第28話 初登校
リオンが高笑いしながら冒険者達と一方通行のダンジョンボスごっこに興じている頃、魔法国家リンドブルムに居る少女は、リンドブルム魔法学院の入学式までの残り約1週間の期間を冒険者ギルドの依頼を受けつつ近場の森でリオン監修鍛錬ノートを黙々と(周囲の人からは鬼気迫る雰囲気と評されていたが)努力していた。
そんな辛い日々も明日の入学式を前に一区切りにした。
未だに冒険者ギルドの受付嬢、マリーの自宅に居候させてもらっているイヴは何度も独り暮らしを提案しているのだが、マリーも過保護が加速したのか一向に首を縦に振らず認めてくれなかったのである。
そもそも既に成人しているイヴは誰かに断りを入れずとも宿を借りられるのだが、そこを指摘する人物はいなかった。
それにイヴ自身もマリーとの共同生活はとても気に入っており、更には元々押しに弱い性格からかもういいかなと思ってきているのは内緒だ。
「遂に明日は魔法学院の入学式ね。イヴは賢いから学年一位での入学なのよね〜凄いわ」
よしよしと頭を撫でながら頬を緩ませるマリー。
「やめて下さいよマリーさん。私なんてリオンに比べたらまだまだなんです、本当の首席はリオンなんです。ですので私は学院でもっともっと頑張らないとダメなんです!」
謙遜するイヴだが、いやいや、と呆れた様にマリーはイヴを諭す。
「あのね、リオンさんと誰かを比較すること事態間違ってると思うわよ。あまり長い時間一緒に居なかった私ですらそう思うんだもの……と言うかここ数日、イヴから聞いたリオンさんの話を聞くだけで既にアダマンタイト級以上でも通用すると私は思ってるわよ」
マリーもリオンが規格外の存在であると認めているが、実はリオンの筆記試験の結果は中の下だったので彼が一緒だとしてもイヴが首席なのは揺るぎ無い事実であった。
あれから2人の絆も更に強固なモノになり、互いに良い感じに遠慮無く過ごして来たと感じさせる雰囲気だった。
それから数時間程盛り上がっていると、ふぁぁ、とイヴが欠伸をしたのを合図に明日に備えてお開きとなった。
翌日、朝食を済ませたマリーとイヴは一緒に家を出るとマリーは冒険者ギルド、イヴは魔法学院にそれぞれ分岐する道で別れた。
10分程歩くと堅牢な城塞と見間違う程立派な魔法学院に到着した。
するとすぐにイヴに声を掛ける男に再会する。
「よう、久しぶりであるなイヴよ。相変わらずちっこいな、ちゃんと飯は食わんと大きくなれんぞ。ふむ、それはそうとリオンは居らんのか?」
「はぁ……相変わらず暑苦しい男ですね貴方は……。私はこれからしっかりと成長するのでご心配なく。それと……リオンは諸事情により学院に通えなくなりました」
イヴの返答を受け、ふむと考え始める赤髪のハーフ虎人族、リヴァイスがポンと手を打つ。
「分かった。お主も色々あったのだな、残念ではあるが仕方がないな。ガハハ、まあそのうち機会があればまた会えるであろうよ」
「ズケズケと踏み込んでくる癖にそういう所は空気が読めるんですねアナタは……」
「ぬっ?俺は風魔法は不得手なのだがな」
微妙にズレた返答にイヴは呆れながら、何でもないと話を断ち切りスタスタと歩いて行く。
リヴァイスは首を傾げるが、特に追及する事も無くイヴの後ろを付いて歩く。
正門を抜け中央広場にはクラス分けの表示がされており、イヴとリヴァイスは同じクラスだった。
各クラスは成績順で決まっていると事前に学院長に聞かされていたが、それでもイヴは隣の男を見ながら辟易した表情を見せた。
(はぁ……なぜこんなゴリラと同じクラスなんでしょう。まあそもそもリオンが居ないこの学院には既に何の魅力も感じませんが……私は早く強くならないといけないんです!こんな所で時間を取られる訳にはいかないんですよ!)
