第23話 再邂逅
朝食を済ませたイヴとマリーは身支度を終え、家を一緒に出る。
何気ない会話を楽しみながら歩く事数分。
職員用の家からというのもあって早々にギルドに到着し、マリーと一旦別れる。
彼女が制服に着替え出でくる間、イヴが依頼書を物色していると受付所から声をかけられ、近付くと制服姿のマリーが居た。
仕事着に着替えただけなのに立ち姿や表情まで違って見えるから不思議だ。
「お待たせ。早速今なれるジョブを確認するからあっちの部屋に行こうか」
マリーに案内で促され入った部屋の中心には台座が置かれ、その上には球体の水晶が鎮座していた。
水晶から発せられる神聖な空気が部屋全体を満たしており静謐な時間が流れていた。
その場の雰囲気を堪能しているイヴにマリーが声を掛ける。
「じゃあ、説明するわね。先ずはあの中心の水晶に魔力を流す事からね。それで現時点でなれるジョブが羅列されるわ。その中から自分がなりたいジョブを頭の中で思い浮かべる事で冒険者カードが連動して選択した職業が刻み込まれるわ。その後は水晶がステータスを表示するから確認してもらって、特に問題無ければ完了よ。それじゃあさっそくやってみましょうか。私は外に出ているから何かあれば声掛けてね」
「分かりました、ありがとうございます」
一通りの説明をした所でマリーが外に出て行く。
個人のステータスは機密情報を多く含み基本的には1人で行う事を推奨しているらしい。
そんな中、ひとり残されたイヴは早速トコトコと水晶がある場所に行き、恐る恐る触れ魔力を流す。
すると水晶が白く光を放ち、目の前にディスプレイが出現し教えられた通りにジョブ名が羅列される。
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[見習い剣士]
[見習い魔法士]
[見習い拳闘士]
[剣士]
[魔法士]
[拳闘士]
[魔剣士]
[魔拳闘士]
[祈祷師]
[魔獣士]
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羅列された数が多いのか少ないのかイヴには分からなかったが、視線を釘付けにするには十分過ぎる名前のジョブがあった。
「へぇ〜[魔獣士]はとても魅了ですね。まさに私の為にあるようなジョブと言えるでしょう、ふふん。将来的な目標にはありですけど、今なる事はないでしょうね。そうすると……うん、これにしましょう。あとは、えぇと思い浮かべると言ってましたね……。ん〜……こうでしょうか……おぉ!凄いです!大分下の方のジョブだと思いますが感じられる程には補正値が掛かるみたいですね。それとも私が弱過ぎるから、でしょうか……まあ理由はどうあれこれでジョブの選択は完了ですね」
ジョブを念じ、承認された段階で身体能力の補正が掛かり、力が漲る高揚感にイヴは頬を緩め目標に近付いていく喜びを噛み締める。
ジョブが決まると羅列されていた画面が消え、次にイヴのステータス画面が現れた。
「これは、いつもリオンが見てたモノと一緒なんでしょうか?……私は初めて見ますけど、ちょっとドキドキしますね。どれどれ」
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[イヴ]種族名:魔人族
[Lv.27]ジョブ:魔法士
[土魔法Lv.5]
[火魔法Lv.2]
[水魔法Lv.2]
[闇魔法Lv.1]
[光魔法Lv.1]
[身体強化Lv.5]
[剣術Lv.2]
[拳術Lv.1]
[闇属性耐性Lv.3]
[???]→聖■■■の卵。神の裁定。■■の■■。
【本人含め常時隠蔽】
称号
魔物性愛
創世神の加護【常時隠蔽】
合成獣の呪縛
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初めて見る自らのステイタスに少し興奮するイヴだったが……。
