第295話「天文と地質は別モノ」


「大学か」



コーヒーを飲みながら、そんなことを口にするのは岩船先生。


休日。今日は岩船先生の家にお邪魔している。


ちなみに蒼は、新学期からできたお友達と遊びに行っているようです。


仲のいい人ができたと喜んでいたので、まぁ何よりです。



「大学と言っても、色々あるから分からなくて」


「なるほど」



目標がないと、人は迷走してしまう。


学びたいこともない、将来やりたいこともない。


そんな人間だからこそ、どの大学に行くか迷ってしまう。


どこでも良いと言われればどこでも良いのだが、だからと言ってルーレットで決めるというのも違う気がする。



「岩船先生って、どんな大学出てるんですか?」


「それは教えない」


「え、どうして」


「まぁいいだろ。そんな大したところではない」


「そうですか」



参考までに訊いただけなので、深い意味はない。


そんなに訊かれたくないことなのだろうか。



「村上は、文理選択どっちなんだ?」


「文系です」


「その時点で、私が卒業した大学は合わない」


「言われてみれば、岩船先生はどう考えても理系ですよね」



理科の教師なわけだし。



「文系は私の専門外だから、詳しいことは分からない。でも、無難なところは経済学部とかじゃないか?」


「経済学部ですか」


「最近だと、マネジメントなんちゃらって」


「マネジメントは経済なんですか?」


「どっちかと言えば経営か? まぁ似たようなものでしょ」


「多分違いますね。天文と地質みたいなもんですよ」


「なるほど・・・それは違うな」



まぁ詳しいことは知りませんけど。



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