後編

101:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 んー、なんだろ、なんか引っかかるなぁ


102:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 >>101

 引っかかることばっかりだろ


103:101

 まぁ、そうなんだけどさ

 アリバイ工作、顔が損壊してた遺体、靴がない

 んん?

 なんか、こうも王道だと別の可能性を提示したくなるなぁ


104:新人冒険者

 別の可能性、ですか?


105:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 あー、はいはい、たしかにこれだけ揃ってると王道だよなwww


106:新人冒険者

 へ?へ?

 あ、あのなんの話しをしてるんですか?

 こういった奇妙なことに王道や邪道があるんですか??


107:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 王道というか、あるある?


108:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 アリバイ工作、いやこの場合は動機工作か??


109:101

 >>108

 動機工作とは言い得て妙だな

 でも、うん、下準備だったと考えると、ちょっと辻褄合わせにはなりそう

 で、この考えだと靴が無かった理由も説明できちゃうかも


110:まとめ班

 水を差すのはどうかと思うが

 おまいら、新人冒険者はそういうのは多分知らない人だから説明してやれよ


111:新人冒険者

 (´;ω;`)


112:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 あ、悪い悪い


113:101

 俺が考察したところだと、多分Aは死んでないと思う


114:新人冒険者

 は?!

 え?

 はい?!?!( ゜д゜)


115:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 あー、たしかに

 顔が潰された遺体、それ自体がAって確証どこにもないもんな

 ここまで状況が整ってると、逆にこのAとされてる遺体が別人って言われても納得できるわ

 あるあるだよな、死んだフリって


116:新人冒険者

 ちょちょちょ、ちょっと待ってください!!

 なんでそうなるんですか?!

 それに、何度も聞きますけど王道やあるあるっていったい、なんの話をしてるんですか!!(´;ω;`)


117:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 なにって、ミステリの王道、そして、ミステリあるあるだよ


118:101

 推理モノってジャンルが、創作物にはあってさ

 要は謎解きをメインに添えた作品のことだ 

 まぁ、人によっては【作者VS読者】の論理ゲームなんて表現することもあるだろうけど

 その舞台装置とも言うべき、あるあるネタだよ

 まず、事件について考える推理役の【名探偵】は欠かせないだろ

 次に舞台となる【大邸宅】、そこに住まう【いかにも怪しい住人達】or【集められた老若男女達】

 そして起こる【殺人事件惨劇

 でもその惨劇は一見すると【不可能犯罪】でなければならず

 その不可能犯罪を成立させ、物語を彩るのは、【破天荒なトリック】だ

 これらが代表的すぎる、ミステリあるあるだ


119:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 その破天荒なトリック、つまりは普通そんなことしないし、上手くいかないだろって仕掛けにも【あるある】とか【王道】とか言われてるものがある

 その一つが【死んだフリ】なわけだ

 この【死んだフリ】にも種類があって、その一つが死体と入れ替わるってものなんだ

 顔を潰して、どこの誰なのかわからなくする

 でも、所持品から被害者は特定できる

 そういえば、遺体はAの所持品を身につけてたんだよな?

 装備品は散らばってたけれど、それもAの物だったわけだ

 だとするなら、遺体が身につけてたのは、シャツや下着類だったはずだそれ以外にも、もしかしたら、それ以外にもなにか身元を特定できるものを身につけていた可能性はあるし

 つまり鑑定しなくても、Aという物的証拠が現場には残されてたわけだ

 散らばってたり、身につけていたりって形でな

 そうやって、遺体はA以外にありえない、っていう演出をしてみせた

 そこに、Bの嘘の鑑定結果でダメ押しされれば、疑う余地が消えるだろ


120:101

 顔もだけど、頭全体が原形を留めて無かったってのも引っかかってる

 もしかしたら、耳を削ぎ落としてあった可能性、ワンチャンないか?


121:新人冒険者

 み、耳??

