第42話 崩壊の前兆

 奴隷商館で捕らえられている同族である天翼人族を救出する為にエレオノールと共に強襲したリノアだったが、そこには天翼人族は1人も居らず既に移動させられた後だった。

過度な人道的感覚を持っていたのか、はたまたついでだと思ったのかは知るよしも無いが、そこに収容されていた他の奴隷達を全て解放して助けると約束したリノア達は早々に脱出しようと行動に移した。

しかし初めから罠を感じ取っていた2人の前には案の定刺客が現れた。

だが想定よりかなりの大物が出てきた事に2人は驚愕した。

その人物は橙色の髪と瞳を持つ男、たった10人で構成された皇帝直属の近衛魔装兵の1人、アルマースだった。

彼の実力は凄まじいものでリノアとエレオノールは手も足も出せずに敗北を喫してしまった。

気絶した2人と絶望的な状況を嘆く奴隷達の前に新たな闖入者が気安く嗄れた声でアルマースに話し掛けていた。

苛立ちを隠さないアルマースと対等に話す口元以外をローブで覆った男は、同じく皇帝直属の近衛魔装兵であるガリュナーだった。

暫く2人の口撃や攻撃が続くが、結果的にアルマースが折れ部下を引き連れ、立ち去っていった。

しかしそれでも奴隷達は安堵出来る状況では無いので依然として警戒心を募らせながらガリュナーを見ていると今まで気味悪くも通常の言語を喋っていた男が突然壊れた言動を繰り返したと思ったら背後から闇が吹き出し、中からその闇に負けない程漆黒に染まった野性味が強い獅子人族風の男が出現して奴隷達を更なる混乱の渦に叩き込んだ。

もう理解を放棄するくらい短時間での情報量が多かったが、それでもまだまだだったらしい。

漆黒の獅子人族風の男は私達、奴隷を助けてくれた2人の少女に向かって徐に黒い液体をぶちまけた。

その行動に驚愕するものの次の瞬間には彼女達の傷が治った事で何度目かになる目を見開き口を開け時間を止めた。

あんな回復力があるポーションなど見た事など皆無であったし、そもそも通常ポーションは青色をしているのであそこまで禍々しい色をしている液体がポーションだなどと誰が予想出来ようか…………。

漆黒の獅子人族風の男の行動は続き、彼女達の傷が回復するのを確認せず目の前に立ち塞がる同じ奴隷として捕らえられていた吸血鬼族の少女にも同様に黒い液体を頭からぶっかけていた。

吸血鬼族の少女、ウピルは他の奴隷達とは少し毛色が違い扱いも商品では無く、殺さずに死ぬまで隔離しているだけといった感じの扱いだった。

そんな境遇を知っている奴隷達は少女の身体中の痣が、抜かれた歯が、折られた翼が時間を巻き戻した様に回復する姿を見ると色々と込み上げて来るものがあった。

それは当事者であるウピルが一番痛感していたので、痛みが無い身体をペタペタと触り無意識に滂沱の涙と声を上げた。

その間にリノアが雑に起こされたりと他愛も無い事があった。

そうした中この場での漆黒の獅子人族風の男、リオン以外の全ての人物が落ち着くまで暫く時間が掛かったものの、現在リオンの前にはリノアとエレオノールが先頭に立ち、その後ろには地下に収容されていた奴隷達が居る。

奴隷達の顔色は相変わらず芳しく無く、半数近くは自力で立つ事が出来ず座り込んでいた。

そして先頭に立つリノアとエレオノールはというと2人共ジト目でリオンを非難の目で視線を上下させていた。


「……ねぇ、リオン。これは一体どう言う事か説明してくれる?」


代表してリノアが凍えそうな声でリオンを問い詰める。


「何がだ?」


 しかしそれに対してリオンは素知らぬ振りで適当に流そうとするが、先程からずっと足元にしがみ付いている人物に全員の視線が向いており、「ふむ」と一言漏らす。


「何がだ、じゃないでしょ!!リオン、あなたウピルちゃんに何したの?と言うか貴方、拘束されていた筈じゃなかったのッ!?しかも普通に喋ってるし!!どうなってんの !?この短時間で何があったの!?」


