の対応をチェックするツールもエラーがでます。


 ▼▼▼微妙な例

「おはよ「「おはよう」なんてのんきに言ってないでよ」

 ▲▲▲


 括弧内の最後の句点は省略するのが、なかば出版でのルールですが、文書、書物の文をまるまる引用する場合は例外で句点をワザと付けることもあります。もちろん付けなくても構いません。

 引用ではなく、台詞や心情などを地の文に埋め込む場合は普通、句点は省略します。

 また括弧の引用・強調文が地の文の末尾にある場合は閉じ括弧のあとに句点がくることもあります。

 句点を省略しているなら、鉤括弧以外の丸括弧などでも省略しましょう。


 ▼▼▼例

「おはよ――」

「『おはよう』なんてのんきに言ってないでよ」


 チャーリーは日記に「今日の給食のメニューはカレーだ。カレーは飲み物である。」とか書いていたから、お昼がカレーで大事件なのだろう。

 アリスにとっては大事なのはどちらかと言うとこっちの「プール」。


(泳ぎまくってやるわ)


<キンコンカンコン>


 先生が来て朝の会が始まった。

 ▲▲▲


■会話文

 会話文では原則、改行はしてはいけないのが作法とされます。

 長文の演説や手紙の内容などやむを得ない場合以外は原則を守るのを推奨します。

 会話文中で改行するための表記も存在していますが、非常にマイナーです。残念ながら、素人投稿サイトでは括弧の閉じ忘れに見え、読者に意図が伝わるかは、大変微妙です。


 括弧の会話文の行が連続した場合、基本的には同一人物の台詞が連続してはいけません。そういう時は人物ごとに括弧をまとめるか、地の文を挟むのがお約束です。

 この約束を守らないと読者は混乱します。

 基本、一括弧対につき一人の台詞です。地の文をはさまない次の括弧対は話者が交代したことを暗に示しています。


 例外としてたくさん独り言をブツブツ言っているとか台詞を抜粋しているとき、特定人物のみの台詞を並べる書き方をすることもあります。その場合は他の人の台詞を混ぜないようにしないと、意味不明になりやすいです。

 特定話者の会話文を空行なしで並べた後、一行空行を入れて別の話者の台詞を書くなど、話者交代が変則的なときは工夫しましょう。


■括弧の種類

 括弧にはいくつも種類がありますが、物語のなかで用途を一定に保つべきです。

 適当な場合はやはり読者が混乱します。


 ()や《》はなろうではルビでも利用します。

 ()丸括弧で補足を書く方法もあります。ウェブライティングなどでは多用されています。しかし以前のライトノベル、出版ではこの記法はあまり利用されていないようですし、丸括弧での補足の多用はあまりいい印象はありません。

 最近のなろう系ネット小説では丸括弧の補足の多用がある作品も見られ、一般的になりつつあるようではありますが、推奨はしません。

 補足よりも必要である情報なら、普通に地の文章として本文に埋め込むようにするのをオススメします。どうしても補足で書きたいなら、ダッシュで書く方法もあるので検討してください。もちろん作風として意図的に丸括弧にすることもあります。

 主に三人称一元視点のとき、その視点主の心の中の呟きを会話文のように独立させた丸括弧で書きます。一人称の場合は、地の文でそのまま書くほうが多いです。

 ()の台詞のように独立した心情表記では、全角を使うことを推奨します。そのほうが鉤括弧の台詞とインデントが合わせやすく周りに馴染みやすいです。

 丸括弧には「ミキはオレンジジュース(?)のような飲み物を飲んでいる。もしかしたらマンゴージュースかもしれないけど」のように単独の?を囲んでその単語が正しいか疑問がある場合などにも使用します。この記法では括弧を書かない流派もいます。


 『』二重鉤括弧には電話、テレパシー、念話の他に動物、魔物の鳴き声、咆哮などで使う人もいます。鳴き声類はカタカナなどで地の文として書く人や、人間同様「」で書く人もいます。自分ルールを決めましょう。

