22ターン目 キングスケルトン
一度城の外へ出る。休息も兼ねて作戦会議をするためである。
「思った以上の大物がいたな」
レネアの口調からは危機感と一緒に興奮も感じられた。冒険者になった理由からして戦闘狂の気があるのは予想していたが。
「私の呼吸が整ったらすぐに乗り込む。二人をスケルトンにさせたくない」
「待ってください、ハイスケルトン以上の大物がいる可能性があるんですよね?」
仲間の一人が言った。レネアは声の方に顔を向ける。
「恐くなったなら逃げていいぞ」
穏やかな口調だったが何とか怒りを押し殺しているように見えた。
「いえ、そういうわけじゃないんです。さっきはリーダーが一人でやったじゃないですか。俺らも何かできることがあったんじゃないかと思って」
「違うぞ、もう少し長引いていたら俺らにも指示が出た。現にユキノには指示を出していただろう?」
前衛にいた髭の男が解説にレネアは頷く。
「ああ、あれで決められなかったら前衛で四方を囲むように指示してた。中衛、後衛には次の魔法の準備の指示だな」
ガチャガチャという音が聞こえた。徐々に近づいてくる。
「構えろ!」
全員一瞬で陣形を組む。私はスキルを発動させる。手札は悪くない。
大きな音とともに城の入り口が壊れ土煙が立つ。レネアは迷わず土煙の中に飛び込む。
「土煙が晴れるまで警戒しつつ待機して下さい! ユキノさん、戦士が出せるならレネアのサポートをお願いします」
指示を出す前に突っ走ったレネアに代わりフエナが指揮を執る。私は≪荒野を駆る戦士≫を召喚し、アタックを宣言する。しかし、アタック対象が不明のまま宣言するとどうなるのかは不明だった。TCGではアタックされない効果を持つキャラクターのみが存在する場合は相手のLPに直接アタックとなるが……。
土煙の中に巨大な影が見えた。ハイスケルトン以上だ。その周囲を動き回る小さな影もある。≪荒野を駆る戦士≫が戻ってくる。
「でかっ……。キングスケルトンじゃん……」
ハンナが怯えながら呟く。私が驚いたのはその大きさではなく腰の横にLPが47/50と表示されていたことだ。どんだけ固いんだ。
レネアが後ろに大きく下がる。
「攻撃に当たらないように動き回りながら攻撃していけ!」
前衛がキングスケルトンを取り囲むように動く。ヒット&アウェイを繰り返すが、ほとんど削れていない。≪荒野を駆る戦士≫も隙を見てアタックに参加させるが元々のAPが低いためあまり戦力になっていない。
スケルトンに苛立ちが見える。一振り一振りが大振りになっている。まとめて倒そうと地面すれすれに剣を横薙ぎにしてくるが、取り囲む彼らは躱し続ける。黒級冒険者と行動をともにしてきたのは伊達ではないようだ。
私は手札を確認する。ドローしたのは≪血に染まる鎧の戦士≫だ。AP4は魅力的だが数値通りの攻撃が期待できるだろうか。仲間たちが何度も攻撃を繰り返しているのにLPはまだ43/50と表示されている。それもほとんどレネアの攻撃で削られている。彼女がキングスケルトンの注意を引きつけるように戦っているが、攻撃に専念できる状況を作りたい。とりあえずという調子で今引いた≪血に染まる鎧の戦士≫を召喚し攻撃に参加させる。
その時、仲間の攻撃でキングスケルトンのLPが39になり、40に戻ったのが見えた。私は固いのではなく回復し続けているのではないかと考えに至る。
「ロシュカ、スケルトンって頭を砕いたりして確実に潰さないとすぐに蘇るんだよね? じゃああれも蘇り続けてるってことはないかな?」
ロシュカは魔道具で魔法を撃つ手を止める。
「炎の中とか特定の状況で回復し続けるモンスターはいるからその可能性はあるかも。だとしたら条件は何だろう……」
「時間、土地、攻撃方法とか何か考えられることはない?」
「二人とも何やってるんですか!」
フエナが大声を出す。実際に怒っていないかもしれないが、魔法が飛び交っている中では大声を出さないと少し離れるだけで聞こえなくなるため怒鳴られたように感じる。
私はフエナの近くに駆け寄る。一蹴されるかもしれないが確認する価値はある。
「回復し続けてるんじゃないかって話してたんです」
「それを確かめる方法と対策はありますか?」
「……あります。私を前に出させて下さい。それと私が両手を大きく掲げたら一旦魔法を中止して下さい」
フエナはため息を漏らす。
「前衛の邪魔をしないこと。いいですね?」
「はい!」
近づくと状況がはっきりと見えた。レネア以外の前衛の動きは徐々に遅くなっている。このままでは一人づつやられていくだろう。そう思った瞬間、一人がキングスケルトンの振る剣に当たりそうになる。
「≪荒野を駆る戦士≫の効果発動!」
手札に戻してその攻撃は僅かに逸れる。何が起きたのかわからないという様子だったが、すぐに立ち上がりまた動き始めた。
「ユキノ! 何しに来た!」
レネアにも怒鳴られる。わかっていても大声出されるのは苦手だ。
「ずっと回復してます! このままじゃ倒せません!」
「じゃあどうしろって言うんだ!」
「回復の条件を調べます! 少しの間前衛の攻撃を止めて防御に徹して下さい!」
「それじゃあ回復し続けるだけじゃないか!」
「いいから止めて!」
私の勢いに押されたレネアは前衛の攻撃を一旦やめさせてくれた。魔法の攻撃だけが続く。何発も当たっているが、回復が止まる様子はない。両手を大きく掲げる。
「確認できました。前衛攻撃再開お願いします」
「わかった!」
レネアが指示を出し先程と同様にヒット&アウェイを繰り返していく。レネアの攻撃が通ると回復より減少が上回るようだが、38まで回復してしまっていた。少しづつでもダメージが与えられるなら、RPGゲームでは根気があればなんとかなる。しかし、現実は体力や気力が持たなければならない。
次は魔法によって回復していないかの確認だがそれも関係なさそうだ。私は再度両手を掲げる。すぐに魔法の攻撃が再開された。
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