第3話 仮面サイダーとあの子
学校は息苦しい。スマホを持ってこれないから推しを吸収できない。
何より、この雰囲気―。
「ねー、
「えー、
今、
正直、と言わなくても韓国のアイドルとかには興味ないしかっこいいとも思わない。
二人の話に合わせようとして、一度BTTのMVを見たけどさっぱり分からなかった。
私に英語の歌を聞かされたって分からないのだ。英語なんて「ハロー」程度の語彙力しかないのに。
「
そしてお決まりのこの流れ。私は微かな記憶を頼りに「Z《ゼット》さん」と顔も髪型も、名前以外なにも浮かばない人を答えた。
「やっぱ、Zかー。」
「グッズ売れ行きも一番だもんね。不動の人気、リーダーZ!」
その私のその一言に話が深い方へ、私には分からない領域へと進んでいく。
より教室の中は、じめじめさを増す。
私の視線はいつしか羨ましそうに時計を捉えていた。
なんだか今日はいつにもましてじめじめして暑い。
外では今か今かと、空が雷を待っている。
―早く昼休み終わらないかな、それともトイレにでも逃げようかな―。
「ねー!なに話してるの?」
そこにクラスメイトの
蘭ちゃんとあやめちゃんにとっては、推しの話を一人でも多くにできることは嬉しかったようだ。
すぐに
それは私にとっても同じことで、推しの話から何かしら話の流れを変えてくれるだろうと思って、救世主的存在だった。
「BTT の話!
あやめちゃんのやや圧のかかった質問に、愛莉花は思いもよらぬ答えを返した。
「え、誰それ?」
場の空気が少し、嫌な雰囲気となった。
空も雷鳴を待つかのようにもっとどんより重暗くなった。
「か、韓国のアイドルグループだよっ。」
私は場の空気がこれ以上悪くならないよう、一言付け足す。
が、それさえも
「韓国?何が良いのか分かんないや!」
とうとう空が限界を迎えたか、激しい光とともに大きな音を立てた。
全員が
また、あの時の、嫌な、感じ。
「てかさ、私の推しは戦隊ヒーローなんだよね!特に仮面サイダーのジ・王が好きなの!」
そんな空気も、視線も全く気づいてないのか更に
しかも推しが戦隊ヒーローだなんて…。
「えー、何か幼稚くない?もう中学生になるのに?」
「しかも女の子なのに、戦隊ヒーロー好きっておかしいよね。」
蘭ちゃんと、あやめちゃんがクスクス笑う。
もう嫌だ―。
「みなさーん、席に着いてください。授業はじまりますよ。」
タイミング良く先生が入ってきてくれて、とりあえず逃げることができた。
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