第3話 生後0日自立

…………夢を見ていた気がする。

俺が転生をして猫っぽいのに卵生でカモノハシかな?って思ったり、久しぶりに思える陽の光を浴びて未来への希望に胸を弾ませていたら速攻育児放棄される、そんな現代世界にありがちなクソみたいな物語……。

と、そんな風にちょっと物思いに耽り現実逃避していても全身骨折したかの如く痛みが今現在も続いておりますね。

痛みが現実逃避を上回り徐々に思考がハッキリしてきたが、痛みがあるって事は強制紐無しバンジーは夢じゃなく現実であった様だ。

しかしながら、幸か不幸かまだ生きてるみたいだ。

そういや、頭の中から声が聞こえて翼が生えた気がするなぁ。


(私が気付かなきゃ貴方死んでいたのよ?)


なんだこれ幻聴か?死ぬの俺?

疲れてんだな俺。

頑張ったもんなぁ。


(何か言いなさいよ!!)


しかし喧しいなこの幻聴。そろそろ起きるかな。


(無視すんなコラァァァァアアァ!!!!)


面倒臭くなって目蓋を開けようとした時、脳内に大音量の怒声が響き渡る。


(ッッッ⁉︎痛えなぁ。わかったわかったありがとう助かったよ。これでいいか?)


 お座なりに対応したのが気に食わないのかプリプリしていたが段々落ち着いて会話可能状態まで溜飲を下げたみたいだな。

落下の衝撃からまだ動けないし暇なので、話をしてみたら、案の定前世のDID時の人格らしい。

つまり元は俺自身ってことだな。

なんか不思議な感覚だな。

しかしコイツも俺もだが、他人格の誰1人として名前を思い出せない状態になっていた。

それに関しては特に問題は無いが前世では、俺の人格が表にある時に語り掛ける事など出来なかったのに、今では脳内会話が可能だ。

異世界風に言うなら念話かな。

ちなみに女は翼に宿ってるらしいが操作操縦も出来ないみたいだ。

主人格が俺だから制御権もあるのかね。

なので現時点では、と前文言が付くけどね。

例えば俺が意識を失えばどうなるかわからんという事になる。

なかなかおかしな機能が追加されたものだが、既に人じゃないから仕方ないな。

そして、暫く翼ちゃん[翼を生やしたから翼ちゃん]と念話をしているとお尻に激痛が走り振り向いて我絶句。


(は?ん〜⁉︎⁉︎ケツから蛇が生えてるッ⁉︎なんでッ⁉︎つうか自分のケツから生えてる蛇にケツ噛まれてるこの状況なにッッ⁉︎ん?んん?ごほッ、グハァッ!!そして毒蛇ってオチ付かよ!!)


 胃が裏返りそうな不快感を感じながら盛大に吐血してどうしたもんかと考えていると、脳内から救いの声が響き渡る。


(私を忘れるなんて〜酷いよ〜!!翼ちゃんより前から起きてたのにずっと無視するなんて酷い酷い!!そんなあなたは、せいば〜い)

(この……声は、銀髪幼女……か。とりあえず………悪かった。だけどね、早めに解毒しないとこの身体死んじゃうから!!おはようからおやすみまで速攻だから!!話は、それからにしようか!!)


 ケツに生えた蛇に謝り倒す猫。

その熱意が伝わったのか蛇尻尾の蛇尾ちゃんがシャーシャー言いながら解毒してくれたらしく徐々に身体が軽くなっていく。


(フゥゥゥ〜それで、とりあえず俺を殺そうとした理由を聞こうか?つうか蛇尾ちゃんは自分で動けんだな)

(殺そうとなんてしてないよ失礼だな〜。私はただ振り向いて欲しかっただけだも〜ん。この〜すていたす?っていうの見たら死なないの分かってたし〜)

(ステイタス?ゲームみてえだな、どうやって見んの?念じるのか?ステイタス!!)


