長野学長とデータサイエンス
データサイエンスとは、ひらたくいえば、統計学と情報工学の手法を組み合わせて、大規模なデータから、問題解決を行う研究分野だ。
データサイエンスの重要性が叫ばれ始めたのはごく最近のことだ。
まず、2016年、内閣が「第5期科学技術基本計画」を閣議決定する。
ここで、データサイエンスに通じた人材強化の重要性が
懇談会の有識者らは、「数理・データサイエンス教育研究センター(仮称)」の設置と、大学のカリキュラムを標準化することなどを答申している。
また、文科省は、これと同時並行で、「大学における数理・データサイエンス教育」に関して、各大学を「拠点校」や「協力校」に次々と認定し、各校を基に、「数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム」を立ち上げている。
さらに、2019年には、国務大臣らを構成員とする「
これは、全ての大学生及び高等専門学校生に、「初級レベル(リテラシーレベル)の数理・データサイエンス・AI」を習得させ、一定規模の大学・高専生には、さらに「自分の専門分野への数理・データサイエンス・AIの応用基礎力」 を習得させることを目指したものだ。
一官僚に過ぎない
急いで「リテラシーレベル」の数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」を創設し、各大学の正課プログラムの認定を開始。
2021年度からは、「応用基礎レベル」のプログラム認定制度も開始している。
他にも色々と会議やら戦略やらはあるが、ようは、データサイエンスを政府は猛プッシュしているわけである。
そこで、ここ岡島大学では、長野学長の手腕が発輝された。
上手く文科省から資金を勝ち取り、その資金を基に、関連しているようで、実態は別の活動に精を出す。
その膨大な資金を
そんな噂が、文部科学省内では広まっていたというわけだった。
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根も葉もない噂にすぎないかもしれない。
けれど、万が一ということもある。そして、監督省庁の文科省としては、その万が一は、警察や検察に見つかる前に、押さえておきたかった。
そして、そんな文科省の意向を気取られるわけには、もちろんいかない。
だから、各部長室や理事室の3倍はあろうかという、その学長室で、小湊は人生最大といってもいい緊張を感じていた。
にこやかな笑顔を無理に貼り付け、これ以上ないくらいさわやかな挨拶をする。
その小湊の笑顔に、長野学長も笑みを返した。
「まあ、はるばるこんなところまで」
「とても
「何かと不便でしょう、東京と比べて」
「いえ、元々私も地方の出身なので」
他愛もない会話の裏に、確実な警戒の色を感じる。
5分は過ぎただろうか。
理系研究者に似合わない大柄な
「まあ、
精々は、「それほど期待をしていない」という意味が一般的だが、「能力の限りをつくす」、という意味も持つ。
小湊は、その言葉を、詮索せず、余計なことはせず、学務課の仕事だけやっていろ、という意味に捉えた。
やはり、何かある。
根拠はないが、そう確信した瞬間だった。
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