第4話 ビギンの町、情報収集

フォクシー「とりあえず情報集めです。協力してくれそうな人や禁句連の情報が得られるかもしれません」

アスティ「色々な人から話を聞こう!」


ナレーション「全滅するとゲームオーバーになるのでいったんセーブしましょう!

こまめなセーブがオススメです」

ナレーション「『次に何をすればいいか忘れた』『今までの旅を振り返りたい』

そんな時は、井戸を調べてみましょう」


(私だけに聞こえてるっぽいこの声、本当になんなんだろうなぁ、キモいなぁ……)


フォクシー「どうかしましたか、アスティさん? どこか具合でも……?」

アスティ「ううん、何でもない!」


 しかし小さな町とはいえ、ひととおりの施設はそろってるらしい。宿屋、武器屋、道具屋、酒場もある。周辺のモンスターと戦うには十分だろうか。まだスライムとしか戦ってないけど!


 うーん、誰が役に立ちそうな情報を持ってるか全然わからん。とりあえず手当たり次第にその辺の人に話しかけて情報を集めてみるか


 町の中心に、いかにも勇者っぽい金髪の青年がいたので話しかけてみた


ユーシャ「私は話が長いユーシャ。戦闘のプロだ。『エンディングまで使える戦闘指南』をコーチしてやろうか?長話になるが……」


 なんだか凄いうさんくさかった。ヤバい。正直ちょっと興味はあるが、長話になるなら後回しにしよう


ユーシャ「ああ、未来のユーシャよ……」


 ん、町中にゾンビとスライムがいる!? 危険じゃないのか? 誰も町中にモンスターがいることにツッコまないのか!? ……いや危険性がないからこそ町中にいるのだろうか?


スライム「教会でお祈りしてから来てね」


 ん、教会でお祈りしてから来ると何かいいことがあるのだろうか?


ゾンビ「私はテン・バイヤー。教会でお祈りしてスライムと話せばレアアイテムが貰える。でも一個しか持てないし売れません……」


テン・バイヤー(ゾンビ)「……と思ったのですが、2つ目を格安で買えるようです! 喜んで買ったらなんと……これも売れない! おかげで大損です! もう破滅ですよ……」


 テンバイヤー死すべし慈悲はない。しかし有益そうな情報はあった。教会でお祈りしてからスライムと話せば、なにやらレアアイテムが貰えるらしい。よくわからんが


 なにやら怒っているような表情のおじさんがいた


おじさん「何かイライラする…。しかしこのイライラを表現する言葉がなぜかわからん!」


 これもタブーで言葉を禁止されている影響なんだろうか。例えばさらに『イライラ』という言葉もタブー化されたらどうなるのだろう。感情を表現できなくなってやがて発狂するのだろうか。恐ろしい


 何か楽しげな歌が聞こえてくる。情報収集の役には立たないかもしれないが、興味のままに歌声の方に近づいてみる。


歌う女の子「あーなたーのーゆーめをー、エターなーらーなーいでー♪」


 なんだか聞いたことがあるような気もするが、子供らしいかわいらしい声でよくわからない歌を陽気に歌っている。聞いていると不思議に元気が出てくる、気がする



 しばらく話を聞き回って疲れた。少しだけ汗ばんできたかもしれない。この世界に四季はあるのか。気温は何度くらいなんだろうか。やや涼しいくらいの気温でも、歩き回っていると暑くなる。気が付くと目の前には酒場があった。無意識に酒場の入口に手が伸びていき……


アスティ「お酒飲めないしそんなことしてる場合じゃない!」


 私には禁句連を倒し元の世界に戻る使命がある。そうだ、情報収集を再開しよう。この町には似つかわしくない……いやある意味似合っているのか、ピエロのような風貌の男がいた。話しかけたらどうなるのかという興味は沸きつつも、正直話しかけるのを少しためらった


ピエロ「この世界の回復魔法は強力だがMP消費が激しいんだ!イベント戦まで温存しろ! 薬草を買いだめして戦闘後に使いまくれ! 薬草は効果が低いが格安だぞ! 薬草を買いだめして戦闘後に使いまくれ! 大事なことだから二回言ったぞ! 忘れて死ぬなよ!」


 なんだか少し(だいぶ)おかしな奴だったが、情報は割と有益だった。安い薬草をたくさん買ってたくさん使った方が良いらしい。この世界で死んだら……死ぬのか?


ボドゲ女「私、新しいボードゲームを考えてるの! 主人公は異世界に落ちた女の子! 最初はその辺のモンスターにも苦戦しちゃうんだけど……仲間を増やしながら自分も強くなるの!」

ボドゲ女「ボスはみんな一筋縄ではいかないけど、きちんと戦略を練れば倒せるくらいで! 女の子3人のパーティーが良いかな? んーでもなんか足りない気がする……」


 この世界にもボードゲームがあるらしい。しかし設定が今の私の境遇に似てないか? 気のせいか……


不安女子「禁句連のおかげで汚い言葉はなくなり、平和が続いているのに…。なぜかすごく不安なの」


 そりゃ不安だろうな。言葉をなくすことで平和だと錯覚させられているだけだろうし。言葉っていうのは感情のはけ口でもある


 いかにもベテランという感じの、白髪混じりだがまだまだ十分に戦えそうな、重装の戦士に話しかけてみる


年配戦士「森のモンスターは強い! うかつに森に入ると命を落とす!」


 うん、これはなかなか有益な情報。森に入るのは危険そうだ。だがある程度強くなったら、さらに鍛練を積むために行ってみるのもアリかもしれない。いわゆるレベリングだ


 家らしき建物の入口に話しかけてみる。こういうところからも有益な情報というものは得られたりするものだ。たぶん


 おじさん「たしか、南の洞窟に禁句連の役員がいたような。なんでそんな所にいるのかねぇ?」

アスティ「南の洞窟! もし行くなら少しレベル上げて装備と薬草買ってから行こうか!」


 南の洞窟か。『禁句連の役員』というのがどの程度の強さかはわからないが、幹部クラスと同等ということはまずないだろう。次の目的地としては良いかもしれない。覚えておこう


 いろんな情報が集まってきた。しかし、これだけ建物があるのに、なんか入れない建物が多いな? 今更だが……


アスティ「なんか見た目入れそうなのに入れない建物多くない?」

フォクシー「いやいや、見た目入れそうな建物に無差別に入る方がおかしいです! アスティさんの発想がわかりません!」


 え、なぜ? 建物を見たら入れと教わった気が。どこで教わったかは忘れたけど、そういうものでは? わからない……


 町のはずれの、大きな井戸の近くにはおばあさんが静かにたたずんでいた


おばあさん「井戸が光るとき、それは記憶の世界と繋がっている合図……そんな噂を聞いたことがあるねぇ。井戸を調べたらいきなり別世界!」


おばあさん「……でも『そんなことはありえない』と思うんだけどねぇ」


 私が見たその時、井戸は四方に閃光を放ち、光っていた

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