第14話 safety by heart

 さて。森でしっかりレベリングして、今やレベル8まで上がった。ついに私は回復魔法の『ヒール』を覚えた


 念願の回復魔法! フォクシーちゃんにはヒールの回復量も最大MPも劣るが、いざという時には私の素早さを生かしたヒールが文字通りの『生命線』になるだろう


 いったん宿屋に泊まり、薬草をたっぷり買い、禁句連の役員の待ち受ける洞窟に、いざ出発!


 今の私達にとっては、道中は消化試合だった。あのスケルトンでさえ、くらいの扱いになっていた。楽勝! あっという間に禁句連の目の前にたどり着いた


 …とはいえ、油断は禁物だ。もうはしたくない


 ――私は目をつぶり、いったん落ち着いた――


 さて、もはや油断さえしなければ、どう戦っても勝てる相手だろう。が、初めての強力な相手とのバトル――初めてのボス戦ってところか。せっかくだから仕掛け方を考える


 『奇襲をかける』……これは前に選んだんだよな。思ったより有利にならなかったし、何より不吉なので選びたくない。にはならないと思うんだけど、ちょっとね


 『正面突破』……バカ正直に正面から突っ込むメリットはなさそうなんだけど、一応シミュレーションしてみるか。念のためね、念のため!


フレア「我らは禁句連に仇なす者なり! 禁句連よ! 覚悟!」

下級役員「どこのカスか知らんが身の程知らずの愚か者が! 返り討ちにしてくれる!」


 ――うん、やっぱり流石にこれはないわ


 やはり無難に全回復してから行くとしよう


フレア「それで行くぞ!」

フォクシー (回復します…!)


 万全の体制で挑む。心技体、どこにもスキはない!


役員「侵入者か! 邪魔はさせんぞ!」


 話の長い金髪ユーシャの教えに従い。まずは禁句連の下っ端に対し、私とフレアちゃんが全力攻撃を喰らわせる


 アスティ「ファイア!」

 フレア「連舞脚!」

 下っ端「ぐはぁ!」


 完璧なワンキルだ。ちなみにフレアちゃんの『連舞脚』は、踊るようなステップから空中で二発の蹴りを繰り出す必殺技だ。いわゆる『連環腿』だ。強い。ただしフレアちゃんの必殺技はHPを若干消費する。フレアちゃんはタフとはいえ、これは少しリスクがある


 フォクシーちゃんには防御させている。後列なので狙われる確率は低いはずなのだが、集中攻撃されたらマズイからね


 攻撃は私とフレアちゃんに分散された。問題なし


 次のターンももう一人の下っ端に集中攻撃、そしてフォクシーちゃんはフレアちゃんを回復だ。必殺技はHPを消費するからね。私はわずかだがHP自動回復、いわゆる『リジェネ』がなぜか最初からついてるし、いざとなったら自分で回復できる


下っ端「ぐほぁ!」


 よし、下っ端どもを撃破した!


役員「おろかものめ、ファイア!」

フォクシー「きゃあ!」


 フォクシーちゃんがダメージを受けたか。ここは万全を期して、フォクシーちゃんに防御させ、私がヒールを唱える


アスティ「ヒール!」


 問題なく態勢を立て直す



 その後も特に危なげなく戦況をコントロールしていく。さて、そろそろ追い詰めてきたか……!?


役員「くそ、ヒ、ヒール……!」


 苦し紛れに自分を回復したか、だがもう遅い!


アスティ「ファイア!」

フレア「連舞脚!」

役員「ーーーーーーっっっっっ!!!」


 声にならない声を発し、禁句連の役員はあまり寝心地の良くなさそうな、硬い地面に横たわった


役員「なんだこいつらは……それにこの力は……ビジター……なのか?」

役員「クソ……俺の……夢が……こんな……」


 禁句連の役員はそのまま意識を失った

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