第13話 勇者の心、勇者の力
気付いた時にはフォクシーちゃんは完全に炎に包まれ。炎の中に、もがくようにゆらめく薄気味悪い黒い人型がそこにあった
――もうタスカラナイ……
どう見ても明らかだった
――イヤだ。イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!
こんな形で仲間を失うなんて。完全に私が甘かった。私がバカだった。それが今更わかっても。そう、もう取り戻すことはできないのだ。かけがえのない仲間を。かけがえのない仲間の想いを
もはや何も考えたくなかった。何も考えないうちに全てが終わってほしかった。しかしそれは許されないだろう。私にはすでに、もう一人の仲間がいる。せめて一緒に全力で逃げて命だけは助かろう。それが今の私に許される罰なのかもしれない
私は、私達は、絶対に生き延びなければならない。ならば……
――私は目をつぶり、いったん落ち着いた――
???「アスティさん! アスティさん!」
???「アスティさん! しっかりしてください!」
???「おい、アスティどうした! どこかケガでもしたのか!?」
ん、誰かが呼んでいる……いや何かが、むしろ何もかもがおかしい……頭が痛い……気持ち悪い……
フォクシー「アスティさん! 大丈夫ですか!?」
フレア「アスティ! こんなところでくたばってる場合ではないぞ!」
アスティ「まだくたばってないよ!!! ……ってアレ?」
頭がズキズキする。記憶がおかしい。まるで私の記憶ごと、世界が塗り替えられたような感覚。いやそもそも……
アスティ「え、フォクシーちゃん、生きてたの!?」
フォクシー「私は何も問題ありませんが。アスティさんこそ本当に大丈夫なのですか?」
フレア「アスティ、敵を前に心を乱すのも無理はない。しかしこんな時こそ……」
フレア「「「冷静さが必要だ!!!!!」」」
アスティ「うるっさいぃ! 敵に見つかるだろバカ!」
フレア「すまん。レイセイイチバン――励声一番と言ってな。冷静と励声を……」
アスティ「もう冷静になったから説明はやめて!」
フォクシー「アハハ……」
しかし、なんだというのだ。何も起きてなかったというのか。いや違う。確かに起きた。起きたが、何も起きてないことになっている。世界と記憶が上書きされている。確証はない。しかし、自分の感覚に残るザラついた気持ち悪い
アスティ「しっかり鍛練して、絶対に禁句連をブチのめそう!」
フォクシー「はい!」
フレア「おう!」
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