第6話

『ボランティア同好会』の発足。


どうやらいきなり部活動とはならないらしい。

まずは同好会として活動をし、およそ2年後に部活動として活動できる。


しかも例え同好会だとしても発足には生徒5名に担当顧問が必要となってくる。

更には生徒会に議案を提出し可決されたら校長先生に提出。そこで可決されたらようやく同好会の発足。とかなりめんどくさい工程を経てようやく活動することができる。


正直かなりめんどくさい。


が、桜町がやけにやる気を出しており、本人は生徒の数集めと顧問探し。

そして俺は議案の作成と生徒会に提出と役割が与えられた。


とは言え、入学からひと月経っていることもあり、殆どの生徒が入部している。この状況で帰宅部を探すのもかり手間がかかる。先輩に声をかけようにも知り合いが一人もいないのでそれもできない。


なので生徒会へゆくゆく生徒は増やすからまずは2人で発足できないかを相談しに行くこととなった。


生徒会のある校舎は第1校舎の3階。

第3校舎まである中で、1年から3年までの教室があるのがこの第1校舎。

部活動の拠点となる教室は第2、3の校舎となるが、生徒会だけが唯一第1校舎に存在している。

つまり1年生の階に生徒会があるのだ。


放課後、桜町があっちやこっちに奔走しているため久しぶりの一人行動。晴れやかな気持ちの中、早速生徒会教室にへと向かう。


──コンコン。


「……どうぞ」


綺麗な声が中から聞こえる。


「失礼します」


ガラガラと戸を開くと中には一人の女性。

教室の奥にある少し豪華な椅子に座りコチラを見る。彼女が噂の2年生生徒会長だろうか。


腰まで伸ばした綺麗な黒髪にこの距離でも分かる程の白い肌。

キレイに着こなした制服に大学生と言われても納得してしまいそうな大人な雰囲気を纏っている。

こういう人を大和撫子とでも言うのだろうか。


対面するだけで少し緊張感がある。


「生徒会に何か用?」

「いきなりすいません。僕は1年の天草と言います。今ちょっとクラスメイトと同好会を作ろうとしているのですが、相談がありまして」

「へぇ~同好会ね。どんな同好会?」

「ボランティア同好会を作ろうかと思ってまして」


すると急に彼女の視線が鋭くなる。


「……君が?」

「え、あ、はい。そうですけど……何か」

「いや、君は……天草くんは1年の中でも有名人だからね……。色々と噂を知っているよ」

「……噂?」

「所構わず、四六時中、年中無休、彼女とイチャイチャして風紀を乱しまくっている。という噂」

「……」


決してイチャイチャはしていない、桜町が勝手に絡んでくるんだ!

と、声を大にして言えないのが非常に悔しい。意図していないとはいえ傍から見たらそう見えても仕方がない。


「お、図星? 公然わいせつ人間がボランティアなんて言葉が出るとは言うとは思えないけど。何か企んでるんじゃないの?」

「いやいや! そんなことないです。ちょっとスキンシップが激しいが絡んでくるだけなんですよ!」

「……ふーん」

「……」

「まぁ、いいや。で、その相談っていうのは?」


た、助かったぁ。

……というか公然わいせつ人間ってなんだよ。ひどすぎるだろ。


「あ、はい。同好会の発足には生徒が5人いるって書いてあるんですけど。正直今のタイミングで人を集めるのが難しくてですね……。ゆくゆくは5人に絶対するんで、まずは発足できないですかね?」

「まぁ、いいんじゃない」

「そこをなんと……え? いいんですか?」

「うん、それ別に入部する必要があるわけじゃなくて、あくまでも賛同者だから。適当にクラスメイトの名前書いておけばいいよ。まぁ、顧問は絶対いるからそこだけは探す必要あるけれど」


そうなんだこれ。

確かに生徒手帳には5名が条件しか書いていないから入部まで必要かと思った。

クラスメイトからハブられているとは言え、名前くらいは貸してくれるだろう。


何はともあれ、これで第一関門は突破だ。

……あとは顧問だけか。


「ありがとうございます。助かりました!……失礼します!」

「待て待て天草くん」

「……はい?」

「発足の条件はそれでいいけど、まだこの生徒会長が許可するとは言ってないよ」

「え!? なんでですか、条件はいいんですよね?」

みたいなの自由にさせると、どんな公然わいせつをしてくるか分からないからね、私から条件を1つ足させてもらうよ」

「なんですかその条件って……?」

「私をその同好会に入れること」

「はい? 生徒会長を……ですか?」

「そう、まぁ監視役といったところね。……断ったら例え100人の賛同者と5人の顧問を連れてきたとしても同好会の発足を否決するよ」


……ここでそんな強権ぶりを見せなくても。


正直こっちとしても放課後まで桜町との二人きりはきつい、というか怖い。

生徒会長が入ってくれるのであれば、願ったり叶ったりである。


「でもいいんですか。生徒会のお仕事もあるんですよね」

「いいよ、やることないし。3年に立候補者がいなかったから選ばれたお飾り会長だし」

「そうですか……。まぁ会長がいいのであれば、僕としても断る理由もないですよ」

「なら決定ね、これからよろしく天草くん」

「はい、こちらこそよろしくお願いします会長」

東海林しょうじ凜華りんか

「……え?」

「私の名前、会長呼びじゃなくていいから」

「わかりました。……東海林先輩」

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