209.将軍クラスとの戦い
【ふふ、可愛らしい人間達ね】
「美しい薔薇には棘があるってのを知らないかしら!」
「はっ!」
余裕のあるメルルーサに対し、夏那も余裕をもって不敵な笑みを浮かべながら槍を構えて突撃する。
援護は水樹ちゃんの矢で、側面に回り込みながら矢を断続的に放っていた。
「たぁぁぁ!」
【ふっ!】
【こっちにも居ますよ!】
夏那の攻撃をメルルーサが貝を模した盾で防ぐ。そこへ両手にダガーを持ったレスバが脇から襲い掛かっていく。
【あんたは魔族ね? なんで将軍である私に戦いをしようなんて思ったのかしら!】
【この二人とはよく訓練をしていましてね! ちょっと試したいと思ったんですよ。そりゃああああ!】
【やるわね】
とか言いつつメルルーサはガントレットに剣がついた装備を生み出してレスバの攻撃を受けた。これも貝で出来ているが強度はかなり高い。
「この……!」
【ふふ、力強いわね! リクをそんなに取られたくないのかしら?】
「まあね!」
【……!】
夏那が淀みなくハッキリと答えてメルルーサは片方の眉を下げた。言葉というよりも連撃の重さに驚いているような感じだ。そこへ接敵した水樹ちゃんが魔法を放つ。
「<アクアランス>!」
【この距離で……!? だけど甘いわ! "ディサッピアー"】
「あ!」
いい位置どりで不意打ち気味の一撃だった。
しかし、メルルーサは海の将軍と言われているが実際には水を使う能力に長けている。アクアランスは彼女の能力によって形を崩された。
「魔法が!?」
「水魔法はメルルーサが得意とするからな。水樹ちゃんの魔法ではまだ将軍であるあいつには通らないってことだ」
驚く風太に解説をする。
魔力は使えば強くなる。
……逆に言えばレムニティとグラジール、そしてそこに居るブライクは一度死んでいるからかかなり弱い。弱く感じると言った方がいいか?
最初は当時のあいつらと会った時より俺が強くなったからだと思っていたが、どうも違う気がするんだよな。
ぶっちゃけると当時よりもさらに格下レベルなのだ。
【ふふふ、まずは一人】
「くっ……!」
貝の盾で夏那の攻撃をガードしながら水樹ちゃんに腕を振るう。ガントレットソードとも言うべきそれは腕を振り回すだけで脅威だ。見た感じ刃になっていないので鈍器と同じだな。
【ミズキ!】
「……! ありがとうレスバ! ……きゃあ!?」
【うわあああああ!?】
【ふふふ、あなた達を吹き飛ばすくらいわけないわね】
レスバのフォローがあり、ダガーでガントレットソードを受け止めていた。だが、メルルーサの力は強く、二人をなぎ倒していった。
「ナイスよレスバ! <ファイヤーボール>!」
【正気!?】
「夏那ちゃん!?」
水樹ちゃんとレスバが吹き飛ばされたその時、夏那がほぼゼロ距離でいきなりファイヤーボールを足元で炸裂させた。これにはメルルーサも一瞬驚き、水樹ちゃんが叫ぶ。
すぐに着弾したファイヤーボールは爆発して、その場に居た者達の視界を塞いだ。
「貰ったわ!」
夏那は着弾の瞬間、範囲外にステップしており盾と逆方向へ移動していた。そのまま槍の柄で脇腹を狙う。
【なんの……!】
「ふえ!?」
しかし夏那がいきなりその場で転び、攻撃は上手くいかなかった。その理由を見て水樹ちゃんが喉を鳴らした。
「触手……!?」
【このままいけるかと思ったけど、勇者の力は凄いわね……! いえ、眼鏡のあなたはちょっと違うみたいだけど?】
「……?」
メルルーサの足はクラーケンとかそういう感じの触手になるのだ。その足で夏那は転ばされた形だな。
【ふむ、あれを出させるとは。あの二人とレスバもやるな。フウタが混ざれば万が一勝てるかもしれん】
「万が一、ですか? 夏那も水樹も強いですよ」
ブライクの言葉に風太がむっとして言い返す。
風太としては『身内が勝てない』と言われるのは気分が悪かったようだ。俺はブライクの方が正しいと思っているがここは黙っておく。
そんな話をしていると、正体を現したメルルーサに、立ち上がった夏那がさらに攻撃を仕掛けていく。
「んなろぉぉぉぉ!!」
【あははは! いい根性ね! そら! そらそらそら!】
夏那は負けじと次々に技を繰り出していく。
【なんの……!! <
「<フリーズランサー>!」
【何度やっても同じ――】
メルルーサがディサッピアーでレスバと水樹ちゃんの魔法を相殺しようと笑みを浮かべる。しかし、お互いの魔法は彼女に放たれたわけではなく、お互いの魔法をぶつけての爆発狙いだった。
【きゃあああ!?】
かなり近くで爆発したのでさすがのメルルーサも悲鳴をあげる。ふむ、見たところお互い殺さないような立ち回りをしているな。
【うわ!? ちょっと近すぎ――】
「レスバ!?」
そして俺の予感が当たり、レスバは爆発に巻き込まれて大きく吹き飛んで地面を転がっていく。
【アホかあいつは……!】
「まあ、やると思ったけどな」
ビカライアが渋い顔をして苛立っているのを見て俺は呆れた顔で答えてやる。さて、向こうはまだ戦闘続行なので見ていこう。
「レスバ! この!」
【今のは私のせいじゃないわよね……!?】
レスバを見た夏那が激昂してさらに攻撃の速度を上げていく。感情でテンションが上がることはいいが、最初から全力を出せるようになるともっといいんだが。
【……ふふふ、面白いわ。少し本気でいかせてもらうわ……!】
「きゃ……!?」
「水樹! わあ!?」
ここでメルルーサが足の触手を動かし、死角の外から夏那と水樹ちゃんを弾き飛ばしていた。絡まれるのを嫌がって距離を取るがこれでは攻撃をしにくい。魔法は無効化されるからな。
この動きがメルルーサの地上制圧の戦い方……だが、俺は結局こいつと戦っていないからなあ。レッサーデビル達から守ってくれた時に見せてくれたのを覚えていたって感じだ。
「なんの……!!」
【よく耐えるわね。だけど私の足は10本あるわよ?】
「いたっ!? やるわね!」
【くっ……!?】
「水樹!」
上と下、両方からの攻撃を受け流すには無理がある。が、そこは才能か夏那は槍の先と柄を上手く使って捌き、一本の足を刺し貫いた。
「うん! <アクアバレット>!」
【チィ……!!】
そこで夏那の合図で水樹ちゃんが三度目の正直とばかりに魔法を放つ。これもディサッピアーで無効化されるかと思ったが5発のアクアバレットは触手で弾かれた。
「やっぱり。集中しないとその魔法無効化は使えないみたいね」
【……よく見ているじゃない。リクが他の将軍を相手にしている時みたいに冷静ねえ】
「なんせリクの弟子よ? あんたみたいなおばさんには渡せないわね」
「このまま押し切らせてもらいます!」
【おばさん……今、私をおばさんと言ったか……?】
「ん? そうよ。何年生きているか分からないけど、そうでしょ?」
おっと、ティリアと同じ煽りをしたな夏那。
【許さない……!!】
「……怒ったわね。行くわよ水樹!!」
「うん!」
さて、これは夏那の作戦か? どうなる――
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