第52話 別に呪われていない魔剣、アイスソード

 今はやっとのことで魔法の塔の6Fを上がった所だ。クッソ長かったし、ずっと迷路だし、モンスターはそこまで新しい奴はいなかったので省略。で、なぜ「6F」だとわかるのかというと、私が律儀に数えていた訳ではなく、この塔にはご丁寧に階数を表す数字が各階に掲示されているのだ。迷路で迷わしたいのか迷わせたくないのかハッキリしてほしい!


 その時だった


謎の音「ピロリロ、ピロリロ」

アスティ「あーあ、聞き覚えのある音だよ、ハハハ……」


???「やあやあ、よくここまで来たね! ゴールまでもう少しだよ!」

???「そこにある魔方陣から塔の入口に戻ることができる。ぜひ活用していただきたい」

???「もうー、半分以上来てるけどー、敵がー、さらに強くなってるからー、

死なないようにー、気を付けてねー!」

アスティ「また言いたいことだけ言って、丸投げしてったなこの野郎……」


アスティ「かなり消耗してるし、いったんベイハーバーに戻って態勢を整えようか」

フォクシー「賛成です。敵がさらに強くなっているとのことですし、無理は禁物です」


ナレーション「入口に戻ることができます。往復可能なワープ魔方陣です。戻りますか?」

アスティ「はいはい戻りますよーと」

フレア「アスティは誰と会話しているのだ?」




アスティ「で、軍港ベイハーバーに戻って来ましたよと」

ホーク「早速宿屋に泊まろうぜ」

アスティ「無料だしね」


アスティ「ところでなんで宿屋って無料なの? どこかがスポンサーになってたりするの?」

フォクシー「そもそも疑問なのですが、宿屋というのは利益が必要なのでしょうか? アスティさんに言われるまでだと私は思っていたので気付きませんでした」

アスティ「え、マジかよ……」


 異世界というのは価値観もやはり違うらしい……


アスティ「さて、宿屋に泊まって回復したし……」

フレア「魔法の塔の攻略の続きだな!」

アスティ「いや、倉庫よ」

フレア「???」


ホーク「倉庫に何があるんだよ?」

アスティ「そりゃ『アイスソード』でしょ」

ホーク「いや、皆様ご存じ『アイスソード』みたいな言い方されても俺達アイスソードの存在知らんし、なぁ?」

フレア「ああ」

フォクシー「初耳ですね」


 あ、そうか。倉庫での出来事はことになってるのか


ホーク「ずっと一緒に行動してるのにおかしくないか?」

アスティ「ふ、船で聞いたんだよ」

ホーク「船?」

アスティ「そう、船に乗った時」

フォクシー「そうですね……確かにあの時は別行動の時間もありましたので、私はおかしくはないと思います」

アスティ「そうそう」

ホーク「なんか腑に落ちんが、まあいいか」

フレア「なるほどわからん」


 やべぇ、なんとか話を誤魔化せたか。仲間に隠すような話でもないかもしれないけど、今わざわざ真実を明かしてややこしくする必要もないと思うし。ごめんよフォクシーちゃん


アスティ「で、ここが倉庫」


 軍港の倉庫だけあっていろいろな武器を格納しているのだろうか。倉庫としてはかなりデカい建物だ。一応兵士は見張っているものの、今は一般人も入れる状態のようだ。……というのが第一印象だった。私はもうからね。二人の兵士が一応は見張りをしているが、私達も普通に出入りはできる。しかし宝箱の『アイスソード』を取ってしまうと、が現れる


ホーク「おい、本当に大丈夫なんだろうな?」

フォクシー「これって……私達どろぼうではないですよね?」

フレア「何もわからん」

アスティ「大丈夫、モンスターが出るかもしれないけど、適当に懲らしめておけば問題ないから」

ホーク「意味わからんし」

フォクシー「余計心配になりますね……」


 大丈夫、今の私達なら全力出せばまあ勝てるはず。倉庫の奥には見覚えのある宝箱があった


アスティ「ついに念願のアイスソードを手に入れたぞー!」

ホーク「それ、そんなに強いのか」

アスティ「めっちゃ強さを感じるよ。具体的にはミスリルソードの2倍くらい強いね、物理的にも魔法的にも」

フレア「アスティ、強い武器も大事だが、武器の強さに溺れるなよ」

アスティ「わかってるって!」


 さて、出入り口ではが待ってるはず……勝てると思うけど、一度負けた相手との再戦は緊張するね


入口にがいる。。そのモンスターは、一つ目で巨大な身体、巨大な棍棒を持っていた。編隊倉庫番という変な名前のだ!


