8話。実家の修行方法はダメなやり方だった
朝起きると、さっそく日課にしているバフ魔法の発動を行った。
今までは、レオン兄上に対して行っていた。今日からは新しい家族となったアルティナの無事を祈って、彼女の肩に触れる。
さすがに食料不足が深刻で、今日は食料を探しに行くのだそうだ。
「……ぬぉ!? これは筋力強化バフか? 嘘みたいな増強率じゃな」
朝食を食べ終わったアルティナが、目を丸くした。
今日の朝食は、この地下遺跡で栽培しているキノコ炒めだ。
「もしかして、あまりパワーアップを感じられない? システィーナ王女は僕に気遣って、スゴイと言ってくれたのだけど……兄上はあまり恩恵を感じてくれていなかったみたいなんだよね」
「なんと逆じゃよ。逆! ……まったく、これほど強力な魔力を秘めておるとは」
アルティナは僕をやる気にさせるために大袈裟に言ってくれているようだ。
さすがに2代目冥竜王から見たら、僕の魔法なんて児戯なんじゃないかと思う。
「しかし、魔力量(MP)を限界まで使い切ったのは、なぜじゃ?」
アルティナが首をひねった。
「魔力欠乏症で倒れる一歩手前まで、魔法を使えば魔力量(MP)が増えるからだよ。これは魔力量をアップさせる修行も兼ねているんだ」
僕はバフ魔法を覚えてから、毎日、これを続けてきた。
しかし、思うように魔力量が増えなくて、壁を感じていた。魔力回復薬(マジックポーション)があれば、もっと効率を上げることができるかも知れないけど……
「それは確かにそうじゃが。魔力量(MP)のアップを狙うなら、効率が悪いのじゃ。あっ、もしかして、それが人間の魔法使いの常識なのか?」
「えっ、ドラゴンの修行方法は違うの?」
僕は仰天した。
このやり方は、父上たちの魔法訓練を見てマネたものだ。
ヴァルム侯爵家の修行方法が、まさか間違っている?
「ぜんぜん違うのじゃ。よし、わらわが母様から教わった修行方法を教えるのじゃ。大地に満ちる魔力を吸収して、体内の魔力量を高める【大周天(だいしゅうてん)】じゃ」
アルティナはそう言って、その場にあぐらをかいて座り、瞑想のポーズを取った。
これはありがたい。
さっそく僕もアルティナのポーズをマネして、鏡写しのように座る。
「まず胸のあたりに、魔力の塊を作るのじゃ。それを体内でグルっと一周させてから、足から大地に流し、大地から再び体内に取り入れるのじゃ。
これを毎日グルグル繰り返せば、早ければ1ヶ月ほどで【竜魔法】を使えるだけの魔力量を得ることができようぞ」
「ありがとう、さっそくやってみるよ!」
「わらわは、食料探しに行ってくるのじゃ。なに安心せい。カルのバフ魔法のおかげで古竜ブロキス以外の敵なら、楽に返り討ちにできそうじゃ」
この島にやってきている古竜ブロキスは、古竜の中でもかなり強い部類らしい。当面はこの古竜ブロキスを撃退することが目標だな。
「……できれば、食料探しは僕が行った方が良いと思うけど、駄目かな? アルティナを危険な目に合わせて、家で待っているというのは気が咎めるんだよね」
「なんとっ! うれしいことを言ってくれるのう! じゃが、力を封じられたとはいえ、わらわはこの世でもっとも邪悪なドラゴンである冥竜王なのじゃ。心配無用ぞ、安心して待っておれ」
アルティナは頬を嬉しそうに上気させた。
「わかった。じゃあアルティナを守れるように、一刻も早く【竜魔法】を使える域まで魔力量を高めるよ」
「うぉおおおおっ!? おぬし、わらわを悶え死にさせるつもりか!? カルと1秒でも長く一緒にいたくて、お外に行きたくなるなるではぬぁいかぁああ!?」
奇声を上げて、アルティナは僕にしがみついて頬摺りしてきた。
アルティナは小柄だけど、かなり胸が大きい。僕は思わず赤面する。
「ちょっとアルティナ! 当たっている
、当たっているってば!?」
「はっ! 嬉しすぎて、つい我を忘れてしまいそうになったのじゃ!」
アルティナは僕から、名残り惜しそうに離れた。
「カルはまだ14歳じゃろ? 気兼ねなくわらわに甘えると良いのじゃ。カルの幸せこそ、わらわの幸せなのじゃぞ」
両手を広げて、アルティナはとてもうれしいことを言ってくれた。
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