第23話 宿敵と、海賊と

 暗い紫色の甲冑、人間離れした体格の大男。何者かはわからないが、明らかに「敵」としてそいつは目の前に立っている


アスティ「先手必勝! くらえ!」

フレア「続くぞ! 連舞皇斧脚!」


 私とフレアちゃんの攻撃がしっかりと入る、しかしひるむ様子はない。こいつ、あの暗殺者のバニーよりタフかもしれん……


 男は何かの構えを取った。瞬時に、嫌な予感が脳裏を駆け巡る


アスティ「みんな! あいつの攻撃を!」


 次の瞬間、男の手のひらから炎が広範囲に広がる。炎系全体攻撃魔法……ファイアボールだ!


アスティ「クソ、無茶苦茶しやがって!」


 こんな建物の中でファイアボールとかありえないだろ。何も考えてないのか? ……それとも考えた上でこれ?


 フォクシーちゃんはしっかり防御していた。うちの生命線だからね


ホーク「ロッククラッシュ!」


 岩の塊が飛んでいく。土系単体攻撃魔法だと! なんてレアな。つーか、海賊の格好で土系魔法って。肉弾戦じゃないのか。せめてそこは水系魔法でしょ。海賊船とかイルカとか召喚しろよ


 さて、私がホークのオッサンを、フォクシーちゃんがフレアちゃんを回復するのがベターだな。フレアちゃんは頑丈だが、オッサンの回復が遅れたらやられかねない。フォクシーちゃんにアイコンタクトし伝える。


フレア「まだまだ! 連舞皇斧脚!」

ホーク「メガファイア!」


 オッサン今度は炎系魔法かよ。まあ単体だし、ちゃんと範囲を絞ってるから問題ないけどさ。それよりさっきからオッサン、一瞬で……というか予備動作ゼロ……で魔法出してないか??


 男が勢いよく突進してきた!


ホーク「ぐわあああっ!!!」


 オッサンが勢いよく吹っ飛んで……おい何で、たかがで致命傷を食らってるんだよ。確かに凄い勢いではあったけどさ。オッサンもしかして肉弾戦は全然できない、使タイプ? を自称してるのに? え、では?


 フォクシーちゃんの回復では間に合わんか。私が速攻で回復してやる


アスティ「オッサンまだ死ぬなよ、ヒール!」


 男は余裕なのか、防御態勢で様子見している。仮面の下からは、こちらの苦戦を見て楽しむかのように、ヘラヘラとした口がわずかに見えている。クソ、こいつ……


 その後も一進一退の攻防が続く。このままでは消耗がキツイ。うー、何か決め手はないのか……


フレア「私が突破口を開く! ぬおお!」

アスティ「……!!! フレアちゃん危ない!」


 その時、男は蹴り上げの二連撃を放ち、続けざまにさらに強力な回し蹴りを放つ。体幹のしっかりしたフレアちゃんの身体は、サッカーボールのように吹っ飛ぶ。え、この技って……


 いやそれより! フレアちゃんは今の攻撃で膝をつくほどの大ダメージを負っていた。フレアちゃん以外じゃ一撃で戦闘不能になる程の威力だ。ここは一気に畳みかける!


アスティ「くたばれ!」

ホーク「メガファイア!」

フォクシー「えい!」


 私達の攻撃は確実に、男の身体のド真ん中に命中した!

 ……やったか!?

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