第4話 害虫駆除大作戦

 暴食の食いしん坊の為森を中を探索してから数時間が経過した。

太陽っぽい恒星が真上くらいから探索を開始しており、今は空が徐々に茜色に染まり始めていた。

ここまでの探索の成果をダイジェストにすると、数十種類の果物や野菜、キノコなどの菌類。

毒の有無関係無く採取した。

状態異常耐性は便利スキルだ。

異世界だと痛感するモノとしては動物を襲うサボテンっぽい全身剣山の様な植物。

毒胞子っぽい紫色の粉を撒き散らしながら二足歩行するキノコ。

トレントの様な木の魔物の枝に実った黒い林檎似の果実。

途中まで鑑定していたが、内容がショボ過ぎて時短の為全てを問答無用で採取した。

栄養バランスの偏りを無くす為に動物類も狙ってみた。

こちらも植物類同様異世界バージョンになっていた。

角が生えていて高速で動くリス似の小動物や三ツ目のイノシシ、手が4本あるサルなどなど、若干前世と違うが食べれば一緒だと思いエンカウントした動物は殆ど全てを狩り尽くし、結構な数確保する事が出来た。

帳が下りるまで、そこまで時間も無いので次の目的でもある寝所を探す事にした。

最初は木の上でも良いかと考えていたが、食糧調達中に出会したやたら素早いウザキモ虫が空間真っ黒になる程わちゃってたので断念した。

そんな理由もありつつ、暫くテクテク歩いていると洞窟を発見する。


(やっと見つけた!!早く休みたいが、洞窟前にバラバラ骨が転がってるんだから先客がいらっしゃるなぁ。[気配察知]あぁ、1体か……ん〜俺よりデカイな。こりゃ奇襲して瞬殺に限るな)


 そう考え、探索中に覚えた[身体強化]を使用してリス似の魔物[タイニースクオロル]の首を落とし洞窟前に投げる。

気配を消して洞窟上の壁にへばり付き息を殺し待機して待つ事数分、唸り声と共に洞窟から姿を現れたのは体長3m程のクマみたいな魔物だ。

前世と違い腕が4本ある。

この世界の多腕率高いなと思いながら餌に食い付くまで根気強く待つ。

周囲を警戒しながらも飢えているのかすぐに噛み付いた。

その一瞬の隙をつき、狙いを定め勢い良く頸椎の隙間を切断する事に成功した。

ヒトと違い頸椎の太さも強度も段違いだったので使用した右前脚の爪が全て折れてしまった。


[レッサーキマイラはLv.2に上がった]

(本当にゲームみてえだな。魔物を倒すと上がるのか生き物を倒すと上がるのかはまだ分かんねえがその内進化とかも出来るのかね)


そんな事を考えていると蛇尾ちゃんにケツを噛まれた。


(お腹空いたよ〜。早くご飯にしようよ〜)

(分かったから事ある毎に俺のおケツ噛まないでね。蛇尾ちゃんのお陰で状態異常耐性上がっちゃうからね!!)

(えへへ〜。そんな褒めないでよ〜照れちゃうよ〜)

(流石幼女……皮肉も通じないか……。というか道中でイノシシやらサルやら散々食ったのにな、この大食い幼女め……)

(何か言った〜?)

(いえ何も。さぁ夕食の為にコイツを解体するか!!)


