第4話 曇り空

あの日の一瞬で、穏やかだった学校生活が居心地が悪くなった。

蘭ちゃんもあやめちゃんも最近やけに韓国の推しの話が増えたし、あからさまに絵莉佳えりかちゃんを避けているように見えた。

それだけならまだいい。それだけ、なら。

青星あおせちゃん!昨日仮面サイダーやっててさ、エビちゃんがむっちゃかっこよくって!」

最近妙に絵莉佳えりかちゃんが話しかけてくるようになった。

しかも、戦隊ヒーローの話。

無視するわけにもいかないから、とりあえずの返事で返す。

多分それがいけないんだと思う。

「最近、絵莉佳えりかちゃんとよく話してるよね?趣味合わないのに、推しの話されても困るよね。」

「 蘭の言う通りだよ。はっきり言いったら?絵莉佳えりかちゃんとはもう付き合えないって。」

「うん、そうだよね。」

言葉ではそういうけど、実際は難しいのだ。

こうやってうじうじしてる自分が好きじゃない。

結局断れないままなあなあの関係が続いていた。

「青星ちゃんたちなに話してるの?推しの話?だったらうちも―」

「あー、私ちょっとトイレ。あやめも行く?」

「行くー!あ、せっかくなら一階のきれいなトイレ行こ。」

いつしか私もグループから外されるようになって、もっと学校が気まずくなった。

今まで穏やかに過ごしていたのに…。

「わざわざ一階のトイレ使わなくてもこの階もきれいじゃん。青星あおせちゃんもそー思わない?」

なんにも分かってないこの能天気さ、あんま、好きじゃない。

灰色だった私の心に、何かがひどく光った。

「私たちと話したくないからだよ。」

ぼそりと冷たい言葉を吐き捨てる。

「ええ?青星あおせちゃん、蘭ちゃんたちと喧嘩でもしたの?」

それなのに自分が事の中心にいるのに全く気付いていない様子だった。

「…そんなんじゃないよ。」

今のこのイライラする、もやもやする気持ちを抱えられなくなって、私はたまらず教室を出た。

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