第17話 奇人の集まる町、シーポート
さて、情報収集を再開するか。しかし港町だからなのか広いな……
おばさん「こっちの水路には特に何もないかもね」
ん、じゃああんたはなぜここにいるんだと一瞬ツッコみたくなったが、ツッコみ待ちっぽい気がしたのでやめた。残念そうな顔でこちらを見るんじゃない
町の角の方、花壇の辺りに、見るからにヤバいモヒカン男がいた。いかにも世紀末っていうか「ヒャッハー!」と奇声を上げて襲いかかってきそうな輩だ
まあ普通なら話しかける選択肢はないのだが、今の私達はそこらのチンピラ1人に負けるほど弱くはない。襲いかかってきたら返り討ちだ。それはそれとして、ちょっと面白そうだったので話しかけてみた。
アスティ「あの、すみません……」
モヒカン「……!?」
モヒカンは急に流暢な早口で、地声と裏声を器用に切り替えながら歌いだした!
モヒカン「ヨーデ レッリ レッル ロッロ ヨーデ レッリ ヒー!
モヒカン「ヨーデ ラッロ レルロロ ヒヤロ ヨーデリ ラルハリ ヒー!」
モヒカン「リロロ ルレレ ヒロロ ヒヤルロ ヒヤロ ハリロ ロフラロロヒヤラ」
モヒカン「ジヒヤララフルロロフレララルロロ ヒジヤララルレリヒー!!!」
この顔でヨーデルかよ。しかもさっきまでギャラリーはいなかったと思うのだが拍手喝采が聞こえる
アスティ「え、なにこの人……」
フレア「すごい」
運河を眺めているイケメンと美人のカップルがいる。正直あまり話しかけたくはない。というかムカつくので運河に突き落としたい。しかし万が一、役立つ情報を持っているかもしれない。貴族だろうし
カップル男「見てごらんローラ。永遠に続くかのような、この川の流れ。まるで僕たちの愛のようだよ」
カップル女「いいえジョシュア。この川の流れは永遠ではないわ。でも、あなたと一緒なら『永遠』という言葉……信じてみたくなる気がするの」
爆発しろ! やっぱり話しかけるんじゃなかった。自分の行為を激しく後悔した
そのカップルのすぐ近くには、激しく壁をどついている少女がいた
モブ弓子「爆発しろ! 爆発しろ! 爆発しろ! ふぉああああああああああああああああ!」
ぴょんぴょん!バシバシ!回し蹴り!
アスティ 「………」
フォクシー「………」
その鬼気迫る様子にもはや話しかける言葉もない
フレア「いい鍛練をしているな!」
アスティ「鍛練じゃないだろ」
さらに運河を進み奥まで行くと、ただのオジサンがいた
オジサン「やあやあ、私は『わざわざここまで来てくれてありがとう、そんなあなたにプレゼントをあげようオジサン』だよ」
普通にヤバイやつだったわ
オジサン「名前の通り、プレゼントをあげちゃう! あげちゃうからね~!!!」
手品……にしては派手過ぎる爆発、そして紙吹雪。そして人がたくさんいる訳でもないのに謎の歓声のコンボ。なんだこれは。あと目力が強過ぎる。目をギョロンと見開いてこっちを見るな
オジサン「はい、上薬草だよ!」
回復アイテムをくれた。一応は良い人……なのか??? 変人なのは間違いないな
ツノが左右に生えた帽子を被った海賊? らしき人がいる。海賊というよりバイキングと言うんだっけ? うーん、違いがわからん
海賊?「海はいいねえ!」
アスティ「こっちは海じゃなくない?」
フレア「海と川の境目がわからん!」
ここら辺の地理には詳しくないが、どう見てもこちらは運河の終端なのだ。おそらく反対側は海と川の境目ということになるのだろう。厳密な境目はよくわからん
さて、建物も回ってみるか。入れる建物は少ないかもしれないが、面白い情報が集まるかもしれない
???「もえるあっついハートでー↓↓↓↓↓」
アスティ「???」
歌が聞こえる。元の歌がわからんが、たぶんかなり音痴だ。自分の耳がおかしくなったかと思うような絶妙な音の外し方だ
さて、こっちの入口は……。んん!?
アスティ「こんにゃろー開かねーぞ!」
フレア「なぜ開けたいのだ?」
入口があったら開けるものだろう、普通……
こっちの入口も……開かない!
フォクシー「閉まっている入口を調べて何か意味があるのでしょうか?」
フォクシーちゃんまで……
アスティ「ここも入れないの?意味ないじゃん……」
フレア「アスティはいつもこんな感じなのか?」
フォクシー「ええ……まあ……」
なんかすごいバカにされてるというかドン引きされてる気がするぞ。間違ったことはしてないと思うのだが。私が悪いのか?
次の家の主はまともに会話をしてくれた。なぜこんなに苦労するんだ
バニーファン「恐ろしい強さを誇るバニーガールの伝説。一撃必殺の奥義を持つ凄腕らしいぞ」
フォクシー「バニーガールの格好……。冷静に考えて戦いにくい気がしますが」
アスティ「冷静に考えて……。突っ込み所そこじゃないよ?」
フレア「確かに動きにくいが……鍛練にはなるかも知れんぞ!」
アスティ「冷静になって」
うん。私の仲間達もたいがいだったわ
次の民家では白髪イケメン忍者が出てきた。忍者が普通に家に住んでて玄関から出てくるのはかなり違和感あるが、まあ逆にそれが普通なのかもしれない。私達は忍者に夢を見過ぎな部分があるからな
忍者?「首切りバニーの噂を知っているか? 超人的な能力を持つ暗殺者らしいぞ。ちなみに、ここの名物はフードポートだ。右側にある。港への看板が目印だ。こっちの水路沿いからは行けないがな」
しかし恐ろしく強いバニーガール……首切りバニーか。この町でバニーガールといったら、あの陰気臭いバニーガールしか思い当たらない。あいつがそんなに強いというのか? 『首切り』なんて物騒な異名がつくくらいに? 全くそうは見えないが
見た目からの推測というのは全く当てにならないものだ、特にこの世界において
そして、いい加減な噂というのは意外と当てになるものだ、特にこの世界において
『地獄』なんてのは死後の世界というフィクションを信じなければ成り立たないものだが。もしこの世の地獄というものがあるならば。あのバニーの存在こそがその『地獄』なのかもしれない。はぁ、まったくとんだダークホース、いやダークバニーだったよ
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