決意を再確認し、指定されたクラスまで行きガラガラと扉を開けると既に居るクラスメイトの視線が集中する。
中には20人程がいるが、殆どが人族の男女だ。
残りはエルフ族や獣人族が数人見受けられる。
亜人族が単純な興味や関心で見ているが、残りの人族は興味関心が3割、侮蔑や嘲笑など負の感情が7割だ。
入学すればどの種族であれ平等だという話だが、そういう方針と言うだけで貴族なども多いこの学院では完璧に守られてはいないのだろうとイヴは達観しながら考えていた。
隣を見るとゴリラも特に気にした様子も無く自分の座席の位置を確認していたので、自分も確認してさっさと席に着いた。
すると先程様子を伺っていた亜人族の中の2人が話しかけてきた。
「ねえねえ貴女、受験の時凄い魔法使ってた子でしょ〜?私ね、エリーゼって言うの、よろしく〜」
キラキラと輝く金髪に空色の瞳を携え、太陽の様なポカポカと暖かい笑みを浮かべるエルフ族の美少女エリーゼ。
「僕は見て分かると思うけど羊人族だよ。羊人族のフェルト、よろしくね」
少し癖のある淡い桃色の髪にくるんと丸まった白角が愛らしい美少女フェルト。
2人から突然話しかけられて驚くイヴだが、しかしイヴは現在話し掛けられた以上の衝撃を受けていた。
最初は顔に向けていた視線も今では彼女達の胸部に釘付けだった。
見事に実るたわわな果実が4つ、着席しているイヴの目の前の全てを支配していた。
「えッ⁉︎デカッ‼︎あっ、いえ、えぇぇぇ……よ、よろしくお願いします、私はイヴです。ち、ちなみにですが、エリーゼさん、フェルトさん、お二方はお幾つでしょうか?」
何故か挙動不審なイヴに2人が不思議そうに首を傾げる。
「えぇと〜私は15歳だよ〜」
「僕も15歳だね。イヴさんは何歳なの?」
「へ、へぇ〜私も15歳なので、お、同い年ですね……。これは、種族の違いなのでしょうか……帰ったらマリーさんに聞いてみましょう」
内心の衝撃を完璧に隠せたと思いながら返答し、後半は2人にも聞こえないくらい小声で帰宅後の方針を決める。
ちなみに魔法学院は15歳から入学出来るが年齢制限に上限は無いので中には凄い歳上も在籍している。
しかし種族によって見た目と年齢が一致しない者も居るので気にしないものの方が多い。
基本的にエルフ族やドワーフ族などの長命種。
人族や魔人族の短命種に分けられる。
人族は世界人口で最も多い種だが戦や飢饉、疫病など様々な問題が発生する脆弱種でもあるので平均寿命として見ると短命なのである。
魔人族に関しては過去キマイラの血が交わった事により、魔人族の血がキマイラの血に負け身体が耐えきれず死に至る事が短命である理由だったが、現在ではキマイラの血が薄まった事により少しずつではあるが平均寿命も伸びて来ている。
魔人族の血に関しては他種族には公にされていないので知る者は限られている。
ちなみにエルフ族は平均でも500年。
ドワーフ族は200〜300年。
獣人族は種が多くバラつきがあり100〜300年。
人族は70年。
魔人族は50年。
その後も少なからず衝撃が残っていたイヴも落ち着きを取り戻し3人仲良くお話ししていると突如無粋な声が割り込む。
「やれやれ、汚らわしい亜人共と同じ空気を吸っていると思うだけで吐き気を催してくるよ」
部屋中に聞こえる様に話す人族の男。
エリーゼとフェルトはピクリと反応してチラリと視線を向けるがイヴは全く気にした様子も無く2人に話し掛けるが、その2人が他に意識を持ってかれている事に気付き首を傾げる。
「どうしましたか2人とも?何かありましたか?」
意識を戻された2人はイヴの言葉にポカンとしていたが直ぐに苦笑混じりにエリーゼが口を開く。
「イヴ、今の聞こえなかったの〜?」
「ん?今の?むむ…………あぁ、なるほど!2人が何を気にしていたのか分かりましたよ。もちろん、彼の頭の悪い発言は私も聞こえていましたが、それだけですよね?わざわざ相手にする価値も無いと思うんですけど?」
ポンと手を打ち納得するイヴが可愛らしく小首を傾げ問い掛けると2人は、「えっ?えっ?」、と困惑する。
しかしすぐ慌ててイヴの発言を止めようと言葉を発しようとするが、その前に怒声によって妨害されてしまう。
