29ターン目 意外な決着
「……ドロー。≪ブレイク≫を発動して≪グリーンハウス≫を破壊。≪大盾を構える戦士≫召喚。ナーデアでアタック」
「当然ガーデンで無効だ。パワープラントを捨てたからドローさせてもらうぜ」
「ターンエンド」
「ドロー、ローズの維持コストでMPを1消費するぜ」
サクラは考える。三十秒くらい経った。
「≪パワープラント シダー・ザ・ミレニアム≫を召喚だ。こいつの効果を知ってるなら早々にサレンダーを勧めるぜ」
彼女の背後に巨木が現れる。名前通りスギの木だが、幹の至るところに目玉がついており、枝の中には触手のように動くものがある。実際に見るととても気持ち悪い。
効果も厄介なものでパワープラントカードが墓場に送られると相手に2ダメージを与えるというもの。それでいてAPも3ある。パワープラントのエースの一枚だ。ガーデンのロックがそのままダメージに繋がる。ローズで行動制限されているため簡単には突破できない。
「ローズでアタック。ガーデンの効果で無効」
「アタック自体は無効になっても宣言時に≪救援の旗≫の効果を発動できる。戦士キャラクターをサーチ」
「パワープラントを捨てたことでドローして2ダメージだ。ターンエンド」
シダーの触手のような枝が私を襲う。これでLPは18/20。
アタックしなければガーデンの効果を使われないからダメージを受けないかと思うがそうではない。ガーデンの効果は自分のアタックに対しても使える。防御キャラクターを無視して攻撃を通し続けられるのだ。
主な攻略方法はアタックを介さないカードの破壊か効果によるダメージを与えていくことだ。戦士ビートには後者のような勝ち筋はほとんど存在しない。
「ドロー。MP2を消費して≪捨て身の特攻≫を発動。ナーデアと大盾を破壊してガーデンとシダーを破壊する」
前のターンに≪ブレイク≫で≪グリーンハウス≫を破壊していたことが功を奏した。これでアタック無効とダメージを与えるコンボは成立しない。
「やるじゃねえか。だがクイックマジック≪パワープラントの氾濫≫を発動。パワープラントカードが破壊された時デッキからそのカードと同じでないキャラクターをクイック召喚できる。≪パワープラント オレンジ・ザ・ブラッド≫をクイック召喚」
サッカーボールほどの大きさのオレンジに所々小さい穴が開いており、そこから赤い液体が漏れている。そんな不気味なカードだ。
「MPを1消費して≪キングスケルトン≫を召喚。このカードは墓場のキャラクターカード一枚につきAPが1アップする」
「オリカか。厄介だな」
「さらにMPを1消費してデッキからキャラクターカードを1枚墓場に置くことができる」
≪血に染まる鎧の戦士≫を墓場に置く。これで墓場のキャラクターは三枚。元々のAPが2なので5になる。戦士サポートを受けられないのが難点だがそれでも戦闘要員として入れる価値はあると思ったのだ。
「ターンエンド」
「ドロー。ローズの維持コストでMPを1消費。ローズでアタック」
「≪救援の旗≫でサーチ」
私のLPは16。
「MP1消費し、手札を一枚墓場に置いて≪
≪パワープラント シダー・ザ・ミレニアム≫も回収したため次ターンでまたあのコンボが復活してしまう。
「ドロー」
私は考える。ガーデンがある以上こちらの攻撃は通らない。ガーデンの除去をしたいがオレンジが身代わり効果を持つ。そしてローズのマジックとアイテムは1ターンに一度しか使えないという制約が効いてくる。
「早くしろよな」
一分くらいは考えていたと思うが、反則とかマナー違反というほどではない。
「MP1消費で≪
「いいカードは引けたかよ?」
「お陰様で。≪軍旗を掲げる戦士≫を召喚。効果発動。待機状態にすることで自分と相手のキャラクターをバトルさせる。キングスケルトンとガーデンをバトル」
当然AP0のガーデンは破壊される。アタックを介さないためガーデンの効果は使えない。オレンジの身代わり効果もバトルによる破壊には使えない。
「……クソッ、二回もガーデンを壊されるとはな。負けだ」
「え?」
「あたしの負けだって言ってんだよ」
キャラクターたちが消えてデッキがポーチに戻る。
「最後まで戦ったらどうなの?」
「あんたの実力はわかった。それにさっきのがレネアの死と引き換えに手に入れたオリカだろ? もう行くぜ。不快にさせて悪かったな」
サクラがカードを取り出して馬を呼び出した。チラッと見えたカードのデザインや馬のビジュアルからクロマジのカードではないとわかった。
「忠告しとくぜ、あたしたちは狙われてる」
そう言い残して馬に跨り、あっという間にその場を立ち去った。
勝ったはずなのに敗北感がある。見たがっていたオリカを≪キングスケルトン≫だと思われたのでよかったと考えることでその敗北感を誤魔化した。
"あたしたち"というのは異世界からの転生者のことだろう。ファラエスたちのいう『異界の使徒』というやつだ。彼女たちのことならばいいがそれ以外にも狙ってくる相手がいるとなると厄介だなと思う。
「ユキノさーん!」
リーナだ。しばらく帰ってこないから心配になって探してくれていたらしい。
「大丈夫?」
「うん、心配かけたみたいでごめんね」
「よかった、じゃあ帰ろう」
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