 念じると目の前に透明のボードが出て来た。

本当に出たとちょっと驚くが、この世界だとこれが普通なのかなと納得しつつボードに目を通す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[名無し]種族名:レッサーキマイラ

[Lv.1]状態異常:弱毒

[剣術Lv.6]

[短剣術Lv.8]

[槍術Lv.4]

[斧術Lv.4]

[棍術Lv.5]

[拳術Lv.7]

[弓術Lv.10]

[投擲Lv.9]

[威嚇Lv.5]

[威圧Lv.5]

[状態異常耐性Lv.6]

[気配察知Lv.5]

[精神分裂]

[念話]

部位獲得能力

[レッサーデーモンLv.1]色欲

[アルビノヴァイパーLv.1]暴食

[ーーーーー]

[ーーーーー]

[ーーーーー]

[ーーーーー]

称号

[人類の天敵]

[殺戮者]

[強奪者]


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一通りステイタスボードを見ての感想としては、前世の技能が引継で数値化したのかということ。

称号はとりあえずスルーだな。失礼な称号だ。

あとは……弓術なんて習った覚えがないけど、心当たりとしては前世では銃火器を頻繁に使用していた事だ。

となると、この世界では銃火器の類が無いからその代替案として弓術になったと推測。

ただ、そんなもの些細な問題だと全て吹き飛ばす案件が、この前脚の素敵肉球ではそもそも武器などの類いが持てないという事だね。ふふ、無駄スキルやないかい!!

まあこの身体だから野生的な部分を伸ばしていくかな。

あとは翼ちゃんと蛇尾ちゃんに確認だな。


(状態異常耐性があっても蛇尾ちゃんの毒が貫通してんのは置いとくとして、2人に質問があります。色欲と暴食は定番の大罪系のスキルなんだけど、どんな能力か分かるかな?)


 俺がステイタスを確認し思案していた間仲良く話していた翼ちゃんと蛇尾ちゃんに話を振るとクルリと2人揃って俺を見る。


(さぁ〜私は知らないわね。ここが魔法がある世界であれば頑張って鑑定のスキルでも覚えられれば調べられるんじゃないかしらね)

(翼ちゃんと同じく私も知らないよ〜)

(そんなポンポンスキルって獲得出来んのか?まあ策もねえしとりあえずやってみるか)


 早速試す為にそこら辺にある石に向かって[鑑定]と念じてみると、

[石]と出た。あっさり上手くいったなと感慨深くふむふむ頷く。

[鑑定Lv.1]を獲得しました。

[魔力操作Lv.1]を獲得しました。

[魔力制御Lv.1]を獲得しました。

それにしても魔力か……。

暇な時に魔法の練習でもするとして早速スキルを調べてみるかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[色欲]性知識が増える。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


……ん?はい?ん〜?えっ?これだけ?えっ?何これ中学生かな?

……いやいや、単純に鑑定レベルが低いだけ。

そう思って次行ってみよう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[暴食]満腹にならない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


……ジーザス。この世界の神並びに大罪系スキルはゴミでした。おしまい。


(……鑑定の確認は後日レベルを上げて改めて行うとして、次の質問。蛇尾ちゃんは何で最初ステイタスの事を知っていたのかな?)


 まさにテンプレの様な結末にガッカリしたが、すぐに気持ちを切り替え次の質問を飛ばす。


(翼ちゃんに聞いたからだよ〜。なんか異世界ではそれが当たり前みたいだよ〜)

(あれ?意外に翼ちゃんは厨二病患者だったの?)

(厨二病じゃないわよ!!失礼な事言わないでよね。私は異世界モノが好きな可憐な乙女よ!!)

(あぁ〜はいはい、そういう事にしとくよ。さてと、諸々気になる事はあるがそれは追々考えるとして現時点でサバイバルをするに当たっての優先事項をクリアにしようか。つまり食べ物並びに飲み物の確保、その後寝る場所だな。つっても俺しか動けねえか。蛇尾ちゃんは暴食だけあってお腹空くのかい?)

(うん。お腹空いたよ〜。でも猫ちゃんが食べてもわたしのお腹も膨れるかもね〜)

(まあ身体はくっ付いてるからその可能性も、って何だって?猫?それは俺の事か?猫科なのは間違い無いかもしれねえが、どっちかっつうと獅子だと俺は思うぞ?ん〜……でも鑑定で見た種族はレッサーキマイラだったか。……うん、保留!!兎にも角にも飯確保しに行くかな)


 細かい事は気にせず周囲を見回すが360°森!森!森!

サバイバルだなと思いながら食糧を求めて歩き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る