第77話 修練開始
(頭がボーッとする。身体中が重い。私は今何やってたんだっけ。ずっと癇に障る声が私の耳にこびり付いて離れない。今もなんか聞こえる。なに?なんて言ってるの?上手く聞こえない。もっとはっきり言って。ん?はえ?え?ま、え……?ん……?前?)
ボヤけている視界から目元に意識を集中し補正処理していくと徐々に鮮明になっていった。
まだ少しボヤける視界に向かって周囲の光を奪いながら黒い塊が迫ってきた。
その黒い塊はそのままイヴの視界を埋め尽くし、同時に凄まじい衝撃を受けるとあっさりと意識を手放した。
「だから言ったのになぁ」
薄れいく意識の中でイヴの耳にスッと入ってきた言葉に彼女は心の中で悪態を吐いた。
パシャッと何かが顔に掛かる。
少しの痛みと冷たさで一気に意識が覚醒したイヴは飛び起きた。
「やっと起きたかいイヴちゃん。もうちょっと頑張れると思ったのになぁ、君がそこまで弱いとは思わなかったよ。失礼失礼」
「……私が弱いのは別に否定しませんが、底意地の悪さが出まくってるゴーレムのせいだとは思いませんか?」
「ん?全然思わないよ?」
「……そうですか」
イヴは無意味な会話だと改めて思った所で自分の身体の調子を確認し始めた。
立ち上がり軽くジャンプしたり腕を回したりと、ひと通りの動作確認を終える。
それが終わるのを暇そうに見ていたガイアが口を開く。
「君の身体はちゃんと治しておいたよ」
「……ありがとうございます」
「サービスだから気にしなくてもいいよ〜。大丈夫、ぐちゃぐちゃに潰れたとしても僕がちゃんと元通りにしてあげるからね」
即座に感謝した事を後悔したイヴだが更に言葉を交わしたくなかったので無視する事にした。
ガイアも特に気にしていないのか指をパチリと鳴らした。
「それじゃあ再開しようか。次のレベルはどれくらいからがいいかなぁ?イヴちゃんこっから選んでね」
ガイアがイヴの目の前にステイタス画面に似た透明なボードを出すとそこに文字が浮かび上がる。
全て表示された文字列をイヴが上から下に視線を移動する。
一番下まで確認する。
イヴは顎に手を置き、思考を巡らし始めた。
ガイアが言うレベルとは今訓練で使用しているゴーレムのレベルの事だ。
最初は当然Lv.1で砂を固めただけのゴーレムだった。
そこからLv.10毎にゴーレムの材質やステイタスが上がっていった。
先程イヴを殴り飛ばしたゴーレムがLv.50だ。
思案していたイヴが再びボードを見る。
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Lv.01-----【サンドゴーレム《100》】
Lv.10-----【ロックゴーレム《20》】
Lv.20-----【ロックゴーレム《40》】
Lv.30-----【ロックゴーレム《60》】
Lv.40-----【ロックゴーレム《80》】
Lv.50-----【ロックゴーレム《100》】
Lv.60-----【アイアンゴーレム《20》】
Lv.70-----【アイアンゴーレム《40》】
Lv.80-----【アイアンゴーレム《60》】
Lv.90-----【アイアンゴーレム《80》】
Lv.100---【アイアンゴーレム《100》】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(《》内の数値は前のゴーレムの構成物質の含有量て言っていた。
基準はLv.1のサンドゴーレムで砂100%。
次がLv.10ロックゴーレムで砂20%の岩80%という事らしい。
以前リオンから鉄100%だからといって必ずしも強い訳じゃないと教わったが、このボードもあの神の適当な表示に過ぎないのであればいちいちツッコむのも面倒臭いので放置でいいだろう。
それより問題なのはここに表示されているゴーレムが私が過去戦ったゴーレムの2倍、下手したら3倍くらい強い事だろう。
普段ロックゴーレム程度であれば何体出てきても問題ない。と言うのも人造魔物であるゴーレムは核が頭に埋め込まれていて、それを破壊すれば簡単に破壊できる。
だけどこのゴーレムには核があるにはあるが、それが身体中を常に移動してる。
更にその核が通常の大きさの1/10程の大きさしかなく、数も6個ある。
素早く全ての核を破壊しないと時間経過で元に戻るおまけ付き。
更に更にこのゴーレムは人族の様に連携を取り襲いかかって来る。
全てのゴーレムは素手だけど役割関係無く位置関係に応じて個々で遠距離から石や木など身近にある物を投擲物として使用する鬼畜っぷりだよ。
つまり私を起点に近くに居れば近接役になり、離れれば遠距離役にシフトする。
そんなのがなんと6体いる。
ため息も吐きたくなるけど、強くなるために仕方なく付き合ってあげる。私の目的のためにせいぜい使われてよね。
ガイアは何を考えてるから分からない無表情なのにどこか憎たらしい顔付きに見えてくるから不思議だよ全く。よし決めた。)
顔を上げ思考がまとまったイヴはガイアを指差し高らかに宣言する。
「Lv.50からで!」
「おっけー。でも次はもっと頭も使って戦った方がいいと僕は思う思うなぁ。なーんてね、ハハハ。じゃあやろうか」
その宣言に対してガイアは軽口を叩きながら再びパチリと指を弾く。
するとイヴの目の前からボードが消失し、小さな地鳴りがして再度6体のロックゴーレムが構成された。
準備が整いつつある場を見ながら、ひとつ深呼吸をしたイヴは全身にバフを掛ける。
暫くして全ての準備が整ったイヴはロックゴーレム目掛けて前に出た。
それが開始の合図の様で全てのロックゴーレムも一斉に動き始めた。
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