「薄汚れた田舎者の亜人が、僕を誰だと思ってるんだ!!!!」
取り巻き多数が、「そうだそうだ!」、「貧民が!」、「汚らしい!」などなど様々な罵声が飛び交うがイヴはチラリと視線を向け、ため息を吐きながら仕方なくといった態度で立ち上がる。
「はぁ〜……バカな事言わないで下さい、貴方達なんて誰一人として知りませんよ。自己紹介をした訳でも無いですし、そもそも貴方達に興味もありませんからね。私は今この2人のおっぱ、ゴホン、2人と友好を深めている最中なんですよ。叫びたいならお外に行ってやって下さいよ。ほら今日は良い天気ですよ〜」
イヴの左右に居る2人は頭ひとつ分小さいイヴの袖を引っ張り、「ちょ、ちょっとイヴ、ヤバいって!」と囁いてくるが言葉より左右から迫る巨大な胸に意識が向く。
むぅ、と小声で唸って巨大な胸を観察するイヴだが再び響く喚き声に不機嫌さを隠さず視線を動かす。
「フン!この僕を知らないとは本当にクズだな!なぜ僕が貴様の指図を聞かなければならないのだ!」
「もう、貴方は本当に面倒臭い人ですね……。名乗るなら早くして下さいよ……まあ貴方の事なんて覚える気はありませんけど、それに……ん?おや?んん〜?あぁ〜〜その顔、思い出しましたよ。確か試験の時リオンの魔法で気絶していた中の1人ですよね〜ふふ」
思い出したと言われ得意げに胸を張る男だが、次の瞬間には額に青筋を浮かべていた。
イヴは既に対応すら面倒臭くなっており今は当時の実技試験でのリオンの勇姿を思い出し幸せ一杯の状態であり、目の前の男共は今後全て無視するつもりだったが、そうもいかなくなった。
「ク、クソがァァァ!!!あんな低レベルの魔法で僕が気絶する訳ないだろうが!!!次会ったらあんなゴミクズ、僕が叩きのめしてやるよ!!!」
バックグラウンドミュージックと化していた取り巻きと1人を除いてこの教室にいる誰もが苦し過ぎる言い訳だと感じていた。
その除いた1人はと言うと、全身をプルプル震わせてエリーゼとフェルトが心配そうに声を掛けているが耳に入っていないのか俯いて何かをブツブツ呟いていてとても不気味であった。
「あ、あなた、が?リ、リオンを?あなた程度の人が?リオンを?えっ?どういうこと?リオンをバカにしたの?私のリオンを?そう……私のリオンをバカに……ふふ、ふふふ。許さない……」
顔を上げ両手に魔力を練り上げながら男に近付くイヴだが、数歩歩くと目の前に突如壁が現れた。
「そこな男、戯れはそれくらいでもう良かろう。お主が貴族なのは分かったが、魔法学院に在籍している以上皆平等だ。それに異を唱えるのであればそれはこの学院長の考えを否定する事と等しいと理解できているのか?こんな公に堂々と学院の方針を批判するのは分が悪かろう」
目の前の壁、否ゴリラ、否々リヴァイスが遮り男に語り掛けると貴族の男はぐぬぬと歯軋りし、亜人風情が!と捨て台詞を吐き椅子に乱暴に座る。
「ねぇねぇ、ゴリラさんゴリラさん、邪魔なんですけど〜退いてもらえませんかぁ〜?」
「ぬっ?イヴも落ち着かんか。やれやれ、あの男は俺にもっと感謝してほしいものだな。暫く見ない間に随分と性格がリオンに似てきたな」
ドス黒いオーラを身体に纏わせながら怒りが臨界点を超えそうだったイヴだが、リヴァイスのセリフを聞いた途端嘘の様に怒りが消え身体をくねらせる。
ドス黒いオーラも消え心なしかキラキラ発光してる。
「そ、そんなリオンとお揃いだなんて……ゴリラさんもたまには良い事を言うんですね〜。仕方ないですね〜今回は特別に許してあげましょう。でも次邪魔したら承知しませんからね〜」
「お、おぅ。それは、何よりだ。それと俺はゴリラでは無くリヴァイスという、そこな娘達もよろしくな」
イヴは既に自分の世界に入っているので放置しリヴァイスはエリーゼとフェルトに間違いを訂正しつつ自己紹介をした。
その直ぐ後に教師が入って来たので一旦各々の席に座る。
(ふむ、あれは危なかったな……。あの殺気は冷や汗ものであったな。もう少し出るのが遅かったらあの貴族の男、串刺しか爆発で木っ端微塵だったんじゃなかろうか。本当少し見ない間に変わってしまったものだ)
未だ自分の世界に入っているイヴにチラリと視線を向けながら止まらない冷や汗を流し続けるリヴァイスだった。