 え、なんで耳の話になるんですか??


122:101

 なんでって、個人を特定するのには顔もそうだけど、手のシワや指紋も個々で違うんだよ

 で、これな耳の形も人それぞれ違うんだ


123:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 |ω')<社会派ミステリも忘れんなよ!


124:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 >>123

 社会派ミステリって、アレじゃん

 一人暮らしの女性が部屋で殺されて、刑事があちこち歩き回って恋人or愛人だった上司捕まえるやつじゃん

 

125:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 >>124

 おっと、社会派ミステリの悪口はそこまでだ


126:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 悪口か??それ?


127:101

 俺の考察はこう

 まず、他のやつの考察からしても、そして俺が考えた結果としても、Bは絶対にこの件に関わってる

 だから、これはAとBの共犯

 その前提で書き込む

 なにか理由があって、Aは死体と入れ替わることを決意する

 入れ替わるくらいだから、背丈や体重、なんなら背格好も似た死体を用意した

 この【用意】ってのが、Aが殺人を犯して手に入れたかどうかってことになると、正直わからない

 でも、用意出来た、出来てしまった

 だからAは入れ替わりを決行した

 まず、用意した遺体、この遺体のことをCする

 Cの顔をある程度、損壊させる

 この時に耳も削ぎ落とす

 んで、自分の装備品を装備させようとした

 この時に、トラブルが起きた

 他のは装備出来たのかもしれない

 けれど、靴のサイズが合わなかった

  

128:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 靴の、サイズ??


129:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 え、それが靴が無かった理由??


130:101

 あくまで、俺の考えた【さいきょーのりゆう】だと思ってくれ

 そう、靴ってさ背格好が似てたり、背丈や体重が同じだったりしてもこれも個人個人でバラツキがあるんだよ

 ましてや、Aは戦士職だったんだろ?

 つーことは、少なくともその靴は、Aにとって履きやすく仕事をする上である程度使い慣れた靴だったと考えられる


131:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 あ、そっか


132:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 というか、戦士職の靴だからな

 詳しくは知らないけど、甲冑の靴なんて傍目から見ると凶器にもなりそうだよな

 実際に使えるかはともかく


133:101

 最初は、ある程度防具を装備させて遺体を落下、損壊させる予定だった

 けれど、靴のサイズが合わなかった

 想定外のことに、Aは慌てたかもしれない

 けれど引き返せないところまで来てしまっていたAは、Bとともにこのトラブルを解決しようと、知恵を絞った

 結果、靴以外をバラバラにして落としてしまおうと考えた

 時間も無かっただろうから、新しい靴を用意できなかったんだろうな

 まぁ、下手に靴を用意しても万が一怪しまれたらってのがあったのかもしれない

 新しすぎても、サイズが合わなくても、怪しまれる可能性を捨てきれなかった

 だから、思い切って靴はばらまかなかった


134:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 時間が無かった??


135:101

 知ってるか?

 生き物の遺体ってのは、腐るんだよ


136:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 そんなの知ってるよ


137:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 あー、あれか

 死後に体に出る諸々の反応のことか

 死後硬直とか死斑とか


138:101

 それそれ


139:新人冒険者

 え、腐るだけじゃないんですか?


140:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 まぁ、うん、腐るんだけど

 そのための反応というかなんというか


141:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 死体ってのは、死んだ直後はそこそこやわらかい

 でも、時間が経つと硬直する

 さらに時間がたつと、この硬直がとける

 死斑も出るのに時間がかかる

 ほかにも色々反応があるんだけど、【鑑定スキル】が今みたいに絶対的な信頼を得る前の時代だと、これらの反応を見て死後どれくらい経過してるかを割り出してたんだ

 まぁ、今でも使われてるらしいけど

 ほとんど【鑑定スキル】による鑑定結果に置き換わってるってのが現状らしい


142:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 まぁ、正確だしな


143:101

 この考察でいくと、AやBは耳の形で個人特定ができるってことを知ってた可能性がある

 あとは、用意周到な感じがするから、もしかしたら本当にCを手にかけたのかもしれない

 だとすると、その時の【不在証明アリバイ】を作っている可能性がある

 さらに言うなら、この死後の反応を考えて、【不在証明アリバイ】工作をしていたことも考えられる

 Cが死んだ時間=Aが死んだ時間、になるわけだから

 少しでもそれに対して矛盾が生じるのは避けたかったはずだ

 そうでないと、下手すると死者が動き回っていたことになりかねないからな


144:101

 まぁ、ここまで書いたから、これも書いとくか

 たぶん、最初は自殺じゃなくて事故として話を持っていくつもりだったと思うんだ


145:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 なんでなんで??


146:101

 いや、その方が色々自然だろ

 たとえばスレ主と一緒に焼肉を食べに行こうと約束してたこと

 これってさ、Aは自殺するつもりは無かった、ように見えるだろ?

 もしかしたらスレ主に、捜査員が来たらそう証言してもらおうとして仕込んでたんじゃないかとおもうんだ

 けれど、靴のサイズが合わないことで全部狂った

 土壇場で計画を事故から自殺に変更した

 だから、色々なところで、結果的に矛盾が出た

 いくら自殺するからって、自宅ならともかく洞窟で裸足はないだろ、裸足はさ

 素足でブーツや甲冑の靴履くってのはなぁ

 靴擦れ凄そうだし、いや、Aが普段から素足で靴履いてるってのなら話は別だけどさ

 想定外の事態が起こって、よほど慌ててたのか靴下すら履かせてないともとれるし

 これでCが靴下とかそういうの履いてたなら、落下の時にあちこちぶつかって、靴が脱げたってことで納得できたし

 その靴は今も洞窟のどっかにあるのかもって思ったかもなぁ


147:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 ……うわぁ、ここまで読んで嫌なこと考えちゃったよ


148:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 嫌なこと?


149:まとめ班

 なになに?嫌なことって??


150:101

 なんだ?嫌なことって??


151:147

 ここまでの考察という名の妄想読んできて、一番大事な部分が結局分からないままじゃん?


152:新人冒険者

 一番大事な部分?


153:147

 動機


154:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 あー、動機かぁ


155:147

 これさ、今のところAは死んだフリしてるかもってことでしょ?

 妄想だけど


156:101

 俺の妄想だな


157:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 個人的には一番信憑性がありそうな妄想だな


158:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 靴が無い部分については、しっくり来た妄想だな


159:101

 妄想追加しておくと

 こんな妄想もしてたよ

 たとえばCは、風呂場で殺されたとか

 それなら、血の処理とか楽そうだし、なにより無防備だしね

 まぁ、殺されなくても顔を潰す処理をした可能性はあるけど

 そうなってくると、部屋にそこそこの広さの浴室が完備されてる部屋とか用意しなくちゃなんだけどさ

 でも、これ、冒険者ギルドの職員の給料なら借りれる部屋のランクになっちゃうんだよなぁ


160:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 え、それって((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル


161:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 いや、まぁ、たしかに

 あれだけ現場で陣頭指揮とってたみたいな書き込み見ちゃうとさ

 疑うよね、Bもそうだけど、ギルドの受付嬢


162:新人冒険者

 あ、あの色々気になってはいるんですけど

 147さんの思う嫌なことってなんですか??


163:147

 あ〜、その、さ

 これもミステリあるあるなんだけど

 仮に、だよ?

 この>>101の妄想が当たってたとすると

 わざわざ手間をかけて死んだフリした理由ってなんなんだろうなって思ったんだよ

 しかも当初は、事故死に見せかける予定だったわけだし


164:147

 これさ、ミステリだと連続殺人を起こす真犯人がやる行動なんだよね

 死んだフリして、次々に人を殺していくの

 でさ、ものすっごく嫌なこと書くんだけど

 スレ主って、生い立ちがAと同じなんだよね?