ナレーション「モンスターの群れが現れた!」

アスティ「悪いけど全力で勝たせてもらうよ!」


トロール……編隊倉庫番が1体と、お供の小さな、しかし強そうなモンスター……ミニ倉庫番が2体。戦って勝てる相手だ。逃げることはできないが、今更逃げるつもりもない!


アスティ「戦うしか!」


アスティ「まずは小者から片付けるよ! アイスソードを食らえ!」

フレア「連舞皇斧脚!」


ミニ倉庫番A「腕砕き!」

フォクシー「きゃあ!」

ミニ倉庫番B「鎧砕き!」

フレア「ぐっ、これしき!」


ホーク「俺は全体攻撃で一気に削る! ウィンド!」


 ミニ倉庫番Aはもう少しで倒せるか。確実に回復しつつ倒せる所から倒していけばいける!


アスティ「フォクシーちゃんしっかり! ヒール」

フレア「手加減はしない! 連舞皇斧脚!」

ミニ倉庫番A「ギャア!」

アスティ「ナイス! まずは一つ!」


ミニ倉庫番B「ヒーラー!」

アスティ「全体回復魔法も使うのか! こざかしい!」

編隊倉庫番「ぐおー!」

アスティ「いたい! バカデカい棍棒振り回しやがって。通常攻撃でもこんなに食らうのか……」


アスティ「自分にハイヒール!」

フレア「相手が倒れるまで撃つ! 連舞皇斧脚!」


編隊倉庫番「ぐおー!」

フレア「ま、まだ戦える!」

ミニ倉庫番B「キィィィエィィイ!」

フォクシー「きゃあ!!」


フレアちゃんが瀕死、フォクシーちゃんにクリティカルが入ったか! でも私が速攻でフォクシーちゃんを回復すればまだなんとか……。フォクシーちゃんは自分で自身を回復するのは間に合わない可能性がある。いや大丈夫、勝てる!


ホーク「俺の魔法は何度でもおかわりさせてやるぜ! ウィンド!」

フォクシー「フレアさん、ハイヒールです!」


アスティ「フォクシーちゃん、ハイヒール!」

フレア「鍛練の成果を見せる! 連舞皇斧脚!」


ミニ倉庫番B「ヒーラー!」

編隊倉庫番「ぐおー!」

フレア「私ならまだ耐えられる!」


 よし、そろそろもう一体も倒せる!


アスティ「アイスソードの餌食だ!」

フレア「とどめ! 連舞皇斧脚!」

ミニ倉庫番B「キュエェ……」

アスティ「残りはデカブツだけ!」


編隊倉庫番「ぐおー!」

フレア「く、問題ない!」


 あとひといきだ!


アスティ「もういっちょアイスソード!」

フレア「連舞皇斧脚!」


 その時、編隊倉庫番の目が怪しく輝いたかと思うと、私達全員を蹴散らすように棍棒をぶん回して来た。最後の抵抗だろう


アスティ「いってー!」

フレア「グハッ!」

フォクシー「キャア!」

ホーク「おい、手加減しろよな!」


 戦闘不能は出ていないが壊滅寸前。回復は間に合わないだろう。速攻で決着をつける!


アスティ「最後のアイスソード!」

フレア「はぁぁぁぁぁぁ! 連舞皇斧脚!」

編隊倉庫番「そ、そんなバカな……」


 編隊倉庫番……バカデカいトロールはその場に倒れ込んだ


フレア「ふう、良い鍛練だった……」

アスティ「や、やった!」

ホーク「おい、さっさとこの場を離れるぞ」

フォクシー「やっぱりこれって強盗……ではないですよね?」

アスティ「はぁ疲れた。とりあえず今夜も宿屋に泊まろう」




 ――後日、倉庫にて


アスティ「なんか見張りが増えてる」

女騎士「ここは強盗事件発生のため一般人はしばらく立入禁止になった。……まさかお前たちじゃないだろうな?」

アスティ「あはは、まさかー」

一同「……」


アスティ「さ、さーて。塔の攻略に戻りますか!」

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