第6話 交差点
「ただいま」
家に帰り、自分の部屋にランドセルを置く。それから下に行くと、ママがご飯を作っていた。匂い的にカレーだろう。
「もうできるからちゃっちゃと食べちゃってね」
何でそんなに急がせるのかと思い聞いてみると、このパパを迎えに行くと言っていた。パパ、疲れちゃったらしい。
「最近物騒だから、茜も着いておいで」
「でも火事になったら火消す人いないじゃん」
「茜一人でも消せないでしょ」
ご飯を食べて、車に乗った。ママが運転席に座り、海斗と私は後ろの席に座らされた。車はぶぅんと音を立てて進む。
家を出てすぐ、交差点を通る。今日もいつもと変わらず、紫色のアザミが咲いていた。
「あの紫の花ね、アザミって言うんだよ」
「あらそうなの。よく知ってるね」
「うん。おばあさんに聞いた。毎日お世話してるんだって」
そう言うと、ママはいきなり黙ってしまった。ミラーで目が合う。
「茜、あのお花ね、事故に遭った子のためのお花だからね。いじったりしちゃだめよ」
「事故?」
「そう、前にあそこで事故があってね、子どもが亡くなっちゃったの。そのおばあさんもきっと悲しんでいるだろうから、あんまり色々と聞かないようにね」
別に怒っているわけではないんだろうけど、すごく、何て言うか鋭い声だった。海斗だけが外の景色を見て何か言っていて、私とママは黙ってしまった。
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