第6話 溶ける

「今日さ、BTTの新曲発売が発表されたんだよね!」

「あやめの推しが作詞なんでしょ。やばくない。」

「そうなんだ。えー、いいなー。」


「まあーねー。私の推しは世界一だから。青星あおせちゃんの推しはどうなの?」

「今度の音楽番組出ることが決まってね、新曲初披露するんだ!」

「それは見るっきゃないね。いつ放送なの?」

「今度の土曜日!それに確か、仮面サイダーの人が出演するって言ってたよ。」

「ええー、うち知らなかった!録画しなきゃ。」

楽しくて自然と笑みがこぼれる。

あれほどうらやましく眺めていた時計が、今では恨めしい存在だ。


あの時、推しを絵莉佳えりかちゃんに打ち明けたあの日、私の中で心を縛っていた鎖が溶けていった。暖かい夕日が差し込んだ。

それから、蘭ちゃんとあやめちゃんにも推しのこと話して。

おじさんだからって馬鹿にされるかと思ったけど、そんなことなくて。逆に、無理やりBTTの話に巻き込んじゃったみたいでごめんね、って謝られた。

あと、この間トイレに行ったのは仮面サイダーの推しの話についていけなくて、私と絵莉佳えりかちゃんの間に入りずらかった…そうだ。

これからもっと推しの話しよーね。いつしか心を縛っていた存在はなくなっていた。




 

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