#1-4 アルスの若き戦士たち
ファング達3人は、ルジンから「絶対に行くなよ!」と言われていた東の森にやってきた。ルジンからの忠告何ていざ知らず、3人は森の中を進んで行く。
この東の森は普段であれば野生動物や魔物があちこちに生息している。しかし、今はドラゴンの現れた影響か、すっかり静まり返っていた。ドラゴンの放つ気配にでも怯えているのだろう。
先頭を歩くファングは随分と張り切っていた。
それもそのはず、彼にしてみればこれは"名を上げるチャンス"なのだ。
もし、森に出没したドラゴンを倒せようものならば、彼らの掲げる『町にギルドを作る』という目標の達成に、一気に近づくことになるから当然のことである。
そんなファングの後を追うように、バッジとメルティが歩いている。
メルティは森の状況に怯えているのか、バッジの背中にピッタリとくっつき、身を小さくして隠れるように歩いていた。
そんなメルティをバッジは時折、「あ!あっちの茂みから唸り声がする!!」などと言って怖がらせ、ビクッ!と怖がるメルティの反応を見て楽しんでいた。
森の奥へと歩き続けると、緑は一層深みを増してゆく。
『付近の魔物に注意!!』と書かれた警告看板を道中に見かけたが、結局一度も魔物に会うことは無く、3人は森の最奥部へと辿り着いた。
最奥部にはかつて、鉄を掘り出していた鉱山がある。鉱山の入り口前は
窪地を覆う木々の隙間からは木漏れ日が差し込み、その光の先には件の『アニマドラゴン』がいた。
アニマとは、生まれたての魂などを差し、幼生と呼称されている。成長段階によってその呼び名は変わり、肉質と鱗の硬質化が完全に終えた個体を〈
今ファング達の目の前にいるのはアニマドラゴン・・・全体的に見ればまだ弱いドラゴンということにもなる。
差し込む木漏れ日を受けたその鱗は光を反射し、眩く輝きを放っていた。
輝くその様を見て、ドラゴンの周囲の空気すらも彼らの目には輝いているように映って見えた。その姿に見惚れるほどでもあった。
眠っているのか、身体を丸くして静かに横たわっている・・・動いても精々、呼吸したときの胸部と尻尾の先程度だ。
メルティが不意に口を開く。
「ねぇファング・・・ホントにあのドラゴンと戦うの・・・?」
ドラゴンが起きないように、小さな声で訪ねた。
「当たり前だろ!アニマなんだから楽勝さ!あいつらはまだ、鱗とか硬くないって言うしな!」
実際、ファングの言う通りアニマの鱗は大抵は柔らかいものである。それなりの切れ味を持つ剣であれば、いともたやすく断ち切ることが出来るだろう。
ファングは鞘に仕舞っていた剣を引き抜くと、斜面を滑り降りてゆく。
メルティは一瞬、手を伸ばして止めようとしたがそれは間に合わなかった。
『町にギルドを作る』その夢の達成のために、ファングは勢いづいたところで斜面を蹴り、剣を構えてアニマドラゴンへと飛び掛かった。
「ギルド作るためだ―――喰らえ!狼牙け・・・」
どんな戦いにおいても、相手との力量の差を見極めることが出来なければ、そこに待つのは"死"のみである。
ファングが技を仕掛けたその時だった、アニマドラゴンは目を覚まし、瞼から覗かせた真紅の瞳はファングを捉えたのだった・・・
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