 一時的な過去回想の台詞、その他普通の台詞と区別したいもの、などにも使用します。

 なろうでは主流ではありませんが、夢小説では主人公の台詞を二重括弧で書く流派もいます。


 【】隅付き括弧や<>や〈〉で魔法やスキル、地名、固有名詞など専門用語を強調するのに使われることもあります。

 【】はかなり目立つため【ここぞ】というときに使用するといいです。使いすぎるとクドくなる恐れもあります。

 <>は厳密には不等号ですが厳密な解釈はおいておくとして、なろうにおける事実上は兼用されています。

 ただし<>記号は、括弧ではないため、縦書き時に横向きになることがあります。

 また音声ブラウザで<>は「だいなり」「しょうなり」のように読み上げられるソフトがあります。

 一応、読み上げまたは縦書きを意識するなら不等号<>の代わりに山括弧〈〉を使うのを推奨しておきます。

 〔〕や{}、[]{}などを、システムメッセージとして使用する例もいくつかあります。


■組み合わせ

 「(バレないうちに、お肉食べようよ)」のように組み合わせて書くことで、内緒話、ひそひそ話を表現することもあります。

 また同じ表記でも「(コクコク)」や「(ひそひそ)あっち向いて」のようにジェスチャー動作だけを台詞のようにする場合もあります。

 「ワオーン、ワォワォーン(ご主人様、お肉、肉〜)」のように動物の声と翻訳を書く人もいます。


 「「「すごーい(です)(にゃん)」」」のように、同じ台詞を言いつつ、特定人物だけ語尾が違う、というのを表現するこういう()の使い方をする人もたまに見られます。

 また「「と」」では開き括弧と閉じ括弧が同じ数になるように調整しましょう。途中で人数が増減していないのに、括弧数が不一致になっているのをちょくちょく見かけます。


 規則には載せませんでしたが、


 ▼▼▼

「お互い頑張ろう」

「はいです」「ういっすよ」 

 ▲▲▲


 この例のような同時や連続的に違う反応をしたときに、括弧を改行せず同じ行に併記する方法もあります。


 主要なライトノベルではあまり利用されていない書き方に、台詞の「」の前後に地の文章をそのまま改行せずに続ける記法があります。

 もちろんそのような書き方をしても問題ありませんが、ラノベ、なろう小説としては比較的マイナーであるということは押さえておいてください。

 なお地の文章に短めの台詞を埋め込む手法はよく利用されています。


■連番表記

 小説ではあまり登場しないものの、(1)、(A)、(い)(ろ)(は)、(ア)(イ)(ウ)のように通し番号を振るにも使います。

 似たものには丸付き数字①②〜⑳など複数種類あります。


 [1]のように角括弧で脚注番号を振ることもあります。これはあとがきや末尾に、脚注をその番号で記載します。


■括弧以外の強調

 括弧ではありませんが、類似に〝ダブルミニュート〟というものもあります。

 引用などに使用します。

 ダブルクォート“”に似ていますがこちらは違います。Shift_JIS(CP932) 8780 8781、Unicode U+301D U+301Fになります。

 MS-IMEでは「環境依存」と表示されますが問題ありません。これは厳密にはJIS/Shift_JISには含まれない文字でCP932の拡張文字だからです。

 ダブルクォート“”は通常、縦書きに未対応のため、和文の小説には使用しないそうです。代わりにミニュートを使います。

 なおメイリオではクォートの前後の違いがほとんど分からないですが、MSゴシック、游明朝などにすると前後で形が違うのが分かります。使い分けてください。


 引用にクォートを多用すると「"括弧"というものは"かっこ"と読むので"カッコ"いい気がする」というふうに、例があまりよくありませんが、どこからどこが対のクォートか判別しにくく、とても読みづらいという問題があります。


 強調には「括弧」を使ったもの"クォート"、〝ミニュート〟の他にも、を使う方法もあります。うまいこと使い分けましょう。


■カッコ笑

 小説的ではないとして、あまり推奨はしませんが、他にもいくつか括弧を使う記法があります。

 代表的なのは「ぱーおん(笑」というものです。「カッコ笑い」「カッコわら」等と読まれます。

 他にも「もういや(泣」「疲れた(汗」(涙、(謎、(怒、(ぇ、(ぁなどがあります。

 いにしえの表記では(爆)、(爆笑)、(核爆)、(藁)なども存在していました。

 このように「文字(意味」という風に半分の括弧にする流派と「ぱおーん(笑)」というふうにちゃんと閉じる流派の人に分かれます。閉じるほうが古いとされます。

 「(笑)」はその後「w」や「www」「草」に置き換えられて現在に至ります。

 また、笑うなのか閉口する表現などに「スイーツ()」のように()だけが使われる表記もあります。


■顔文字

 別のものとしては、(^_^)こういうタイプの顔文字をつける場合もあります。

 (^_^) 笑顔

 (~_~; 汗汗

 (T'_T') 泣き

 m(_'_)m ごめん

 (´・ω・`) しょぼーん

 (-_-)  無言

 絵文字の登場で、現在の主流はそちらへ移行していますが、なろうでは顔文字の絵文字は使えないので、現役かというと使っている人はほとんどいないです。しかし、稀に登場します。

 ASCII時代の英語圏では :-) や :-( のように横倒しの顔が使われていました。 



■付録。主な括弧類

 半角 ASCII互換

 () 丸括弧/パーレン   補足、なろうルビ

 [] 角括弧/ブラケット   

 {} 波括弧/ブレース   

 <> 不等号   HTMLタグ等

 "" 二重引用符/ダブルクォート(前後同じ)

 '' 一重引用符/シングルクォート(前後同じ)

 `` バッククォート(前後同じ)


 注:半角鉤括弧はなろうでは全角化されてしまい使用できません。


 全角 JIS X 0208/Shift_JIS(推奨)

 「」 鉤括弧    台詞、引用、強調

 『』 二重鉤括弧  鉤括弧中の括弧、書籍名、作品名、強調

 () 丸括弧    心理描写、補足、説明、なろうルビ

 《》 二重山括弧  なろうルビ、強調

 【】 隅付き括弧  強調等

 [] 角括弧    注釈等

 {} 波括弧    注釈等

 〈〉 山括弧    注釈等

 〔〕 亀甲括弧   注釈等


 <> 不等号(縦書き△)

 ≪≫ 二重不等号(縦書き△)

 “” 二重引用符(縦書き×)(前後別の文字)

 ‘’ 一重引用符(縦書き×)(前後別の文字)


 全角 CP932/JIS X 0213両用

 〝〟 爪括弧/ダブルミニュート 引用(縦書き○)


 その他 Unicode/JIS X 0213両用

 ⦅⦆ 二重括弧

 〘〙 二重亀甲括弧

 〖〗 隅付き括弧(白)

 «»  二重山括弧引用記号、ギュメ


 その他 Unicode専用

 〚〛 二重角括弧


 一部の記号は、表示ソフトにより縦書きのときの表示がおかしいなどの不具合があります。


※(2019-12-29註)「鍵括弧」になっていましたが正しくは「鉤括弧」です。訂正しました。

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