第5話 誇り
そういえば、今日はテレビの星座占い最下位だった。
今朝発表された今度ある歌番組にも推しグループの名前は載ってなくって。今日の推しの一人がやってるラジオは野球中継でお休み。蘭ちゃんとあやめちゃんには仲間外れにされるし―。
先生に呼び出されて、ようやく帰れる頃、空はもう夕日に包まれていた。
教室に戻ると、
今、一番会いたくなかった。
昼休みの気まずいまんま。それにこの状況に少し心が乱れてきてる。
一言でも言っちゃたらいけない気がして無言のまま教室の後ろにあるランドセルを取りに行く―。
「あ、
「……サイン入り、いいね…。」
無言に耐え切れなくなって結局返した。
「でしょー!そーだ、
推しの、推しの話。
私の大好きな推しの話。
「
私の、推しじゃない。そんなの好きじゃない。
私の大好きな、ダンスがかっこよくて、優しい歌声で歌謡力抜群で、トークだって面白い。
周りからはおじさんに見えても、世界一の最高のアイドル。
それが私の推し。
「それは、それ…はっ…」
目頭が熱くなる。なんでなんでっ。こんなことで泣いちゃうなんておかしいよ。
「…ごめんもう帰る。」
逃げるようにして教室を出て行こうとする―。
「また私、逃げるの?」
「ごめん!本当にごめん、
絵莉佳ちゃんの顔が夕焼けとの陰に隠れて見えなかった。
「昼休みの時、うちすっごい無神経なこと言った。喧嘩しちゃったの、なんて聞いて。
ぐちゃぐちゃで真っ黒な心と頭とから言葉が滑り落ちた。
「
「好きなものは好きでいいじゃん。」
「誰が何を好きだろうと全然いいと思う。だって好きって気持ちに嘘なんてつけないじゃん。たとえ周りに同志がいなくたって好きなものは好きじゃん。」
「でも周りに馬鹿にされるかもだよ。それでもいいの?」
「え、でもうちは少なくとも推しに恥はないっ!人に教えても恥ずかしいような推しじゃないから。」
オレンジ色の夕日が、教室を異様に明るく照らした。影が私を覆う。
「だってさ、推しが好きだって言うことが自信がないってことは、推しが恥ずかしい人って言ってるってことじゃん。私は推しに誇りを持ってる。この世で一番大好き。」
そんなこと考えたことがなかった。
「きっと、みんなが気づいてないだけなんだよね。仮面サイダーの魅力に。だから私が言ってもっと魅力広めなきゃって。だって私のこの平凡な目で見てかっこいいと思えるくらいだよ、絶対みんなが知らないだけだって。」
絵莉佳ちゃんが私の手にジ・王のフィギアを握らせる。
「
目元はかすんで、声もうまく出ないけど思いっきりうなずいた。
「じゃあさ、教えてよ。
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