イヴ自体は殺す気など無く本気の脅し程度で止めるつもりであったがリヴァイスはそれに気付く事は無く勘違いが加速していく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[とあるエルフの日記]
今日は待ちに待ったリンドブルム魔法学院の入学式でした。
楽しみ過ぎて早く目が覚めちゃったので少し街をぶらつきながら魔法学院に行きました。
正門を入ると後ろから声を掛けられ、振り向くと羊人族のフェルトが手を振りながら駆け寄ってきました。
彼女とは実技試験の際に私の後ろの番号だったので、その時に仲良くなった子です。
薄ら桃色がかった髪に丸まった白角がとても可愛い子です。
フェルトとはすぐに意気投合して入学式前にも何度か会ってお茶会も数回して、今では1番の友達と言えるでしょう。
そんなこんなでフェルトと一緒に中央広場に行きクラス分けを確認すると同じクラスだったのではしゃぎました。
あとその中に1人ずっと気になっていた人が居たので更にテンションが上がりました。
でも1番会いたかった人はどのクラスにも居なくて、ちょっと残念に思いました。
教室に入りフェルトと少し雑談をしていると、ガラッと扉が開き新たに2人入ってきました。
1人は赤髪の大きい虎人族の男の人、見た感じ混血かな?
もう1人は私が会いたいと願っていたひとり。
黒曜石みたいな光沢を称えた2本の黒角にキラキラと輝く銀髪に透き通る程に磨き上げられた様に綺麗な紫紺の瞳、不健康では無い分水嶺を保つ美しい白磁の肌をした魔人族の美少女だ。可愛い。
私達エルフ族は世間一般では眉目秀麗と言われ、時には違法奴隷などの犯罪に巻き込まれる事もあるのだが、彼女はエルフとはまた違った美しさをしており柔らかい中に荒いながらも芯の通った刃の様な鋭さを感じた。それもまた良い。
彼女が着席したのを確認すると同時にフェルトと一緒に突撃した。
最初は何故か挙動不審になってたのが不思議だったけど、少し話すと緊張が解れたのかニコニコと此方の話も彼女、イヴの話もお互いにするようになった。
礼儀正しいのか少しお堅いのか私とフェルトは「イヴ」と呼ぶのにイヴったらまだ「エリーゼさん」や「フェルトさん」なんて距離がある呼び方するんだもの、困ったものね。そんな所も可愛い。
イヴ自身、時間が経てば問題無いと言ってるが私の勘がそれは嘘だと看破してるわ。
徐々に、だけど強引にでも改めさせてやるんだから。
それからしばらく話し込んでいて丁度良いタイミングでもう1人の会いたい人の事を聞こうとした時に邪魔が入ったのよ。
私とフェルトは視線を向けたんだけどイヴったら気にせず話し続けるもんだから少しビックリしちゃった。
邪魔してきたのは人族の貴族の男とその取り巻き連中。
平等を謳う魔法学院と言えどやはり全ての規制は難しいらしく、こういう人族至上主義みたいな輩が入ってくるのよね。
まあそんな奴等はどうでもいいんだけど、その後のイヴの行動には驚いちゃった。
腐っても貴族で問題を起こせば学院外で仕返しなどの報復があるのでみんな極力穏便に済まそうとするのにイヴったらお前なんか知らん邪魔すんなーとか言って煽りまくっちゃうんだもん。そんな姿も可愛かった。
その後もイヴは呆れた様子で渋々応対していたんだけど突然手をポンと打って納得顔を浮かべたの。
というのも彼等彼女等は私の最も会いたかった人、リオンさんという名前ゲット!やったぁ〜、……おほん、そのリオンさんが実技試験の時放った魔法の被害者だったらしい。
私とフェルトの実技試験は最初の方に終わっていたので遠くで見学していたから気絶はしなかったけれど、あの魔法は本当に凄まじかったわ。
私の郷の族長達が束になって放つ儀式魔法でも敵わない威力の魔法を個人で放ったのはビックリし過ぎてトキメキが止まらなかったなぁ。
おっと話がズレちゃった、それで変な覚え方をされた貴族の男は誰にでも分かる負け惜しみをピーピー言うもんだからフェルトと一緒に呆れていたら私達の間に居たイヴの空気が突然変わって重苦しい雰囲気になって何かブツブツ呟き出したのよ。
あれは今思い出しても怖かったわ。