「はっ?えっ?なに、これ……。ま、魔物性愛?何ですかコレ!!私はリオン以外の魔物なんて好きじゃありませんよ!!失礼な称号ですね全く!称号取消し出来ませんかねコレ……おや?合成獣の呪縛……合成獣……?ハッ⁉︎こ、これは!あぁ!!えへ、えへへ、嬉しいな、リオンのモノって感じで幸せです、いつから持っていたんでしょうね〜ふふ」
ジョブを確認した後下に読み進めていき称号の所で目を見開き、魔物性愛の怒りが噴き上がったが一番下の項目を見ると秒単位で怒りが霧散し、すぐ様頬を緩めクネクネと喜びを表現し始める。
他者が見ていたら完全にドン引きな光景だが本人は自分の世界に入って気付かないだろう。
指摘された際の彼女の言い分としては部屋に誰も居ないのをしっかり確認しているからこその姿だったかもしれないが、その言い分を使う日はいつになるのだろうか。
その代わり今回はイヴには現時点の実力ではどれ程努力しても感知出来なかったので仕方が無いだろう。
そんな特別な存在は後方から呆れ声でイヴに話し掛けた。
「やれやれ、そこは僕からの加護の方が貴重で嬉しいものだと思うんだけどな〜。他の人なら泣いて喜び拝んでいる所だよ?目にも留まらないとか幾ら寛大な心の持ち主の僕でも意外と傷付くんだよな〜」
「ッッッ⁉︎だ、誰ですか⁉︎って、えッ⁉︎ガ、ガイア様⁉︎何で……と言うか加護って……あっ⁉︎リオンの加護に見惚れていて気付きませんでした!」
振り返ると以前出会った全てが真っ白な女の子、の外見をした創世神ガイアの分身体がジト目でイヴを見ていた。
「いやいやいや、リオンのは加護じゃなくて呪縛だからね。はぁ……でもそれにしては〜……へぇ、なるほどなるほど、あんなにピーピー泣いてたのに不自然な程立ち直りが早かったのはそういう事ね〜。リオンくんもこれは予期していたのかな?まあ、それはないか」
ルンルン気分のイヴがガイアが話す事に顔色が悪くなりあわあわと暴れ出す。
「な、なな、なんでそんな事知ってるんですか⁉︎リ、リオンから聞いたから知ってますよ!それは、ぷらいばしーの侵害って言うんですよ!」
「アハハハハ!良く知ってるねイヴちゃん。でもね、ひとつ良い事を君に教えてしんぜようぅ!プライバシーの侵害とは人族同士の間でのみ適応される事で神の僕には全くこれっぽっちも関係ないのさぁ!!しかもこの世界ではほぼ適応されない権利と言えよう〜アハハ」
両手を広げドヤァと後光が差しまくってる創世神に数秒前まで慌てていた筈のイヴは冷めた視線を向け、リオンの得意技を使用する事にした。
「それで本日はどの様な理由でいらっしゃったのでしょうか?ちなみにリオンなら居ませんよ?」
まだぎこちないスルー技を使用するイヴにガイアは表現過剰な程ショックを受けへなりと床に倒れ込む。
「酷い!段々対応もリオンそっくりになってきてる!僕は神なのに!加護まで与えた僕にこの仕打ち、酷いぞ!普通なら天罰待った無しだぞ!」
「えっ?リ、リオンとそっくり?ふふ、ふふふふ、えへへへへ、リオンとそっくり、そっくり、えへへ」
幸せな自分の世界に浸るイヴに忘却された神は純白を通り越し徐々に透明になっていきそのまま消えーーーー。
「消えるかボケー!話しを聞けアホンダラー!」
勢い良く立ち上がりイヴの両肩を掴みガシガシ揺さ振る創世神に現実に引き戻される。
「うわんうわん〜何ですか何ですか〜ぐらぐらしますよ〜」
「僕が加護を与えたってのに何も反応しない君が悪いんだぞ!こうしてやるこうしてやるこうしてやるー!天罰だ天罰だ天罰だぁぁぁー!!」
尚もガシガシ揺さ振るショボイ天罰を執行するガイアを段々面倒臭くなってきたので仕方無く対応する事にした。
「えぇと〜有り難いんですけど、何故私に加護を与えてくださったのでしょうか?」
元々目の前の神はリオン目的で現れたので自分に執着、ましてや加護を授かる様な存在では無いと理解しているのでこれは当然の疑問である。
その疑問を聞きガイアは普段通りの笑顔で何でもない事の様にヘラヘラ応える。