 リノアの指摘にリオンも足元に目線を向けると未だ泣きじゃくりながらガッチリ足元ホールドしている吸血鬼族の少女、ウピルが居た。


「まあ落ち着けお前等。幾ら俺がイケメンでクールガイだからって幼女には手を出さねえよ。俺は紳士な男で通ってるからな。何かしたってんならこのチビの怪我を治してやった程度だ、感謝されこそすれ誹謗中傷を云われる筋合いはねぇ。おいチビ、お前もいつまでもコアラしてんじゃねえ。それと言っとくが、拘束なんてされてませぇん、ただの暇潰しでぇす」

「………リオンが何言ってんのか全然わっかんないけど、確かに私達も含めてウピルちゃんの怪我を治してくれた事は感謝しないとね。ありがとうございます。……それはそうと、その無駄に意地張るのはなんなの?この前自分で拘束されたって言ってたじゃない」

「確かに……お、ゴホン、私の命を救ってくれた獅子神様には感謝申し上げます!!それと卑劣な罠に掛かったと伺っておりましたので御無事で私は安心しました」


 リノアは前半の文言に首を傾げるが直ぐ様スルーしてきて、後半で素直に感謝の意を込めて頭を下げる。

エレオノールは片膝を付き頭を垂れると同時にリオンの無事も慮った。

更に引き剥がされパタパタ抵抗しながらリオンに抱き着こうとするウピルも周囲を見渡して漸く状況を理解すると弱々しく口を開いた。


「り、りおんさま、わたしのケガを治してくれて、あ、ありがとう、ござい、ます」


 感謝を述べると直ぐに足にしがみ付くウピルにリオンが眉根を寄せ不快感を滲ませるが、敵対しない女、子どもには優しい紳士的な黒獅子はとりあえず吸血鬼っ子を放置する事にして、間抜けにも罠に嵌った事を話題にする事なく先程の反省と今後の流れを確認する事にした。


「お前等の感謝なんて要らねえよ。それよりあんな硬いだけの雑魚に負けやがってバカどもが!あんなの素早い亀と一緒だろうがよ。ハァやれやれ、まあいいや、それよかこれからお前等はどうすんだ?」


 皇帝直属の近衛魔装兵の1人を雑魚呼ばわりするリオンにこの場の全員が唖然とするものの、少し離れた場所で未だに壊れた状態のガリュナーを見てしまっては各々反応は違えど納得するしかなかった。


「ハァ……とりあえず今の私じゃ勝てない相手だからね。それよりも同族達が他の場所に移されちゃったの、リオンだったらどこに連れて行かれたか分かるんじゃない?」


 リノアが呆れながら話し始めるが仲間の話になる頃には真剣な顔になっておりリオンに問い掛ける。

話を振られたリオンは少し中空をキョロキョロすると腕を組み、「ふむ」と一言漏らすと視線をリノアに向ける。


「分かんねえな。街中は人の気配が多過ぎんだよな」


リオンの返答に少し悲しそうな顔で俯きリノア。


「そう、ですか……。そうですよね、リオンでも分からない事もありますよね……」

「お前は俺をなんだと思ってんだよ。分かんねえもんは分かんねえし、出来ねえもんは出来ね………ん?あぁ……中は分かんねえし、コレが目的物かどうかは知らねえが街の外、森の中に不自然に固まった一団がいんなぁ」

「「本当(ですか)ッ!?」」


リノアとエレオノールが同時にリオンに詰め寄る。


「……お前等随分仲良くなったな。まあいいけど、天翼人族かは確約出来ねえけどな。とりあえず行ってみりゃいい、盗賊だったら皆殺しにすりゃいいだけだしな」


リオンも同行すると思っていた2人は更に詰め寄る。


「えっ?リオンは来てくれないのッ!?」

「獅子神様も是非御同行いただきたく存じます!」

「いや何で俺がそんな面倒な事しなきゃなんねえんだよ……と言うかレーベ、お前そんな堅っ苦しい喋り方だったか?リノアとは距離が縮まり、俺とは距離が離れたな」


 その後2人の説得が長々と続くが面倒臭くなったリオンは全く聞いてなかったが、その間思考加速を使用したリオン脳内会議は大いに盛り上がり賑わっていた。


(お腹空いたよ〜!リオンも美味しいけど硬過ぎ〜!もっと柔らかいお肉が食べたいよぉ〜)

(いやいやオピスちゃん、噛みごたえある方が満腹中枢、が君にあるかは知らねえが満足感は変わってくると思うぞ?だが俺をこれ以上食べるのは推奨しねえけどな)

