第3話 意識、機会。
裕斗(ゆうと)にとって衝撃的な新学期1日目となったその翌日。
2-2の教室の周りには、朝から転校生:謙介を一目見ようと、2年生が押し寄せていた。
早くも遅くもないいつも通りの時間に登校した裕斗は、その人混みをかき分けながら教室を目指して歩く。
(昨日の放課後もすごかったのに…)
しばらくは謙介のおかげで苦労が増えそうだ。
そんな謙介は、すでに自分の席についていた。
その周りには昨日のように多くのクラスメイトがいて、談笑していた。
裕斗がやっとの思いで謙介の隣にたどり着くと、
「お!おはよお、白鷹くん!」
謙介が気づいて挨拶をしてきた。
「…おはよう、鶴岡くん」
(わざわざ俺に言わなくていいのに)
弾んでいた会話を中断させて、昨日同様の人だかりで裕斗の存在にも気づかなさそうな状況の中でも、謙介は声をかけてくる。
裕斗はやはり嫌な気はしないが、申し訳ないようなばつの悪さを感じていた。
一方、謙介は昨日からずっと左隣を気にしていた。
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「あーっと、トイレ行こかな」
「お、じゃあ俺も!」
「俺も便所~」
「お昼やな、ほんじゃあ…」
「鶴岡!こっちで一緒に飯食おうぜ!」
「女子もお前と話したいってよ~」
「次理科室に移動やな!…あの―――」
「鶴岡くん場所分かる?」
「一緒に理科室行くか!」
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「ほ、放課後やん…」
謙介はやや絶望した様子で時計を見つめた。
「謙介、一緒帰ろうぜ~」
(またや…)
謙介は朝からずっとクラスの誰かに捕まっている。
そのせいで、本当に話したい人とずっと話せていない。
謙介は話し好きだ。人といるのも居心地がいいと感じている。
しかし、今はどうしても優先したいことがある。
「ごめん!俺…白鷹くんと帰るから!」
「え」
謙介の左隣で未提出課題の居残りをしていた裕斗は、思わず手を止めて謙介を見た。
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