「何でってそりゃ〜リオンに嫌がらせしたかったからかなぁ。直接干渉は無理だけど、間接的な干渉なら頑張れば何とかなるからね〜。でも色々大変だったけど結果は大成功だったし僕は大満足だよ〜」
「えっ?リオンに嫌がらせとか聞き捨てならないんですけど、それと私の加護と何の関係が……?それに大成功ってリオンに何をしたんですか⁉︎」
イヴの怒気が増していくが、ガイアは特に気にした様子も無く嬉々として語る。
「んんん〜?アハッ、何言っているのさ、イヴちゃん。君自身の手でリオンを真っ二つにしたじゃないか〜。アハハハハ、あれは笑ったよ〜っておわぁ、危ないなぁ、何するのさぁ」
声だけ慌てているが、行動では全く慌てた様子も無く、その場からひらりと飛び退いた。
轟音が響き、先程ガイアが居た場所の地面からは土の槍が飛び出していた。
「あ、あれは貴女の仕業だったんですか!私が、私がどれだけ悩み、悲しんだと思ってるんですかァァァ!!!」
怒気が更に増し、睨み付ける眼には敵意が爛々と輝き徐々に魔力が高まっていく。
その様子にも関心すらないガイアはニコニコ貼り付けた笑みを崩さず指を左右に振る。
「チッチッチ〜、確かに君に加護を与え、リオンに嫌がらせを画策したのは認めるし、それが間違ってた事だとも僕は思ってないよ、何たって僕は神だからね。でもね〜あの結果事態はねぇ、僕じゃなく君が望んだ事なんだよ〜。ぷぷ、アハハハハ、その表情面白いね〜折角の可愛い顔が台無しだぞ〜」
「なに言って……わ、私が、あれを、望んだ……?貴女は、な、何を、言ってるの?そんな事私が望むわけない!嘘です!!ッッッ⁉︎」
話す内容の衝撃がイヴの憤怒を軽く追い抜き一瞬呆然とするものの直ぐに怒りがマグマの如き勢いで湧き上がりガイアの言葉を否定するが、その間中イヴはずっとガイアを視界に捉え逸らしていなかった、にも関わらず、刹那、ガイアの姿が幻影の様に霧散した。
「えぇ〜本当に?君が望んだ事でないと何故言える?今憤慨しているのは何故だと思う?僕の言葉?僕の態度?本当にそうかな?君はあの時何を想い誰に叫び誰と重ね誰に縋った?さあ思い出してごらんよ、君が望んだ事じゃないと本当に言えるのかな」
目の前に居たガイアが突如消えたと認識した瞬間には背後から耳元に囁かれる今迄の雰囲気を一変させる程の無機質で抑揚も無い、何の感情も無い音。
今までの雰囲気に流されていたイヴだが、心胆を寒からしめ全身が凍り付いた。
「わ、わたし、は……そ、そんな、こと……」
イヴはその先の言葉は紡ぐ事が出来なかった。
凍り付いた空気を作ったのはガイアであり、破ったのもやはりガイアだった。
先程の雰囲気に戻りニコニコとイヴの前に回り両手を握る。
「アハハ、ごめんね〜怖い思いさせちゃったね〜。お詫びと言っちゃなんだけど、そんなイヴちゃんに僕から良い情報をあげよう〜。イヴちゃんは不思議に思わなかった〜?まあそんな余裕すら無かったと思うけど〜、あの時点だと自分が最愛のリオンを殺したと思ってたよね〜?それなのにイヴちゃんの心は壊れていないし立ち直るのも早い、不思議だよね。人を殺す事にあんな拒否感を持っていたイヴちゃんがまさかこの世界唯一の家族を殺そうとしたにも関わらずね。勿論イヴちゃんが強い子だったと仮定する事は出来るけどここ最近のイヴちゃんを見るとそんな事はないからね、君は弱い、弱過ぎてリオンの足を引っ張ると思うその考えすら失礼な程弱い。それは身体にしろ心にしろ脆弱と言わざるを得ない程、ね。それにいくら後日リオンが生きてるって知っていても自ら手を下した事実は決して無くならない。多少は僕も関与したけど今は脱線しちゃうから無視するとして〜。うん、それなのに何故君の心は壊れず無事なのか……それはね〜イヴちゃんの心、つまり精神体にリオンの光の障壁の残滓が未だに全体を覆ってるから多少の精神攻撃なら問題無いくらいに弾くんだよね〜。だから心が完全に割れる前に修復して維持していて早く復活出来たんだよね〜。まあそれでもあくまで魔法残滓だから、リオン自身も恐らく知らないだろう事だけどね。それで言うなら今回最大の功労者はマリーって名前の狐人族が献身的に癒したからなんだけどね〜」
