第5話 井戸の中、記憶の中
アスティ「これって……」
フォクシー「アスティさん、どうかしましたか?」
アスティ「井戸が光ってる」
フォクシー「??? 私には普通の井戸に見えますが?」
見えていない? こんなにはっきりと四方に閃光を放っているのに? そこのおばあさんにも井戸の光は見えてないらしいし、私だけに見えている? 私だけに聞こえる声の次は、私だけに見える光か? ハァ、いったい何だっていうんだ……
アスティ「んー、なんか気のせいだったかも、アハハ…」
しかしその時、井戸の光が瞬く間に広がっていき、私を包み込む。次の瞬間、私は見覚えのない殺風景な砂漠にいた
アスティ「ここは……」
いや、ここは見覚えがある。『一度も来たことはない』が『いつもそこにある』風景だ。自分でも何を言ってるのかわからないが、そう直感で思ったのだ
見渡す限りの砂漠。一直線に伸びる道。道沿いに並ぶ……人形? と町のミニチュアのような物体。私はこれを『知っている』
すぐ近くにある看板を読んでみた
――ここはメモリーズウェル
あなたの記憶を振り返ることができる
あなたの旅の進行と共に更新される
オブジェクトや人のレプリカは
あなたの記憶を呼び起こすカギとなる
試しに話しかけてみると良い
記憶はあなたをより強くし
その強さはさらに先に進む力となる
あなたの旅の記憶が良いものであるように願う……
えーとつまり、今までの冒険を振り返る『冒険日記』のようなもの、ということか? んー、よくわからんが話しかければ起動するのだろうか
なんか見覚えがあるようなないような本が落ちている、これは……
ナレーション「サブイベントの表示のON/OFFを切り替えられます」
アスティ「わっ、なんだよ!?」
急にしゃべった。というかメタい。サブイベントって何?
それは置いといて、フォクシーちゃんっぽいオブジェクトがあるので、試しに話しかけてみた。私の中に何かが流れ込んでくる。違う。私の中の『記憶』があふれ出してくる。私は抑えきれず、その時の記憶を自ら語っていた
アスティ「フォクシーちゃん。私に色々と説明をしてくれた、可愛くて親切な女の子だよ! 長い付き合いになりそう!」
おお、これはいったいどういう仕組みなのだ。間違いなく自分の記憶であり、自分の口でしゃべっているのに、客観的……というよりは何か他人の主観的というか、自動的というか、変な感覚だ
私が最初にいた祭壇のミニチュアに話しかけてみた
アスティ「気がついたらいきなりこの祭壇にいたんだよね。意味がわからない。
でもそれが大冒険の始まり」
ちょっと待て。大冒険ってことはすぐに帰れないのか? 私は早く帰りたいのに、私は何を言ってるのだろう
ビギンの町のミニチュアにも話しかけてみた
アスティ「ビギンの町。私にとってはこの世界で初めての町だね。フォクシーちゃんに詳しい説明をしてもらったんだよね」
アスティ「この世界のこととか禁句連のこととか……。とにかく、最終目標は禁句連を倒して元の世界に帰ること。絶対成功させる!」
そう、禁句連を倒して元の世界に帰る! 自分自身の言葉に、自然と気合が入る!
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