 早々に会話を切り上げ、先程のクマを解体していく。

鑑定したら[フォレストベアー]と出た。

森のクマさんね。そのまんまやん。

調理をする間、待ち切れない蛇尾ちゃんに頭や腕などの部位をあげると嬉々として食べていた。

生でも良いけど、どうせなら焼肉が食べたかったので道中覚えた火魔法で焼いていく。

ちなみに、火魔法以外に水魔法と風魔法を覚えた。

土魔法は適正が無いのか存在しないのか覚えられなかった。

良い具合に焼けてきた頃、周囲は闇に包まれていた。

夜目が効くのは猫目だからなのかと考えなら前菜を食べ終えた蛇尾ちゃんに焼肉を提供しながら自分も食べ始めた。

調味料が無いので素材の味オンリーだ。

そのうち散策がてら調味料になりそうなモノを採取しようと誓った。

熊肉はとても野性味溢れる味だった。

黙々と食べ、その際にクマの毛皮を布団にするべく内側を火で炙り殺菌する。

洞窟内部は、クマが居た事もあり中は結構な広さがあったので明日からここを拠点に改築していく事に決めた。

毛皮の上に寝そべり、ステイタスと唱え本日の成果を確認する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[名無し]種族名:レッサーキマイラ

[Lv.2]

[剣術Lv.6]

[短剣術Lv.8]

[槍術Lv.4]

[斧術Lv.4]

[棍術Lv.5]

[拳術Lv.7]

[弓術Lv.10]

[投擲Lv.9]

[威嚇Lv.5]

[威圧Lv.5]

[状態異常耐性Lv.8]

[気配察知Lv.5]

[精神分裂]

[念話]

[鑑定Lv.2]

[魔力操作Lv.2]

[魔力制御Lv.2]

[火魔法Lv.1]

[水魔法Lv.1]

[風魔法Lv.1]

[身体強化Lv.3]

部位獲得能力

[レッサーデーモンLv.1]色欲

[アルビノヴァイパーLv.1]暴食

[ーーーーー]

[ーーーーー]

[ーーーーー]

[ーーーーー]

称号

[人類の天敵]

[殺戮者]

[強奪者]


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 この世界には魔物が存在している。

それに称号に人類の天敵とある様に、この世界にも人間かそれに似た種族が存在している事になり、必然的にギルドなどの大規模商業施設があり魔物を狩り、糧にして生活をする者が居ると考えた方がいいな。

俺が魔物の時点で討伐対象待ったなしという感じなので、明日からは己を鍛えるしかないな。

色々試したい事もあるので、今日は早めに寝る事にした。


 翌日空が白み始め、陽が顔を照らし眩しさと不快感で目を覚ます。

ニャーと欠伸と伸びをしつつ、洞窟の外に出ると朝露でキラキラと輝く木々を鬱陶しそうに眺めながら水魔法で全身行水をする。


(冷たいッ⁉︎えっ?なにッッ⁉︎⁉︎)


突然の事で蛇尾ちゃんがパニックに陥る。


(悪い悪い、声掛けるの忘れてた)

(もう〜!!急に水掛けたらビックリするでしょ〜!!翼ちゃんも何か言ってやってよ〜罰として朝御飯は大盛りだからね〜)

(……んん?私は殆ど意識だけで感覚は共有してないからねぇ。冷たくもなければ痛みも感じないわね)


 あっさり翼ちゃんに裏切られ意気消沈する蛇尾ちゃんを何故か俺が慰め朝御飯大盛りを了承した。

と言っても昨日の熊肉の余りなんだけどね。

火魔法で焼肉を蛇尾ちゃんに提供しながら自分の分を用意していると心臓付近から宝石の様な物体が出てきたので鑑定した結果、魔石と出た。

なんでも、魔石はある程度成長や強化された魔物が持っているらしく力の源とのこと。

しかし、そんな情報どうでもいいくらいに魔石からとても美味しそうな香りが漂ってくる。

我慢など刹那で忘れかぶりつく。

パキンと魔石が割れて中からクマの力強さが溢れてくる。

[レッサーキマイラはLv.3に上がりました。]

[レッサーデーモンはLv.2に上がりました。]

[アルビノヴァイパーはLv.2に上がりました。]

[怪力Lv.1を強奪しました。]


(へぇ、なるほどな。力の源というだけあって、肉体とは別に魔物が持つ経験値を得るのとスキルが奪えるのか。しかも食べたら経験値は共有か、ちなみに2人ともスキルも共有か?)