 強盗云々って部分なんだけどさ

 これさ

 >>29の書き込みで


 >あー、そういや一時期多かったよね

 >連続であちこちの家が強盗に襲撃される事件


 こうあるんだよ

 あちこちでってのに、いわゆるミッシングリンク的なものを感じてるというか

 Bや受付嬢さんが、Aに手を貸した理由にならないかな?


165:101

 あー、なるほど


166:147

 でさ、ここからスレ主――新人冒険者に確認するんだけどさ

 Aが死んでから、A、B、受付嬢、この三人の共通の知り合いもしくは、なにかしらかかわり合いのあった人、あるいは人達が亡くなった、なんて話ない??


167:新人冒険者

 あっ、でも、そんな


168:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 え、この反応って


169:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 まさか、な?


170:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 いや、それこそまさかだろ


171:新人冒険者

 その、共通の知り合いかどうかはわからないんですけど

 最近、たまに害獣退治の依頼をしてくる農家の人達が不審死を遂げたと聞きました


172:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 不審死??


173:新人冒険者

 はい

 なんでも、その人達の暮らすとても小さな村で、宴会が行われたらしいんですけど

 その宴会の翌日に、毒を飲んで死んでいるのが見つかったらしいです

 宴会には、受付嬢さんが紹介した旅芸人が呼ばれ、色々芸を行ったとかなんとか

 ちなみに第一発見者は、その旅芸人だったとか

 一度は旅芸人の犯行かと思われたらしいですが、どうやら鑑定で違うとなったらしくて


174:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 うわぁ、その旅芸人、体良く使われたな


175:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 その旅芸人の鑑定もBがしたとかいわんよな??


176:新人冒険者

 >>175

 すみません

 そこまでは、なんとも

 ただ、噂では、とくにその農村のリーダー格だった男とその取り巻き達は、刃物で滅多刺しになってたらしいです

 そのことから、強い恨みをもった者の犯行だと考えられたとか


177:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 ふむ


178:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 これは((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル


179:101

 うわぁ


180:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 あー、そういや新聞に出てたな、その事件

 なんでも、鑑定使っても犯人割出せなかったから

 もしかしたら、アンチスキルかなんか使ったんじゃないかって書かれてた


181:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 新聞に載ってたんか


182:180

 載ってた載ってた

 で、その後の記事にあったんだけどな

 なんでも、その殺された連中、昔世間を騒がせた強盗団だったとか

 ちなみに、一人、行方不明になってる奴がいるとか

 犯人は不明だけど、この行方不明の奴がそうかもしれない、みたいな書き方ではあったな、記事は


183:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 うわぁ、繋がっちゃったよ


184:新人冒険者

 え、これって、つまり、そういうこと、なんですか??


185:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 さて、どうなんだろう??


186:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 気になっても、Aの事が再捜査されることはないだろうしな


187:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 気になるって言えば、Cはどこの誰さんだったんだろうな?


188:101

 >>187

 たぶん、>>182の書き込みの中にはある行方不明者じゃないか?

 あくまで、たぶんだけど


189:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 真実は霧の中ってやつだな


190:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 妄想から、むりくり繋げただけだ

 本当かどうかなんて当人達にしかわからない


191:以下、名無しにかわりまして迷探偵がお送りします

 スレ主、これ読んで少しはスッキリしたか?

 スッキリしたなら忘れることだ

 スッキリしなくても忘れろ

 まかり間違っても確認なんてするなよ??

 嘘から出た真ならぬ、妄想から出た真実になったところで誰も喜ばないだろうし

 愉快なことにはならないだろうからな


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

【教えて】どうにも違和感が拭えないんだ【ほしい】 ぺぱーみんと/アッサムてー @dydlove

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