(イヤイヤイヤイヤ〜!リオン飽きた!柔らかいお肉がいいの〜)

(リオン、オピスもこう言っているし丁度良い餌もこれから行く所に居るんでしょ?なら良いじゃない)


オピスとリオンの問答にツバサも介入してくる。


(そりゃそうなんだが……。まあそれで満足してくれりゃ俺が食われる事もねえか)

(そうそう、しかもリノアちゃんがこんなに困っているんだもの助けてあげなくちゃね)

(オピスちゃんが諦めたから〜わたしがリオンの全部を独占出来るってことだね〜?リオンは美味しくわたしがいただいちゃいま〜す)

(何言ってるの?リオンはリオンで食べるけど〜リノアちゃんを助けるついでに食料も確保できるのは〜一石二鳥だね〜)

「お前等この前から急にリノアの味方しまくってるが何なんだ……?それと俺は非常食じゃねえから食うんじゃねえ」


 リオンが前々からの疑問を念話では無く、音として口にするとキョトンと場が少し沈黙する。

しかし直ぐに立ち直った全員から心配されてしまう。


(リオンってばなに言ってるの〜?わたし達は最初からリノアちゃんと仲良しだったじゃ〜ん。可愛い女の子は助けるのが俺達の信条、あれぇ?私?わたしは可愛いよね〜?)


 オピスの怪しい発言にリオン以外の顔を出していない全ての奴等から同意の念話を受け取る。


(……ハハハ、さすがにもう時間がねえってか。早急にあそこに行く必要がでてきたな。だが俺にはまだそんな兆候出てねえ、筈だよな?)


 焦るリオンが自問自答するが、その思いは館を出る前に脆くも崩れ去ってしまう。

脳内会議、と言うか井戸端会議が未だ続いているがとりあえず今は目の前でリオンを説得しようとする2人の対処をする。


「うるせえ、さっさと行って片付けるぞ!」


突然意欲を見せたリオンに2人は驚くが、直ぐに安堵の笑みを見せる。


「ありがとうリオン!」

「感謝致します獅子神様!!」


 善は急げと館を飛び出そうと動こうとするが再び待ったが掛かる。

リノアの静止の声に勢いを削がれ、不機嫌な顔を隠そうともしないリオンが振り返る。


「その前にこの人達の枷を外して自由にしてあげて!」


リノアの嘆願を受け、今の今まで視界にも入れてなかった奴隷達を思い出して視界に入れる。


「ん?あぁ、そういやそんな事言ってたな……ほら」


 全員を一瞥しリオンの目が怪しげに光ると、周囲からパキンと金属が割れる音が連鎖的に響く。


「これでいいな。後はお前等の自由だ、好きな所なりどこへでも行け」

「いやリオン、このまま放置は出来ないよ……」

「それならば一旦俺達の宿舎……はもう無理か」


 リノアとエレオノールの悲痛な声を面倒臭そうに聞くリオンがこのままだと時間が掛かりそうなのでひとつの案を提示する。


「俺がさっきまで居た大会運営本部に隠れてろ。とりあえずあの館の奴等は全員殲滅したし、地下にはレーベの隊の連中が寝てるからよ。明日までなら問題ねえだろ」

「し、獅子神様!部隊の皆は無事なのですかッ!?」


エレオノールの叫びに煩わしそうに手を振り対応する。


「あぁ、魔力欠乏で意識失ってるだけだから大丈夫なんじゃねえかな」


 一先ず全員の無事を知るとエレオノールは安堵の息を吐き、元奴隷達に道を説明しその館で待っている旨を伝えると全員了承する。


「あとは、リオン……ウピルちゃんはどうするの?」


 今も抱き着いている吸血鬼っ子に視線を向け、どうするか思案するが会話は聞こえていたのか、か細い声で口を開く。


「り、りおんさまと一緒に、行きます」

「………好きにしろ」


 最早面倒臭くなっていたリオンはコアラこと吸血鬼っ子をくっ付け移動しようとするが、リノアが「そういえば」と振り返ると1人の男を指差した。


「あの男はどうするの?」


 全員が視線を向けるとリオンも忘れてたのか「あぁ……」と忘れ物に気付き、ブツブツ呟くガリュナーを持って行く為近寄った。


「コイツはまだ何かの役に立つだろうから持って行く[グチャッ]……あん?」


2人に説明していると破裂音が周囲に響く。

リオンが首を傾げ、他の面々は絶句した。


「リ、リオン……?」


 リノアが恐る恐る声を掛け、リオンもガリュナーが居た場所に目を向けると既にそこに人型の存在はいない、血溜まりと見知らぬ巨大な青い毛皮をした獣の腕がガリュナーを潰し床を砕いていた。

