第5話

彼女の目は、まるで決定事項かのように。

断られることなんて想定さえしていない。


彼女の目にはまるで心配や不安などない。

俺が頷き肯定する。

ただそれを確信している目をする。


……正直言って俺は彼女が怖い。


何をそこまでを持って生きていられるのか。

クラスでハブられようが、人に嫌われようがブレることのないその自信が怖い。


「……」


そんな一抹の恐怖心を覚えながら黙っていると業を煮やしたのか、肩を寄せていただけの桜町が徐々に顔を近づけてくる。しかも何故か目をがん開きながら迫ってくるものだから、怖い怖い。


慌てて手で彼女と距離を置く。


「まてまて、桜町。何しようとしてる」

「え、キス」

「……どストレートだな」

「だって尊、ずっと私を見てるから……」

「見てるから……、なんだよ」

「欲しがってるのかなと思って」

「違うわい」


お前から逃げる方法を考えていたんだよ。とは流石に言えない。


「だったらさっきの質問の答え、考えてくれてたの?」

「それも違う。そもそも話が飛躍しすぎだ。俺は入る部活で悩んで……た。あ」

「ほら、やっぱり部活で悩んでたんじゃん」


……くっ、これはハメられたのか。それともたまたまなのだろうか。

何れにせよ彼女と会話していると何もかもを見透かされそうだ。


とはいえ部活で悩んでいたことがバレてしまった以上嘘もつけない。


……仕方がない。

適当にごまかすとするか。


「いやほら、この間部活紹介もあったけど、みんな楽しそうだったし。どうせなら俺もなんか作りたいと思ってな。何の部活にするか考えてたんだよ」

「私の顔見ながら?」

「お前の顔見ながら」

「いいの出た?」

「いや、……残念ながら出なかったな」

「……なにそれ、私の顔だと何も浮かばないってこと?」


すると突然声色が低くなる桜町。

どうやら自分の顔で何もアイデアが浮かばなかった事に納得がいかないみたいだ。

どこまで怖いやつだ。


「いやいや、そういう訳じゃなくてだな。えーと、なんていうんだろ……」

「……」


無言の圧力を感じる


「あーキタキタキタ。浮かんだわ今。桜町の顔見て浮かんだ、うん」

「……なに?」

「えー、ボランティア部。……とかどう?」


ちなみに何故ボランティア部なのか説明しよう!

確かにうちの学校は部活が活発でどれも大変楽しそうにしている。しかし、実のところその殆どが運動系の部活というのが現実。そこで私はこの現状に一石を投じ、文化系でも盛り上がろうではないか!という熱い熱い思いが2割。


あとはなんか楽そうで進学の時にネタにはなるだろうという思いが8割です。はい。


「どうって……なんで私に同意求めるのよ。……ま、私を見て何でボランティア部が浮かんだかは置いておくとして、二人でやる部活にはぴったしね」

「……え、二人? とういうかやるの?」

「やるのって、……尊が誘ってきたんじゃない」


いや、誘ってないが。


「善は急げって、徳川家康も言ってたしね。……じゃ、早速作ってくる」


一番言わなそうな武将じゃね家康。

どっちかと言うと信長だろ善を急いでそうなの。


……というかやるの?

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