第15話

その頃


 テイジに頼まれた魔夜、カトレア、レモンは影の中を移動中に魔夜は、


「む!」


 一瞬、強烈な禍々しい気配を感じて足を止め目を瞑った。


「どうしたの?」

「はにゅ?」


 少し前を移動してたカトレアとレモンも振り返り足を止めた。


「・・・・気のせいです。行きますよ。」

「御意」

「だいこーん♪」


 気配はそれ以降は感じなかったので先を急いだ。


「それと、レモンは平民の子の護衛に行ってください」

「はいチュウ」


 魔夜は指示を出して、レモンは返事をして投げキッスをして向かった。


[今のは・・・いったい?]

[今は愛しき主様の任務を遂行しければ!]

 

 腑に落ちなかった魔夜は思ったが考えるのを止めた。


 町の中の上の影の出口の中に、数名の白いローブの人物が横切り、


「今のは?」

「なんだろう?」

「カトレアは先に妄想オタク[サマエル]のところに行ってください。」

「御意」


 不信任思いカトレアに指示をだして、どこかの町の中の安全そう物置の影から、魔夜は出て、町の入口の方で騒ぎ声がしので歩きだした。


町の入口で数名の白いローブ達と、どこかの教団の信者がいがみ合って、白いローブの代表の1人対灰色の鎧を着たシンバルという人物は腰に着けた剣を持ちながら、


「な、なんだ!」

「貴様らは!?」

「神を偽り騙る大罪は万死に値する!」

「ふざけるな!」

「神はこの俺だ!この奇跡を齎すシンバルだけだ!」


 白いローブの代表の黄緑の髪の女性は右手のナイフを逆手に持ち切りつけてきた。


 最初はシンバルと言う男は腰にあった剣を振っていたが、ナイフを持った女性に剣投げ飛ばされ、あっけなく逃げ腰で尻餅を付きながら騒いだ。


「まて!」

「この俺を殺すのは世界の大罪だ!考え直してくれー」

「つまらない・・・最後の断末魔ですね。」

「ヒイイイイイーー!?」


 女性はナイフを投げシンバルは情けない悲鳴を上げて、そこに横からナイフを魔夜が2本指で挟み止めた。


「魔族!?」


 驚いて白いローブはバックステップして距離を取り、周りもどよめきシンバルは魔夜に見惚れときめき、


[これは運命の出会いかも知れない・・・俺は第3王子なのだから俺の物になってくれるはず♪]


 頬を赤くしてシンバルは、勝手に思い込んだ。

 本当は割って入る必要も誰だか知らない者を助けるは無いが、だが主であるテイジはサマエルの屋敷の庭で自分に声をかけた優しい子なので、余計に悲しませない為に、この男を助けただけだった。


 そうとも知らずに、


「おお、助かったぞ!」

「魔族の女。褒美に俺の愛妾にしてやろ!」

「はあ?」

「感謝するがいい♪」


 立ち上がり微笑みシンバルは魔夜に近寄って来て、振り返り冷たい視線で魔夜はシンバルの顔を見た。


「貴方は無能で馬鹿ですか?」

「私が仕えるのは心に誓った、愛しき主様だけです。」

「無能は邪魔なので引っ込んでください。」


 『愛しき主様』だけは緩やかな口調になったが、それ以外は興味が無い口調の毒舌罵倒だけだったがシンバルは気にせず、


「貴様には主いるのか?」

「比べるまでもなく、天と地の差があります。」

「だったら・・その小物の主を俺が有罪にさせ処刑すれば、お前は俺のモノだ!」


 はっきりと魔夜に言われても納得がいかない、どうしても魔夜を欲しいシンバルは絶対に言ってはいけない地雷を踏んだ。


 この場の空気が変わり白いローブを着た者達、シンバルの教団の信者[王国軍]達でも気づき魔夜を見て、一気にその場の温度が、-20℃ほど下がったと感じるほどゾクゾクする恐怖に誰もが冷や汗を滝のように出した。


[この虫けら分際で・・・愛しき主様を・・・許しがたい罪!]


 殺気だた魔夜はギロリとシンバルを見て、


「ひぃ!?」

「どうだ!」

「最高に素晴らしい策だろ!」

「この女は俺の物だと無能な主とやらは伝え、俺が必ず始末するぞ!」

「わはははは」


 周りは怯える者も居るかで、その場からいち早く逃げたいが金縛りにあったみたいに誰もが動けなかった。

 そんな状況に動じず、目をつぶって全く気づかないシンバルは大笑いした。


「提案だけど、これゴミをしばらく借りても良い?」

「あ…ど、どうぞ・・・」


 口は笑ってるが目は笑ってない魔夜が、ナイフを持ってるローブの目の前の女性に近づき、シンバルを左手を指し冷ややかな口調で言うと、白いローブ達は皆頷きここで誰もが「ノー」と言う答えは存在しないと思い差し出した。


 そして魔夜はチラと、


「いいですよね?」

「え・・あ、どうぞ・・」

「お、俺らは帰りますので好きにしてください・・」


 周りの教団の信者[王国兵]達は、それぞれが言うと恐怖のあまりこの選択を選ばないと、自分達が助かる道がないと判断した。


「ははははははー」

「ああ、耳障りな笑い声です。」


 凄く冷たい目で魔夜は見ると、目を閉じたまま笑いながら全く気づかずにシンバルの影が底無し沼の如く沈んで行く光景に誰もが震えていた。


「!?」


 数百年前に王国内で実際にあった出来事で子供でも知ってる伝承の人を喰らう影の魔物ように、まるで影に食われる光景と同じように思えた。

 そして魔夜も影に溶け込むように入り、更に周りの恐怖が膨れ上がった。


※お仕置きを見たい方は「シンバルのお仕置き」へ

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