軽く目を見開くが、直ぐに射殺すかの如き鋭い眼で巨大な青い毛皮をした獣の腕に問い掛ける。


「………誰だお前?」


 勿論腕なので応える事は無く、リオンはその腕の根本を視線で追う。

しかし辿り着く本体はリオン本人だった。

その言動と行動を不審に思ったリノアが再び声を掛ける。


「な、何、言ってるのリオン、アナタがやったんでしょ……?」


その言葉すら聞こえない程リオンも驚いていた。


(……オイお前等、あの腕は誰のだ?誰が勝手にコイツを殺した?)


念話でオピス達に確認を取るが誰も何も知らないと言う。

見知らぬ巨腕の観察を続ける。


(何だコレ、肩の付け根から先の感覚がねえな……オピス達と同じ前世の人格の一部か?だが以前鑑定した時はコイツ等以外の枠は無かった筈……今鑑定したら何か違ってんのか?念話も届いてねえのか沈黙決め込んでんな、そもそも意識があるかも不明だ。結局辿り着く所は鑑定か……チッ、急ぐ必要が出てきたが、仕方ねえがとりあえず今は……)


 いつもと同じ所に回帰すると徐に右腕で巨大な青い毛皮をした獣の腕を切り落とした。

血が噴き出し床を溶かしながらオピスを呼ぶと尾骨等辺からニュッと生えてきた。


(食べていいから処理しといて)


手短に伝えるとオピスが嬉々と腕を飲み込んでいく。

まさに剣を飲むマジシャンの如く。

自己再生により左腕も即座に再生させると、普段通りの自分の腕なのを確認するとリオンは何事も無かったかの様に歩き出した。

混乱を極めていたリノアとエレオノール、奴隷達は慌てて追従しリオンは2人から質問攻めに遭うがいつも通り全てを華麗にスルーし奴隷商館を後にした。

その間、吸血鬼っ子のウピルはリオンが垂れ流した血に興味津々で真紅の瞳を爛々と輝かせていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[獅子身中]


 リノアとエレオノールが奴隷商館を強襲する為に夜が更けるのを宿屋で待っていた時、漸くガイアの世界から戻ったリオン一行の前にはローブを目深に被った1人の男が表情の抜け落ちた状態で棒立ちしていた。

その男を腕を組んだ仁王立ちの漆黒の獅子人族風の男、リオンが眺めていた。


(結局何だったんだコイツ。急に俺に幻術掛けてきやがって、思わず力比べしちゃったじゃねえか。マリーよりかは強いが……所詮その程度だったな)

(ねえリオンこの人食べていいの〜?もうお腹ペコペコ〜)


 普段と変わらずオピスの催促に、まあ待てと静止すると早速尋問を開始しようとして歩を進めるも直ぐにピタリと止まるとリオンはある事に気付く。


(そういや俺話せねえじゃん……)


 根本的な問題を思い出しどうするか考え、既に面倒臭くなったからかオピスにヨシとGOサインを出そうとするとテースタが待ったを掛ける。


(こりゃ落ち着かんかバカ者!先程魔法陣を解析して破ったのと平行して人間の時同様に声帯も作れる様にしといたわぃ)

(えっ?マジ?やるじゃん爺、いつもそんな感じだと助かるのにな。それじゃあ早速……)