胡散臭いモノを見る目をしているが、話題がリオンの事になると無条件に信じる残念な少女の頬は多少緩んでいた。
更に今回一番お世話になったマリーの名前も出たので頬の緩みも普段の2割増になったのは仕方ない事だろう。
ガイアがその表情を弄ろうと思い口を開きかけた瞬間、ガイアは後方に瞬間移動していた。
何事かとイヴが訝し気に思うが、そんな暇も無く状況が動き出した。
先程まで目の前に居た創世神は瞬間移動でもしたかの様、と言うか実際したんだろうとイヴは思った。
現在ガイアはかなり遠くに移動し、創世神が先程まで居た地面には5本の轍が出来ていた。
「いや〜やっぱりさっきのでバレちゃったか〜。いくら創世神の僕でも君だけの気配だけが感知出来なかったから本当に死んでしまったのかと心配したよ〜。でも、ん〜……おや?確かに死んではいない、けど今の君は生きてもいない様だね。アハハハ、その事を知れただけでも顕現した甲斐があったというものさ。さてと、イヴちゃんそろそろお別れの時間になってしまったよ。でも悲しむ事はないぞ〜、僕はまた隙を見て会いに来るからね〜。それじゃあね〜」
急に捲し立て返答を待たずに徐々に透明になっていく最中、ガイアの頭上の空間が捻れ巨大な漆黒の前脚が見えたと思ったら次の瞬間にはガイアも前脚も消えていた。
残ったのは唖然としながらも嬉し涙を流すイヴと部屋を縦断する爪痕だけだった。
ガイアが気になる事を言っていたが、今はそれよりも手紙の文字では無く実際にリオンの存在を確認した事に意識を持っていかれていた。
その後マリーと副ギルドマスターのサーシャが慌てて突撃してきて部屋の惨状を見て唖然としていた。
イヴはサーシャを見てピクリと反応したがそれに気付く者は居なかった。
「イ、イヴさん!これは、一体何があったの⁉︎この……これは爪、跡?いえ、そんな事よりイヴさん怪我は無い⁉︎大丈夫⁉︎」
マリーが駆け寄り身体に怪我がないかペタペタと触りイヴはこそばゆく身を捩る。
「大丈夫ですよ、怪我もしていません。ふふ、なんだかマリーさん、お母さんみたいですね」
マリーは安堵と同時にイヴのセリフによる羞恥で赤面するが、尻尾がぶんぶん振っているので満更でもなさそうだ。
そんなマリーを押し退けサーシャが声を掛ける。
「話しは終わりましたか、お母様?……オホン、さてイヴさん、早速この部屋の惨状の説明をしていただけますか?ちなみにここはギルドの他の場所とは異なり、とても頑丈な造りをしていますので本当であればどんな攻撃を加えようと傷ひとつ付かない筈なんですよ」
サーシャの口撃で撃沈するマリーを横目にイヴはどう説明するか考えていたが、疲労もあり徐々に思考を放棄し始める。
「(あぁ、もう色々あり過ぎて疲れましたし今は早く1人になりたいです。全部神様のせいにすればいいですかね……)……創世神様が現れて壊していきました。もういいですか?これ以上の説明は無いですし疲れたのでこれで失礼させて頂きます」
驚くサーシャの横をするりと抜け、歩いていると後ろから何かを叫んでいたが無視して部屋を後にする。
そのままマリーの家に戻り与えられている部屋のベッドに飛び込んだ。
「はぁ……ジョブを選びに行っただけなのに酷い目にあいました……。ガイア様……いえ、あんな所業を行う神なんて信仰の対象外ですから今後呼び捨てで構いませんね。私にはリオンが、リオンさえ居てくれれば何も……なにも……」
そこまで言いかけ徐々に尻すぼみになり、遂には口を引き結ぶ。
先程ガイアに言われた事がイヴの頭の中で延々と廻っていた。
『あの結果は僕じゃなく君が望んだ事なんだよ〜』、その言葉と高笑いが頭から離れない。
(私が望んだ?本当に?でもあの時、最後に殺された獣人さんとサーシャさんが重なって……。全然似てもないしなぜかも分からない、けど……)
イヴが言うサーシャとは同時期にリオンによって助け出された獣人で、ミスリル級冒険者の襲撃により命を落とした内の1人だ。
