(一)-3

 本人はこの月面都市・アームストロング市で「普通」な高校生活を「普通に」送っていると思っているのだろう。雇われ技術者として月面に来た両親を持つ俺の家とは大違いのご家庭でお育ちになっているのだ。

 そんなエミリアは、身なりも上等でマナーも一流、社交界でも名が通っているし、何よりも美人であった。マーチン家の一人娘というだけあって、他社のご子息から熱視線で見られているというのもあるが、それを差し引いても誰もが認めるほどの美少女であることは、俺でも認めざるをえない。そんないけ好かない女を美人などと呼びたくはないが。


(続く)

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