 人化はまだ復活してないので擬態スキルを使用して、コネコネとイメージを魔力に乗せ続ける事数分。


「あ"ー?あ"、あ"あ"あ"ー……あ"、あ、ああぁぁ、あぁ、あいう、えおー。ふむ、こんなかんじでどうだ」


 その後少しの間練習したら以前と大差無く言葉を紡ぐ事が可能になった。


「それじゃあ早速情報収集といくか。先ずはお前はどこの誰で何の為にここに来た?」

「ヒャ、ヒャ、ヒャヒャヒヒヒ、ワ、ワワ、ワシは、こここ、こ皇帝陛いい、下直属ま、まま魔装へ、へ兵の、がががガリュななナー、ヒ、ヒヒヒ」

「いやいや聞き取り辛えよ!!昭和家電かよ……もうちょい強めにいっとくか」


 ポンコツ具合に叩けば直る精神でローブの男、恐らくガリュナーに先程より強めに幻術を掛ける。

効果は直ぐに表れ、打ち上げられた魚の様にビクンビクンと痙攣し始め、数秒もすると再びピタリと停止した。


「これで直ったか……?もう一度聞くぞ、お前はどこの誰で何の為にここに来た?」

「ヒヒヒ……ワシは皇帝陛下直属の近衛魔装兵、第十席ガリュナーだ、ヒヒ。ここに来たのは厄災の従属化、フヒヒヒ」

「ふむ、笑い方がキモイ以外は直ったな、それにしても皇帝直属か……こんな奴が帝国戦力の上位陣とはな……俺なら絶対配下にしねえな、キモイしな。しかもこんな奴程度で俺を洗脳出来ると思ってんのか?魔法抵抗が下がってても無理だったんだから、この帝国で俺を洗脳出来る奴はいねえってことか?クハハハハハハ!」


 1人勝ち誇り高笑いしていると頭から冷水をぶっかけてくる蛇や狼や悪魔や骨がいた。


(そうやって〜おバカみたいに油断してるとまた罠に嵌まるよ〜キャハハハハ)

(そういう所も可愛いけど〜おバカなのはどうかとわたしは思うな〜キャハハ、そんなところも可愛いけどね)

(アナタが罠に嵌まってバカを見るのは別に構わないのだけれど、私達まで巻き込まないでほしいわね〜ふふふ)

(主等、此奴の馬鹿さ加減は何千年経とうと変わりゃせんわ。ワシとしては珍しい罠なら掛かってくれても構わんぞ、ふぉふぉふぉ)


各々言いたい事をグサグサ宣うのでリオンが笑みが消え笑いが止んだ。


「お黙りなさい君達、私は決してバカではありませんよ。……さてさて、そんな法螺吹いてねえでそろそろ行動に移すぞ。リノア達がどういう状況かも気になるしな」


 若干戦闘力が53万はありそうな奴の発言をしてしまったリオンがリノア達の様子を確認する事にした。

その後もブーブー文句を言う念話を全て無視しながらリノアに魔力パスを繋げるとまさにベストタイミングの状況だった。


(力が欲しいか)


 某アニメのジャバウォック遊びをするも元ネタを知らないリノアは特に突っ込む事なく普通に反応してリオンのテンションは結構下がった。

そのまま話を聞くと現在強襲した奴隷商館に捕獲されている奴隷達を助けてくれと懇願してきた。

勿論メリットも無ければ面倒臭く、助ける意味も見出せないリオンは拒否するが、ここで眉を顰める事態が起きる。


(それくらい、いいじゃ〜んリオン〜。折角リノアちゃんがこんな必死に頼み込んでるんだからさ〜。リノアちゃんを助けると思ってさぁ〜リオンにとっては朝飯前でしょ〜?あっ、お腹空いた〜ごは〜ん)

(利ならあるじゃな〜い。私達がリノアを助けてあげられるでしょ〜。こんな可愛い子が頼み込んできてくれる事が私達の利益になってるわ〜)

(リオンは渡さないけど〜リノアちゃんを助けるのは大事だからね〜誰かが言ってたよ〜。ん?あれ〜?ねぇ誰だっけ?)

(ほほほ、リオンよ。コヤツ等の言はどうでも良いが、奴隷の中に面白い種族が居ればそれだけで救う価値があると言うものよ。リノア嬢の願いも叶う、ワシの願いも叶う、これが利でないと言うならばなんだと言うんじゃ。まあバカなお主には分からんかもしれんがな、ふぉふぉふぉ)


 突如リノアの肩を持ち始める面々にまさか内部反乱が発生するとは思ってなかったリオンは少し驚くが、普段は身体の主導権があるのはリオンだけなので今回もいつも通り切り捨てるつもりだったが今回は何故か劣勢を感じ素直に応じる羽目になった。

リオン自身も不思議な感覚で無意識に納得してしまう事に多少混乱するものの、結果として後に希少種族をGETするので過程と状態はどうあれ利はあったのであろう。

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