殺された中で唯一最後を看取った存在であり、死の間際でさえもイヴの今後を気にかけ、幸せを願ってくれた人なので少女の心に強く刻まれていた。
幸か不幸か魔法国家リンドブルムの首都リーヴァの副ギルドマスターの名前が同じサーシャだった事で、事ある毎に思い出し懐かしさや哀しさが幾度となく甦っていた。
「早く会いたいよ……リオン」
精神疲労で弱気になったイヴの呟きは静寂な空間に波紋となって広がり、やがて溶けて消えていく。
泣き出しそうになる顔をパシッと叩きイヴは勢い良く起き上がる。
「もう!ウジウジ考えるのはやめやめ!何か気晴らしでも……そうだ!マリーさんがお仕事から帰ってくる前にご飯の準備でもしましょう。いつまでもお世話になりっぱなしでは申し訳ないですからね」
パパッと立ち上がり夕食の支度を始めようとするが、食材のストックが全く無かった。
「マリーさん……自炊はしないのかな?まあ仕事で疲れてるんだから面倒臭いよね。先ずは買い出しからだ!」
まだ時刻は夕方頃だったので気分転換がてら食材を調達に出発した。
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[王都の噂話1]
街を行き交う人々、時刻は既に黄昏時だ。
冒険から帰ってきた者、これから冒険に発つ者。
店仕舞いする露店商や肉や魚のジュージューと焼ける香気をバラまき、客寄せをする屋台。
昼とは違い妖艶な色香を振り撒く女性達も目立ち始める。
人々は次第に1日の終わりを彩る美女や美食、美酒を求めて賑わいを増し、昼とは違った活気に色付いていく。
時間が経つにつれ話す声は大きく、遠慮が無くなり最近の王都に数多渦巻く小さな噂から大きな噂、都市伝説などのネタレベルまで面白おかしく様々飛び交う。
王都でも安い、早い、美味いの三拍子揃った庶民や冒険者行き付けの酒場でも当然の様に酒の肴として話されていた。
「なあなあ、知ってるか?紅蓮の竜人が魔法国家で目撃されたらしいぞ。なんでも魔法交配実験で生まれた生物兵器って話しだ」
「ああん?お前そりゃガセじゃねえのか?俺が聞いた話しじゃ紅蓮の竜人は帝国の人造兵器だって噂だぜ!」
「テメェ等はそんなガセに流されるなんてまだまだ情報収集能力がねえな。あの竜人はな、貴族が辺境で買い付けた奴で、へまやって貴族区で暴走したんだよ」
ベテラン冒険者3人が王都で暴れ回り忽然と姿を消した竜人の話に花を咲かせている、その隣では……。
「最近、初心者用ダンジョンに見慣れないレアモンスターが出るらしいよ」
「あぁ、僕も聞いた事あるよその噂。普段はゴブリンやコボルトなんかの弱い魔物だけなのに金色の毛並のウルフが出るんだよね」
「なんだよ〜知ってたのかぁ。じゃあさ、これは聞いた事あるか?なんと今はウルフ以外にも銀色に輝く蛇も出るらしいんだよ!」
「えっ……なにそれ、ただの迷い込んだ普通の動物じゃないの?」
「いやいや、最初聞いた時は俺もそんな反応になったんだけどよ、俺等と同じアイアン級冒険者が返り討ちにあって命からがら逃げ帰ってきたらしいんだよ。それによ、その銀蛇は3mくらいあるみたいなんだよな」
「へぇ、それなら暫くは他のダンジョンに行った方が良さそうだね。金狼も銀蛇同様に冒険者を返り討ちにしているらしいからね。その魔物が原因かは今の所分からないけど、行方不明者も増加している。まあそのうち討伐隊でも組まれて討伐されるだろうけどね」
新しい情報で今後の方針を決める新人冒険者達。
火の無い所に煙は立たぬと言われる様に酒の場の雑談だとしても活動領域内での噂であるのならば浅慮な行動をせず更に情報が集まるまでその場には近付かない事が生き残るコツの1つだ。
そんな噂話が王都を包むが、誰もが深く、重く受け止めておらず本当にただの酒の肴程度の思いしか抱いていなかった。
そうやって今日も夜が更けていく。
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