それでそのままイヴが歩き出すから止めようとしたら目の前にゴリラ、違った〜リヴァイスさんが遮って止めてくれたのよね。
リヴァイスさんが何とかイヴを宥められたけど、今度はリオンさんと似てると言われてクネクネした動きをしながら悶え始めたわね。
とても可愛かったわね。
イヴとリオンさんはどういう関係なのかしら。
今度聞いてみようと心のメモに記載しておく。
その後先生も来て今後の流れを説明して今日は解散になった。
折角早く終わったから帰りに近くの喫茶店に行こうという話になり、私とフェルト、イヴ、あとゴリラ、違った〜リヴァイスさんの4人で行ったわ。
とても有意義な話が出来て満足〜。
ただ、リオンさんの話になるとイヴは本当に一瞬とっても悲しい顔をするもんだからあまり触れちゃいけない話題なのは理解したわ。その顔も良かった。
これはもっともっと仲良くなった時にとっておきましょ〜。
筆ペンを置き日記を閉じ、ふ〜と息を吐き伸びをするエリーゼ。
「ふふ、イヴはとっても可愛い子だな〜。あの感じだと一応試験でも見てたけど実力も相当高い筈だよね〜。師匠に聞いてた情報と一致するね。ふふ、あぁ〜今後が楽しみね〜」
天井を見つめ今後の展開を妄想しながらクスクスとひとり笑い続ける。
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[とある羊人族の日記]
今日は待ちに待った魔法学院の入学式だ。
何故か今書き出しが一緒だ!と意味不明にも叫びたい気分に駆られたが気にしないで次に行こう。
楽しみだったので早めに魔法学院に向かうと僕の友人、エルフ族のエリーゼも同じ気分だったらしく正門で発見。
声を掛け一緒のクラスに共に歩いて行く。
入学式前にも聞いていた事だがエリーゼには気になる人が2人居るらしく、その内の1人は同じクラスだと言うのでその子が来るのを話しながら待つ事にしたのさ。
暫くするとデカイ虎人族の男の人と一緒に小柄の可愛らしい魔人族の女の子が入って来て、エリーゼの待ち人がすぐにその子だと気付いた。
彼女、イヴは会話をする度にチラチラと私達の胸を見ると有り得ないモノに会った様な驚愕の表情を浮かべていたよ。
始めは僕もエリーゼも分からなかったが、いやエリーゼは最後まで分かってなかったっぽいけど僕ら獣人は視線などの感覚には敏感だからね。
チラリとイヴを見るが、女の僕から見てもとても整っていて羨ましいくらいの美少女だ。
しかし、神は二物を与えないと獣人の間にも言われている様に、イヴには………胸が無かった。
ゴメンよ、さすがに僕でも擁護は難しい。
同い年だと聞いた時は失礼ながら驚愕したもんさ。
いやまあ外見はとりあえず置いておいて、内実は流石魔人族と納得してしまったよ。
僕自身、魔人族に会ったのは初めてだったけど今や希少種族の魔人族は総じて魔力や身体能力が高いと言われていたので実際間近で見れたり友人になれたのは僥倖だったと言える。
ただ、それを抜きにしても人族の貴族に対する対応などを見ると恐れ無しと言うか、誰かを参考にしている様に感じてしまうね。
リオンという人を侮辱、ではないと思うが負け惜しみ批判された時の殺気は本物だった。
虎人族のゴリラ、違った、確かリヴァイスさんが間に入ってくれなかったら教室が血の海になっていたのではないだろうか……。
リオンという人に関しては冗談でも負の感情を言うと彼女の逆鱗に触れるみたいだね。
その後4人での喫茶店では既にイヴはニコニコといつも通りの可愛い美少女という感じだったのでその差異が僕にはとても恐ろしく感じてしまったよ。
フェルトは筆ペンを置き、ふぅと息を吐き机に突っ伏した。
「いや〜未だに思い出すと背筋がゾッとする思いだよ。イヴにリオンさんの話題は慎重にしないと大変な事になりそうだ。そういやこの前知り合ったゴリラ、違った……リヴァイスさんと同じ虎人族のコクウさんにイヴの事聞いてみようかなぁ。イヴは冒険者もやってるって言ってたから接点があるかもしれないしね。いやはや、これから面白くなりそうだね〜」
ニコニコしながら明日以降の日々に思いを馳せる。
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