(うん。そうだよ〜。でも今の[怪力]だけだよ〜)

(多分だけど、強奪は共有されるのかもしれないわね。まあ追々確認していけばいいと思うわ)


 翼ちゃんの言葉に同意して今日の行動予定を修正していく。

持論だが、戦いに於いて速さは特に重要なポジションだ。

高速移動による撹乱や奇襲、知覚出来ない速度はそれだけで強い。

何事もあまり過信し過ぎてはいけないが、あらゆる可能性を考察し対策していけば今後も何とかなるだろう。

したがって強奪の特性を活用する事で、より効率的に戦闘能力を向上させる事が可能となる。

ただ一つ問題なのが、現時点で速さスキルの可能性を秘めてるがアレかと憂鬱な気分になる。

しかし、背に腹は変えられないので心を無にして行く事にする。


(蛇尾ちゃん、今日は食べ放題ブュッフェだよ。たくさん食べてね。調理は俺がやるからね)

(ホント〜?やった〜お腹空いたよ〜)


 フリフリ振りながら喜ぶ幼女を背後に感じながら森の散策を開始する。

暫く森の中を散策していると特に苦労する事なく、ウザキモ虫の大群を発見した。

鑑定すると[テンペストローカスト]と出た。

バッタに似た蟲型魔物で口から立派な牙が2本生えており身体中には棘があり高速で移動してる。

1匹1匹は10cmくらいだけどそれがざっと1000匹くらい居る。キモ!!!

群生相状態の蝗害の様な光景だ。


(それじゃとっとと行くぞ。爪牙か火魔法で殺していくから蛇尾ちゃんは頑張って食べてね。あッ!!あと翼ちゃん、翼出しといてね)


 2人の返事を待たずに鍛錬の為に常時解放する事にしている身体強化を使って跳び出しバッタをそれはもうバッタバッタと倒していく。

ある個体は爪でバラバラに、またある個体は牙でそのままパクり。

その際に口の中で火魔法でこんがり焼いているのがポイント。

生バッタは流石に食べる気になれぬ。

またまたある個体は周囲の木々に被害が出ない様に火力抑え目で焼いて蛇尾ちゃんの口に吸い込まれていく。

戦闘開始からそろそろ3時間程経過、バッタを凡そ3000匹は殺した気がする。

いやしかしまさか仲間を呼ぶとは思わなかった。

数の暴力は小さきバッタにも通用したと自らの身体を見ながらしみじみ思う。

翼は所々齧られてボロボロになっており、身体中は傷だらけだ。

コイツの名前の通り高速移動の正体は風魔法によるものだ。

その結果、鎌鼬の様な現象が起こり移動しながら敵を攻撃するスタイルをこのバッタは得意としていたみたいだな。


(2人ともお疲れ様。こんな殺したのにスキル強奪出来なかったのは残念だったな。やっぱ魔石じゃないと強奪出来ねえのかな?)

(疲れた〜。でもたくさん食べれてわたしは幸せ〜。小さいけど何個か魔石あったけどね〜)

(バッタの上位種が魔石持ってたっぽいわね。小さいし弱いから相当数が必要なのかもしれないわね)

(そうだな。でも風魔法の移動ならそのうちレベル上がれば強奪しなくても使えそうだな)


 休憩しながら脳内雑談して過ごしていると気配察知が反応し顔を上げる。


(ん?んー7、8……10人か。この世界に来て初めての人型生命体と御対面か。俺のこの姿じゃ話し合いは無理そうだよな。様子見するか問答無用で殺すか……初文明の食べ物もありそうだしな)

(ご飯〜!!お腹空いたよ〜!!早く殺しに行こう〜)

(私は特にする事も無いし疲れたから寝るわね。おやすみ〜)

(蛇尾ちゃんは相変わらずの食いしん坊キャラだけど、翼ちゃんは色欲の「シ」の字も感じねぇな。まあいいか、とりあえず近付いて観察してからどうするか決めるか)


 サクッと方針を決めると気配がある場所まで移動を開始した。

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